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■事業の内容

(1) 合成構造部強度の研究
[1] 鋼・コンクリート継手部の疲労強度模型実験
a. 疲労強度模型実験
 スタッド(1本及び3本)を介して結合された型鋼とコンクリートの部分せん断模型(長さ544mm、幅315mm、高さ400mm)について、両振り繰返し荷重を与え疲労強度実験を行い、H鋼及びコンクリートの変位を計測するとともにひびわれ状況を目視観測した。実験ケースは10ケースで供試体は16本である。その結果、スタッド1本の場合と3本の場合で余り差違は見られないこと、低サイクル載荷による強度への影響はほとんどないことが明らかになった。
研究期間  :昭和63年5月〜平成元年2月
研究担当会社:大成建設
[2] サンドイッチ式コンポジット構造の模型実験及び解析
a. 疲労強度模型実験
 T型スチフナ型4体、長尺スタッドジベル型4体(いずれも、長さ1,280mm、幅300mm、高さ400mm)の鋼板・コンクリート合成構造模型による片振り疲労強度実験を行い、荷重〜たわみの関係を計測するとともに、ひびわれ状況を目視観測した。その結果、疲労強度試験後の最終強度及び変形能力は静的荷重に対する場合とほぼ同じであり、疲労荷重により最終強度及び変形能力は低下していないことが明らかとなった。
研究期間  :昭和63年5月〜平成元年1月
研究担当会社:日立造船
b. 理論解析
 a.の実験について、非線形要因を考慮した有限要素法解折を行った結果、コンクリートの亀裂の伝播及び圧壊の状況の計算結果は実験結果とよく一致することが明らかとなった。
研究期間  :昭和63年10月〜平成元年2月
研究担当会社:日立造船
c. 耐凍結融解性実験
 鋼・コンクリート付着の圧縮性試験体18体(100φmm、高さ200mm)、付着性試験体18体(95.2φmm、高さ220mm)せん断性試験体12体(長さ380mm、幅240mm、高さ250mm)、について凍結融触試験を行った。その結果、軽量粗骨材の含水率が耐凍結融解性に大きな影響を与えることが明らかになったこと、鋼材によるコンクリートの拘束効果が大きく凍結融解で膨張したコンクリートの見掛けの付着強度が大きくなったことが明らかとなった。
研究期間  :昭和63年5月〜平成元年2月
研究担当会社:三菱重工業
(2) 着底時の地震応答の研究
[1] 振動模型実験
 小型振動台を用いた空気中振動模型実験を円筒形の試験体2体(100φmm高さ120mm)について剛体地盤、弾性地盤及び砂層地盤の3種の地盤模型上で行い、地震時の構造物の滑動特性を実験的に明らかにした。
研究期間  :昭和63年5月〜平成元年1月
研究担当会社:鹿島建設
[2] 理論解析
 [1]の実験についてシミュレーション解析を行った。その結果、剛性地盤上の滑動現象は、実験結果と理論解析結果とがよく一致し、滑り変位量も解析的に求められること、弾性地盤上では重心高さに応じロッキング現象が生じるが、滑動の生じる条件は構造物下部の加速度で定まり、剛体地盤上での関係と変らないこと、砂層地盤上では、締め固め状態等により現象は複雑であるが、滑り変位量は剛体地盤・弾性地盤より小さいこと等が明らかとなった。
研究期間  :昭和63年10月〜平成元年2月
研究担当会社:鹿島建設
■事業の成果

コンクリートは海洋環境における耐久性に優れているため、メンテナンスが困難な大規模海洋構造物について、海外では北海における石油プラットフォームなど多数の実績が見られ、さらに近年では北極海のような氷海域で稼動する石油掘削リグにコンクリートを取り入れた設計が増えてきている。
 本研究は、海洋コンクリート構造物を設計・建造するにあたって問題となると考えられる低温域での大型コンクリート構造物の設計・建造技術に関し、現在までの調査研究で指摘された問題点を解明するため、実証的な研究を3カ年計画で実施しようとするものであるが、その第2年度である本年度研究において、1)鋼・コンクリート継手部の疲労強度模型実験により型鋼とコンクリートの部分せん断疲労強度がスタッド1本当りに換算して取扱えること、2)サンドイッチ式コンポジット構造の疲労強度実験及び解析では疲労強度試験後の最終強度は静的荷重に対する場合とほぼ同様であること、耐凍結融解性実験では軽量粗骨材の含水率が鋼・コンクリート合成構造物の圧縮性・付着性・せん断特性上耐凍結融解性に大きな影響を与えること、3)着底時の地震応答の硯究では、剛体地盤上及び弾性地盤上の円筒形剛体が滑動を起こす条件は構造物下部の加速度によって定まること、砂層地盤上では滑り変位量が剛性地盤、弾性地盤に比べて小さいこと、が明らかとなった。
 これらの成果は、海洋コンクリート構造物の設計・建造技術を確立する上で貴重な資料である。





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