■事業の内容
(1) 有害液体物質の防除資機材に関する調査研究 [1] 処理物質等の検討 化学薬剤等による有害液体物質の処理に伴う物質の変質、危険性等を調査するとともに、処理効果等を水槽実験により調査、検討した。 なお、委員会により回収を主体とした調査研究を実施することとなったため、油処理剤による分散性試験にかわり油吸着材による吸着効果について調査した。 a. 化学薬剤等 油ゲル化剤(アミノ酸系とソルビトール系の2種類)、泡消火薬剤(界面活性剤泡、水成膜泡、蛋白型耐アルコール泡の3種類)、油吸着材(アタックエースS、タフネルオイルブロッタ-BL65、ぺトレスS、東洋紡Cマット-50-YH、カポックエースA、オイロック-100の6種類) b. 対象物質 物質の化学特性(エステル、ケトン等)等をもとに次の10物質を対象とした。 アセトンシアノヒドリン、スチレン、アクリロニトリル、ブチルアルデビド、ベンゼン、トルエン、n-オクタノール、イソペンタン、シクロヘキサノン、メタクリル酸n-ブチル c. 反応性の検討 対象物質が化学薬剤等や海水との接触により生ずる化学反応性を実験で調査した結果、特異な反応としてアセトンシアノヒドリンが海水と接することにより加水分解を生じた。また泡消火薬剤のうち界面活性剤泡と蛋白型耐アルコール泡が対象物質(ブチルアルデヒド、メタクリル酸n-ブチル)と反応し溶解した。 d. 反応生成物の検討 化学反応によって生じた生成物等をガスクロマトグラフ質量分析計、液体クロマトグラフ等により調査した結果、危険と思われる物質は見られなかった。 [2] 反応生成物の挙動及び処理効果の検討 反応生成物の挙動及び対象物質に対する化学薬剤等の処理の有効性について実験結果から検討を行った。 a. 揮散抑止効果 油ゲル化剤で物質をゲル化(固化)し蒸発ガスを抑止する実験結果からは十分なゲルが形成される対象物質に対して有効であることがわかった。また、泡消火薬剤による被覆によるガス発生の抑止効果は、対象物質との化学反応を生じなければ大変有効であることが判明した。 b. 拡散防止効果 油ゲル化剤で物質をゲル化することにより物質の水面拡散を抑止することが判明した。 c. 吸着効果 吸着材により、吸着効果が異なり、天然繊維が最も良好な吸着性を示した。 [3] 報告書の作成 a. 規格 A4判 128頁 b. 部数 300部 c. 配布先 関係官庁、関係団体、化学メーカー団体、防災事業者等 [4] 委員会の開催 有害物質資機材委員会 6回 (2) 流出油監視システムに関する調査研究 [1] 遠隔監視手法の調査 航空機、人工衛星を利用した各種リモートセンシング技術の概要と得られたデータの応用利用及び、我が国及び諸外国におけるリモートセンシング技術による海洋油汚染監視の現状調査を行い、海洋における油汚染監視手法の技術面及び実務面から応用可能性について調査を行った。 [2] 油追跡ブイシステムの検討 各種リモートセンシング技術の応用として追跡ブイを試作し、水槽実験により、油の漂流に同期するブイの諸元を検討した。 a. 追跡ブイ形状の検討 現状のブイの形状、材質、発信機等について調査した。 油追跡ブイの形状については、球、円筒、円錐等6種の形状について傾斜、横揺れ、上下揺れ、復原性、容積効率、加工性から総合的に評価検討した。また、材質については比重、海水に対する耐久性、加工の難易、保管のしやすさ等、内蔵する発信機については大きさ及び形状、送信方法等について検討した。 b. 油追跡ブイの試作 追跡ブイ形状の検討結果に基づき、球形、円筒形、円錐形の3種類について各1個の油追跡ブイを試作した。 c. 室内実験 回流水槽において、それぞれ3種類の風速及び流速を作り、風速と流速を組み合わせた条件の中で、油の漂流、追跡ブイの漂流、油及び追跡ブイの漂流と三段階に分けて実験を実施し、油の漂流に対する追跡ブイの形状による追従状況を調査検討した。 (a) 期間 昭和63年11月14日〜17日 (b) 場所 (財)日本造船振興財団筑波研究所 (c) 実験項目 水槽水面上の風速分布の計測 油の漂流速度の計測 ブイの漂流速度の計測 [3] 報告書の作成 a. 規格 A4判 146頁 b. 部数 300部 c. 配布先 関係官庁、関係団体、石油関係会社、海運会社、防災事業者等 [4] 委員会の開催 流出油監視システム委員会 6回
■事業の成果
本事業の完成により、調査研究項目ごとに次の成果をあげることができた。 今後、この成果を活用することにより、海洋汚染及び海上災害の防止に大きく寄与するものと思われる。 (1) 有害液体物質の防除資機材に関する調査研究 本調査研究は、現在、海上輸送されている有害液体物質が事故等により海上へ流出した場合、これらの物質を除去するために、防除作業を実施することとなるが、その際使用される防除資機材の有効性を調査し、防除手法のシステム化を図るため3年間にわたり実施するものである。 本年度は、その初年度にあたり、有害液体物質のうち海上を浮遊する物質について、現用の防除資機材を活用する方法を実験により調査した。 調査の結果、実験に使用した物質と化学薬剤等との化学反応による危険な物質の生成等は見られなかった。 また、蒸発ガスによる危険を軽減し、安全な環境で作業を行うため揮散抑制効果等を検討した結果、実験した化学薬剤による効果が確認された。 これらの調査により、有害液体物質の防除作業に実験対象とした資機材の有効性が判明し、防除手法を確立するための基礎資料が得られた。 (2) 流出油監視システムに関する調査研究 本調査研究は、最近開発が進められているリモートセンシング技術等を応用し、漂流油監視上利便性の高い追跡ブイシステムを検討開発し、流出油の漂流状況を常時確認可能な油の監視システムの確立を図るため2年間にわたり実施するものである。 本年度はその初年度にあたり、遠隔監視手法の調査、油追跡ブイの検討、ブイの試作、室内実験を行った。 その結果、遠隔監視手法の現状を把握することができた。また、室内実験から各試験状態において油とブイが同調する各ブイの形状比等が算出することができ、来年度実施予定である海上実験の基礎資料が得られた。
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