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■事業の内容

(1) 輸出船市場調査研究
 輸出船市場調査研究委員会を3回(6月26日、11月20日、12月18日)開催して、内外の資料をもとに14ケ国の船舶事情等を審議し、報告書(エリア9、10、11各150部)を作成・頒布した。
[1] 調査対象エリア
エリア  9  メキシコ、グアテマラ
エリア 10  コロンビア、ベネズェラ、トリニダード・トバゴ
エクアドル
エリア 11  ペルー、チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、ブラジル
パラグアイ、スリナム、ガイアナ
[2] 調査研究項目
a. 一般事情(政治、経済、産業、貿易)
b. 海運事情(一般事情、船主の実態とその保有船舶、海外荷動需要の現状、海運政策)
c. 船舶事情(船舶保有量、船腹需要、船腹拡充計画)
d. 漁業事情(漁業の実態、漁船保有状況、漁業開発計画、漁船拡充計画)
e. 造船事情(造船所の実態、建造能力、造船政策)
f. 港湾事情(含、開発計画)
g. わが国からの輸出実績及び輸出対策
h. 評価
[3] 配布先
運輸省            6
通産省            3
日本貿易振興会        3
日本造船工業会        1
日本船舶輸出組合       3
日本小型船舶工業会      1
日本舶用工業会        1
日本舶用機械貿易振興会    6
委員            20
委員会社          18
会員会社(委員会社を除く)  56
 事務局在庫         32   
計             150

(2) 海外市場調査
[1] 調査員
今井造船(株)  代表取締役社長  檜垣 文昌
寺岡造船(株)  代表取締役    寺岡 義一
事務局     専務理事     小松 義和
[2] 調査内容
a. 船腹拡充計画(経済協力船を主とする)
b. 輸送量実績と今後の見通し
c. 日本を除く外国からの船舶の供与状況
d. 現地適存船の選定
e. その他経済協力船の供与促進に関する事項
[3] 予備調査
 次の機関に対して予備調査を行った。
・ 交通部         (Ministry of Communication)(北京)
・ 交通部第3航務工程局  (Ministry of Communication)(上海)
・ 中国遠洋運輸総公司   (北京)
・ 上海遠洋運輸公司    (上海)
・ 上海海運管理局     (上海)
・ 上海疏浚公司      (上海)
[4] 調査員派遣、現地調査
 10月11日〜17日の間、前記調査員3名を中国に派遣した。
 主な訪問先
国際招標公司      (北京)
交通部         (Ministry of Communication)(北京)
中国船舶工業総公司   (北京)
中国遠洋運輸総公司   (北京)
交通部第3航務工程局  (Ministry of Communication)(上海)
上海疏浚公司      (上海)
上海遠洋運輸公司    (上海)
上海海運管理局     (上海)
江南造船廠       (上海)
[5] 報告書の作成・頒布
 調査報告書(142部)を作成し、関係者に配布した。
 配布先
運輸省          6
通産省          3
日本貿易振興会      3
日本造船工業会      1
日本船舶輸出組合     3
日本小型船舶工業会    1
日本舶用工業会      1
日本舶用機械貿易振興会  6
会員           74
 事務局在庫        44  
計           142

(3) 海外普及説明会
[1] 下記10船型の仕様概要、原価見積等の見直しを行い、説明会用設計資料を作成した。
5,000DW  セメントキャリア
10,000DW  プロダクトキャリア
15,500DW  マルチパーパスカーゴ
3,000PS  タグボート
6,000DW  プロダクトキャリア
10,000DW  コールバージ
4,800PS  プッシャボート
6,000DW  マルチパーパスカーゴ
340GT  フィッシャリートレーニングベッセル
500GT  トレーニングベッセル
[2] 普及説明員
今井造船株式会社  代表取締役社長  檜垣 文昌
林兼船渠株式会社  代表取締役社長  岩見 真一
事務局       常務理事     岩下 卓二
[3] 普及説明員派遣、説明会開催
 2月8日〜14日の間、前記普及説明員3名をアルジェリアに派遣し、前記10船型の設計資料を用いて説明会(2月9日、10日)を開催した。
■事業の成果

(1) 輸出船市場調査研究
 今回の調査対象国は中南米14ケ国である。これらの国々のうちブラジルは政府の積極的な助成策により海運力、造船能力ともに向上しており、特に造船能力については国内需要をまかなって余りある状態にまで達している。しかし、対象国の多くは第一次産品の市況の低迷や対外累積債務の返済等により経済事情が悪化し、資金不足におちいっている。このため自国の海運業、造船業も未発達の状態であり、必要船腹量の多くを中古船の輸入によってまかなっている。
 このように[1]調査対象地域における新造船需要が極めて少ないこと、[2]同地域内に造船振興国ブラジルがひかえており、同国が輸出船分野に積極的に進出していること、[3]現在わが国は異常とも言える円高にみまわれており、船価面において国際競争力が極端に低下していることなどから同地域への新造船輸出は極めて難しいことが、今回の調査により明らかとなったので、この結果をもとに斯業の今後の輸出振興対策を講ずる基礎資料として重要な役目を果すものである。また日本船舶輸出組合では本報告書を基礎に需要予測並びにカントリーリスク等重要な研究を行なうことになっている。
(2) 海外市場調査
 今回の現地調査により次のことが判明した。
 まず、中国は5ケ年計画実施に伴う海上貨物の増加に対しては、主として現有船腹の効率的な運用によりまかなうこととし、そのために不経済船や老朽船は近代的な船舶に更新する方針であるが、資金的には十分でないということである。
 次に、現在同国では大連造船所をはじめとする7大造船所が稼働しており、必要船舶の大半を自国で建造することが可能となっているものの、高度の技術と経験を要する特殊船、専用船の分野に限っては未だ経験が浅いということである。
 以上のことからわが国より中国に対して船舶を輸出しようとする場合は、特殊船、専用船に的をしぼった受注対策を講じることが賢明であること、またソフトローンの提供の有無が重要な要件となることが明らかとなったので、この調査結果により同国に対してより効果的な輸出対策を講ずることが可能となった。
(3) 海外普及説明会
 アルジェリアは1962年フランスから独立して以来、その豊富な石油資源を生かして経済開発を行ってきた。
 また、特に海運の発展には国を挙げて精力を傾注し、現在の積取比率約20%を1990年には50%にアップすべく目論んでいる。
 それに反して同国の造船施設は皆無に等しく船舶は全て外国から購入しなければならない。
 従って、年々大量の船舶の引合がわが国及び欧州各国によせられてきた。われわれは夙に同国に目を向け、貴会のご理解あるご援助のもとに市場調査、開拓並びに積極的な普及説明等を行ってきた。
 それ等が実って約70隻、700億円以上の輸出実績を打樹て今日に至った。
 ところが近年の世界的船腹過剰に起因する建造需要の減退は世界的な造船不況に陥り、特に同国の旧宗主国であったフランスを初め地理的にも、歴史的にも優位性のある欧州各国が同市場になだれ込み、われわれ日本勢を締め出しにかかっている。加うるに近年の異常なる円高に災いされて成約高が後退ぎみである。
 この時において、当会としては同市場の維持と今後なお一層の繋がりを深めるため普及説明員をアルジェ市に派遣し、船舶関係者等に充分斯業の船舶建造についての優遇性を説明したので後日必ずその成果が上がるものと確信する。





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