■事業の内容
(1) 最適輸送システムの検討 [1] 想定される輸送システムのモデル化 青森県六ケ所村に建設が予定されている核燃料サイクル施設及びサイトの代表として福島原子力発電所について、その施設、周辺設備の現地調査を行い、輸送システムモデル化のための資料とした。 a. 調査時期:昭和62年7月8日〜10日(3日間) b. 調査員 :学識経験者2名他委員12名 c. 調査内容:六ケ所村……核燃料サイクル施設、専用道路、港湾施設等 福島第1原子力発電所……使用済燃料、低レベル放射性廃棄物の輸送に関係ある施設(物揚場、キャスク保管庫、固体廃棄物貯蔵庫、廃棄物集中処理建屋) 以上の調査結果及び昨年度に行った個別的要件(貯蔵量、発生量、荷役方法、船舶構造等)の検討結果に基づき、安全性、現実性を考慮したモデル化を行い、次項の輸送シミュレーション検討に供した。 ○ 使用済燃料運搬船18基積、20基積(速力12ノット) ○ 低レベル放射性廃棄物運搬船:3,000DWT(16R-2型ラック75+コンクリートブロック200個) ○ 輸送量:使用済燃料キャスク輸送基数……800MTU/年 低レベル放射性廃棄物ドラム缶換算輸送量……ドラム缶50,000本相当/年 ○ 港:15港を5グループに区分 (担当:日立造船) [2] シミュレーションプログラムの開発及びシミュレーション計算 上記モデル化した事象を実際の輸送の流れに対応させて組立て、フローチャートを作成し、シミュレーションプログラムを作成。各種の輸送状況を設定し、それぞれの条件での輸送シミュレーション計算を行い、船員被曝量、事故確率、運航経費の試算等の最適性評価のためのデータを得た。 a. シミュレーションの概要 STEP<1>〜STEP<3>の3段階で海上輸送のフローチャート(スケジュール)を作成し、船の積高数で使用済燃料運搬船2ケース(8基積、20基積)、低レベル放射性廃棄物運搬船1ケース(3,000DWT)について実施〔STEP<1>〕 総巡回距離を最小化して、輸送経路、輸送個数、輸送回数の輸送ネットワークを作成 〔STEP<2>〕 STEP<1>の輸送ネットワークを1〜11月(12月は予備期間)の間に終了させるスケジュールダイアグラムを作成 〔STEP<3>〕 スケジュールダイアグラムを船の滞留時間が最小になり、稼動時間がほぼ同じになるように連結して配船計画を定め、各船のスケジュール、荷役時間・輸送量を求める。 b. シミュレーション条件 (a) グループ区分 発電所15港を5グループに区分。ただし、低レベル放射性廃棄物輸送船については、グループ化した場合とグループ化しない場合の両方についてシミュレーションを行い、グループ化の影響を検証する。 (b) 航海距離マトリックス 日本列島を右回りして求めた港間航海距離マトリックス、右回り及び左回りの航海距離マトリックス、むつ小川原港沖合通過マトリックス(荷物を積載したまま、むつ小川原港の沖合を通過する発電所港巡回航路) (c) 取出、装填能力 キャスク:最大積出・受入量 Aグループ14基、Bグループ15基 Cグループ14基、Dグループ9基 Eグループ10基 取出・装填能率 Aグループ4/9基/日 Bグループ1/3基/日 Cグループ2/9基/日 Dグループ1/3基/日 Eグループ1/3基/日 放射性廃棄物:最大積出・受入量 各港1船分 ラック装填 福島第1原発6個/日、その他は全て3個/日 (d) 荷役能力(1日5.5時間実働) キャスク荷役能率(基/日):むつ小川原8基/日、その他は全て4基/日 放射性廃棄物荷役能率(個/日):むつ小川原180個/日、 その他は全て100個/日 (e) 給油時間 むつ小川原港にて2時間/回 (f) 入出港所要時間 入港 2時間/回 出港 2時間/回 c. シミュレーション結果 ○ 停泊荷役時間:停泊荷役時間が稼動時間に占める航海時間とほぼ同じである。 ○ 平均航海速度:8基積使用済燃料運搬船;6.8ノット 20基積使用済燃料運搬船;6.7ノット 低レベル放射性廃棄物運搬船;7.6ノット (これは、飽くまで、12knotsで輸送船が運航された時の沖待ち、減速航海による時間調整等を含めた平均航海速力である) ○ 運搬船の隻数:8基積使用済燃料運搬船;3隻が妥当 20基積使用済燃料運搬船;2隻が妥当 低レベル放射性廃棄物運搬船;2隻が妥当 (3,000DWT) ○ 荷役の海上輸送への影響:荷役能力は、1航海当りの稼動時間に占める停泊荷役時間の割合が高いことから、輸送船隻数や輸送容器などの使用済燃料低レベル放射性廃棄物輸送の費用及びスケジュールに大きな影響をもつと考えられる。 ○ 発電所港の入港制限の海上輸送への影響:発電所港の入港制限輸送船隻数や輸送容器などの使用済燃料低レベル放射性廃棄物輸送の費用及びスケジュールに大きな影響をもつと考えられる。 (担当:三菱重工業) [3] 検討結果の解析 上記シミュレーション計算結果から、使用済燃料運搬船、低レベル放射性廃棄物運搬船の海上輸送経費の試算、輸送に伴う被曝線量、運搬船の海没確率等について検討した。 〔各運搬船の年間遅航経費〕 ○ 使用済運搬船( 8基積2隻)………201,194,000円 ( 8基積3隻)………224,598,000円 (20基積2隻)………181,659,000円 ○ 低レベル放射性廃棄物運搬船……261,186,000円 〔輸送に伴う被曝線量〕 ○ 作業場所線量率 使用済燃料キャスク:キャスク表面から 1m: 1Omrem/h 5m: 3mrem/h 10m: 2mrem/h 甲板(ハッチ開) : 7mrem/h 居住区(満載時) :0.18mrem/h 低レベル廃棄物(16R-2ラック);ラック表面から 1m: 10mrem/h 5m: 3mrem/h 10m: 2mrem/h 甲板(ハッチ開) : 6mrem/h 居住区(満載時) :0.18mrem/h 低レベル廃棄物(コンクリートブロック) ;ブロック表面から1m: 10mrem/h 5m: 3mrem/h 10m: 2mrem/h 甲板(ハッチ開) : 6mrem/h 居住区(満載時) :0.18mrem/h 〔荷役作業員の被曝線量〕 ○ 使用済運搬船 …… 38.3mrem/年/h ○ 低レベル放射性廃棄物運搬船……226.7mrem/年/人 以上の値は、各作業者の作業内容により異なるものであり、また下北側では2交替制であるが発電所側は交替制でないのとしている等の問題があり、単なる目安に過ぎない。また、低レベル放射性廃棄物の輸送指数を10としているが、これは最大値であり、実際には殆どがこれより大幅に低いものであり、被曝線量はこの値より低くなるものと予想される。 〔船員の被曝線量〕 ○ 使用済運搬船(8基積) 72.1mrem/年/人 ○ 使用済運搬船(基積) 88.1mrem/年/人 ○ 低レベル放射性廃棄物運搬船……115.3mrem/年/人 以上の値は、使用済核燃料運搬船、低レベル放射性廃棄物運搬船ともに遮蔽を設けていない場合のものである。現在運航中の使用済核燃料運搬船はすべて遮蔽を設けているが、これから建造される場合も同様であると思われる。そのため被曝線量はこの値より大幅に減少するものと予想される。 〔海没発生率〕 海没発生率 ケース 年間航海数(回) (N5)*1年 (Nl0)*2年 1 *3SF 8-2 26 1.43×105 5.75×105 2 *4SF 8-3 26 1.43×105 5.75×105 3 *5SF20-3 12 2.77×105 1.11×106 4 *6LLW -2 26 1.02×105 4.08×105 参考 電中研報告書(北回) 10 1.67×105 6.67×105 参考 電中研報告書(南回) 10 7.19×104 2.87×105 *1:N5は主要岬角を5マイル離れた場合 *2:N10は同10マイル離れた場合 *3:使用済燃料運搬船8基積を2隻/年配船した場合 *4:使用済燃料運搬船8基積を3隻/年配船した場合 *5:使用済燃料運搬船20基積を3隻/年配船した場合 *6:低レベル放射性廃棄物運搬船(3,000DWT)を2隻/年配船した場合
電中研間報告書においては、他船と1回すれ違い当りの海没確率算出において日本沿岸を航行するすべての船舶の観測データ、統計を対象としているが、原発港、むつ小川原港周辺においては、航行船舶数は上記の平均よりも低いと考えられ、従って海没発生率等においても実際は更に安全側にあると考察される。 (担当;宇徳運輸、三井造船、石川島播磨重工業)
■事業の成果
現在、青森県六ケ所村に建設が進められている再処理施設、低レベル放射性廃棄物貯蔵施設及び濃縮施設の操業が開始される1991年以降、国内における放射性物質等の輸送は増大することが予想される。 一方これら放射性物質等の輸送のうち、使用済燃料にあっては核燃料が高燃焼度化されること、低レベル放射性廃棄物にあっては1回の運搬において輸送される量が多いことと等の問題がある。 本調査研究は、これら問題点を踏まえて、輸送設備、輸送方法及び輸送の経済性について輸送システム確立の観点から検討を行い、我が国における放射性物質の効率的な輸送に資することを目的として2ケ年計画で研究を実施したものである。 本年度は、前年度に調査・検討した使用済燃料及び低レベル放射性廃棄物の貯蔵量、発生量、荷役方法、運搬船の構造等の個別的要件を安全性、現実性を考慮したモデル化を行い、輸送シミュレーション計算を行うとともに、輸送シミョレーション計算結果に従って、運搬船の年間運航経費、輸送に伴う被曝線量、運搬船の沈没確率等について検討し、今後増大が予想される放射性物質の効率的な輸送すなわち、輸送経路、輸送個数、輸送回数、運搬船の構造、年間配船計画、運航スケジュール等に関する貴重な成果が得られた。 これらの成果は、1991年以降の我が国における放射性物質の効率的な輸送を目指した輸送システム確立に大いに役立つ資料である。
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