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■事業の内容

(1) 合成構造部強度の研究
[1] 鋼・コンクリート接手構造の模型実験及び解析
a. 模型実験
 スタッドジベルの配置が異なる3体の鋼・コンクリート合成梁模型(長さ4,400mm、幅200mm、高さ1,000mm)について集中静荷重破壊実験を行い、合成梁全体の変形量計測及び破壊状況の観察記録、鋼・コンクリート接手部の変形量の計測を実施した。
(担当:大成建設)
b. 理論解析
 上記aの模型試験結果を検討するため、鋼・コンクリート合成梁について有限要素法非線形解析を行った。その結果、接合部の強度・剛性をスタッド1本当りの強度・剛性に換算して取り扱えることが明らかとなり、また、ずれ変形量とびひ割れ発生及び最大荷重との関係を求めることができた。
(担当:大成建設)
[2] サンドイッチ式コンポジット構造の模型実験及び解析
a. 模型実験
 T型スチフナ型・フラットスチフナ型・鉄筋補強型・スタッドジベル型・長尺スタッドジベル型の5種類のサンドイッチ型鋼・コンクリート合成構造模型(長さ1,280mm、幅300mm、高さ400mm)について静的面外剪断強度実験を行い、変形量の計測、ひび割れ及び破壊状況の観察記録を実施した。
(担当:日立造船)
b. 理論解析
 上記aの模型実験結果を検討するため、極限解析法による梁模型最終強度の解析及び有限要素法による非線形解析を行った。その結果、T型スチフナ型及び長尺スタッドジベル型の性能が良好であった。特に、T型スチフナ型は崩壊荷重に近づくと主応力は荷重点から支持点に直線的に流れ、アーチによる支持構造が確認された。
 (担当:日立造船)
c. 耐凍結融解性実験
 高強度軽量コンクリート単体の供試体(長さ100mm、幅100mm、高さ400mm)を薄肉のゴム容器に入れ凍結融解性試験を行い、混練前の軽量粗骨材の含水率と耐凍結融解性(動弾性係数、重量変化)の関係を求めた。
 実験は、各供試体について-17.8℃、+4.4℃の反復で1サイクル約4時間、300サイクルの期間行った。その結果、軽量粗骨材の含水率が11%でも空気量が6%であれば非常に優れた耐凍結融解性を示すことがわかった。ただし、含水率26%の場合は、300サイクルで相対動弾性係数80%は維持できなかった。
(担当:三菱重工業)
(2) 着底時の地震応答の研究
[1] 海洋コンクリート構造物の地震時の実績調査
 海洋コンクリート構造物の地震時被災例に関する文献を収集し、主に港湾構造物の被災状況を明らかにした。文献抄録は7種作成した。
(担当:鹿島建設)
[2] 滑動を許す設計法の現状と解析技術の調査
 各種基準(8種)における滑動に対する考え方等の調査、滑動解析に関する文献調査、滑動実験に関する文献調査、摩擦現象に関する文献調査を行い、研究動向、研究成果と知見、現状での問題点と課題をとりまとめた。
 文献抄録は37種作成した。
(担当:鹿島建設)
[3] 振動実験用模型及び架台の製作
 プレキャストコンクリート製振動実験用模型(平底面1種,波状底面2種、そり付き3種、ダウエル付き1種、スカート付き1種、各々長さ300mm、幅300mm、高さ60mm)を製作した。実験用治具は静的水平方向力を加えるもの及び滑動実験用のものを製作した。また、鹿島建設技研海洋水理実験場内大型水路中に砂地盤試験体としての架台を作成した。砂地盤は水路床の上に捨砂深さ700mmを置いた上に仕切床を設けその上に深さ500mmの試験砂層(長さ2,000mm、幅2,000mm)を置いたものである。試験砂層は深さ200m、150mm、150mmの3層に分け各層ごとに砂を水中落下させ水締をして次の層の砂を投入する方法で製作した。
(担当:鹿島建設)
[4] 基礎地盤のモデル化と摩擦係数測定の実験
 実験に使用する砂地盤試験体(架台)が基礎地盤のモデルとして適切であることを明らかにするため、粒度試験・強度試験・締め固め試験からなる模型地盤土質特性試験を行い、液状化が生じる可能性のない砂地盤であることを確認した。ついで、滑動開始時実験及び滑動実験を行い、供試体の水平変位、鉛直変位、回転変位及び滑動抵抗を計測し、コンクリート供試体と砂地盤間の静摩擦係数及び動摩擦係数を求めるとともに滑動時の沈下回転挙動及び摩擦係数に及ぼす載荷方法の影響、滑動速度の影響、底面形状の影響等を明らかにした。
(担当:鹿島建設)
■事業の成果

コンクリートは海洋環境における耐久性に優れているため、メンテナンスが困難な大規模海洋構造物について、海外では北海における石油プラットフォームなど多数の実績が見られ、さらに近年では北極海のような氷海域で稼動する石油掘削リグにコンクリートを取り入れた設計が増えてきている。
 本研究は、現在までの調査研究で指摘された問題点を解明するため実証的な研究を3カ年計画で実施しようとするものであるが、その第1年度である本年度研究において、1)鋼・コンクリート接手構造の模型実験及び解析により接合部の強度・剛性をスタッド1本当りに換算して取扱えること、2)サンドイッチ式コンポジット構造の強度実験及び解析では性能のよい接手型式を選択したこと、3)サンドイッチ式コンポジット構造の耐凍結融解性実験では軽量粗骨材中に許容できる含水率を明らかにしたこと、4)着底時の地震応答の研究では波浪と地震動とでの被災形態の違い、滑動現象に関する研究の現況等が明らかになるとともに、基礎地盤のモデル化と摩擦係数測定の実験により滑動抵抗に及ぼす載荷・滑動速度・底面形状等の影響などが明らかになった。これらの成果は、海洋コンクリート構造物の設計・建造技術を確立する上で貴重な資料である。





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