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■事業の内容

(1) 生産システムの高度化に関する調査研究
 今後の舶用工業の生産性向上、競争力強化等を図るためには工場内、さらには関連企業間における情報処理が大きな課題となっている。そこでLANシステムを利用した広域ネットワーク化による企業体制について2カ年にわたり検討を行った。
[1] 舶用工業へのLAN導入上の問題点解明
 舶用工業企業でのコンピュータの利用状況、ならびに今後の目途等について昨年に引きつづき、アンケート、ヒアリング調査を行い、舶用工業でのLAN導入のための構想をたてた。(アンケート241カ所発送→84カ所回答)
(概要)
 アンケートには、企業あるいは事業所の概況を知るため、従業員数、業種、主な製品とその売上高、事業所全体としての前年度総売上高に関する質問を設け、さらに次の内容についての設問を行った。
1) 生産性向上のための活動内容
2) 事業所内のコンピュータシステムに組込まれている項目
3) 事業所の各機能のマニュアル又はコンピュータによるシステム化の整備状況
4) 各機能の有効的な情報交換の度合
5) CIMの理解度
6) CIM化の構築に伴っての具体的な対応策
7) 自動化推進の目的 等
[2] LAN導入に伴う方策の検討
 LAN導入のためのモデル設計を行うため、サンプル会社を選定し、ヒアリング、ならびに現地調査等を行って企業内LANの試設計を行った。
(概要)
 生産システムのトータル化を図るうえで、各部門毎に独立しているシステムをLANにより有機的に結合し、統合システムとしてより効果を出そうとしている試みがなされ始めている。今回は、すでに陸用の生産部門でLANが導入されている日本電装、神戸製鋼所などでのケース・スタディを参考に、舶用工業の生産の場をモデルとした、より具体的なLAN導入の生産システムの試設計を行った。
 試設計にあたっては、舶用工業が現状かかえている各種生産の諸元データの分析を行い、理想システムの概念にできるだけ近ずける形で、実現可能なトータル生産システムの試設計を行った。
[3] 設計モデルのフィージビリティスタディ
 モデル設計を基に各種条件下による対応策、可能性についての検討を行った。
[4] とりまとめ
 上述までの調査研究成果をとりまとめ、舶用工業としての有効的なLAN導入策を明らかにした。
(概要)
 舶用工業においてOA化、コンピュータ・ネットワーク化を進め、さらにLANを導入するにあたっては、次の事項を十分検討する必要がある。
1) 工場の自動化を含めた生産システム全体のシステム構想を検討し、その中におけるOA、コンピュータ・ネットワークの範囲と位置付けを明確にする。
2) OAやコンピュータ・ネットワーク技術について、汎用性や互換性を十分検討し、自社に適合したシステム化を図る。
3) 社内への説明を十分行い、全社的な理解を得ておく。
(2) 生産技術の近代化への転換促進
 舶用工業において当面する情勢に応じて生産設備の改善、作業工程の自動化、システム化など生産技術の近代化への転換を希望する企業に対して専門コンサルタントの指導等により改善策について調査・検討を行った。
[1] 転換指導対象工場の選出
 会員企業の中から近代化転換指導等を希望する次の2企業を選出した。
由倉工業 ……生産設備および作業工程の改善・近代化指導
槇田鉄工所……MC、NCの稼動率向上、工場管理全般指導
[2] 近代化転換のための調査研究
 転換指導対象企業に専門コンサルタントを派遣し、現地において生産技術、設備などの近代化に必要な転換方策について具体的な調査・検討を行った。
コンサルタント
中井 重行  早稲田大学・名誉教授
寺田 利邦  早稲田大学・教授
吉本 一穂  早稲田大学・講師
朝比奈奎一  東京都立工業技術センター・主任研究員
[3] 指針の作成
 指導対象企業の転換方策について調査・検討の結果をとりまとめ、業界の近代化転換の指針を作成した。
a. ディーゼル機関製造業
 当初のコンサルティング希望内容は、機械設備の近代化及び工場管理全般であったが、短期間で全てを処理することはむずかしいため、前者については、資料紹介及び必要に応じての助言にとどめ、当面緊急度の高い後者について指導を行い、一応の成果が得られた。今後、指導から得た手法に基づいて作業工程を改善し、作業効率の向上を図ることにより、製品の品質向上とコストダウンが期待できよう。
b. ポンプ製造業
 短期間でコンサルティングの効果を上げることは非常にむずかしいばかりでなく、現場で進行中の改善活動を阻害してしまうことすらある。
 そこで進行中の「工場改善活動の方針」を調査し、その一部分を処理するコンサルティングテーマを設定した。設備投資がほとんどできない状況下にあるため、アドバイスの内容は、いわゆる管理制度の改善に関するものとなった。営業主体の、すなわち原価をとらえるための時間値の把握から、現場の生産性、能率を測定するための時間値把握への転換が急務と思われる。内製比率を高め、また製造範囲を高めることを考えるとNC機械導入の検討も必要となろう。
■事業の成果

舶用工業は、将来に向けて、より魅力ある産業として活性化を図るため、生産体制の改革が様々な形で議論されている。
 本事業の「(1)生産システムの高度化に関する調査研究」では、LANシステム導入のための試設計、導入の効果・影響などについて提言を行い、「(2)生産技術の近代化への転換促進」では、転換対象工場の現状分析などを行い、転換促進に係わる具体的な改善策を示している。
 これらの成果は、会員企業が自社の生産性を向上させるために生産システムの改善あるいは将来計画を立案するうえで寄与するところが大きく、当業界が今後の発展をめざすうえで多くの示唆を得ることができる。





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