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■事業の内容

(1) 有害性ガスの防護対策に関する調査研究
[1] 有害性ガスの大気拡散による危険範囲の予測
a. 対象ガス
 浮遊性物質から発生する有害性ガスを検討するために異なった物性を有する12物質を対象とした。
b. 計算式
 坂上の式を基本とし、数値シミュレーションにより検討することとした。
c. 計算条件
 流出量等に伴う流出速度を詳細に検討し、風速、蒸発速度等種々の条件の組合せにより実施した。
d. 計算結果
 各物質の液拡散表面から揮散する蒸発ガスの濃度範囲について、蒸気圧等物性による蒸発形態を調査し、ガスの拡散の様子、危険濃度範囲等について検討した。
 上記検討結果を利用し、対象物質以外の物質についての図表による濃度範囲の簡易な算出手法を導いた。
[2] ガス危険性に対する防護対策の検討
 火災危険性の種類、範囲等について検討するとともに、化学物質による対人毒性について、中毒初期の症状との関係を調査し、防除作業従事者のための「自己診断表」を作成した。また中毒に対する応急措置についても検討した。
(2) 外洋における大量流出油事故の防除技術に関する調査研究
[1] 特定海域における大量流出油事故の防除処理の検討
a. 防除処理体制
 外洋では、気象・海象条件が内湾と大きく異なり、内湾で確立している防除方針をそのまま適用できないので、海洋環境保護の見地から回収、分散等の可能な防除手段を講じることとして、外洋における防除処理の考え方を整理し、現状での防除処理体制について検討した。
b. 防除処理方法
 外洋における流出油防除処理の考え方により、実海域の流出油拡散シミュレーション結果及び防除資機材の性能評価に基づき、資機材の動員補給及び沿岸接近油の処理等を含めた流出油処理対策のケーススタディを行い、問題点を抽出し、将来にわたる防除処理方法について検討を加えた。
[2] 油処理剤空中散布による処理効果の検討
 近年、空中散布に適した濃縮型油処理剤が開発されているが、実際の事故での空中散布の実例がなく、実験で濃縮型油処理剤の空中散布による流出油防除の有効性について検討した。
a. 油処理剤散布条件設定実験
(a) 日時
自 昭和62年5月13日
至 昭和62年5月15日
(b) 実験の場所
長野県小諸市山浦4857-1
(社)農林水産航空協会 農林航空技術センター
(c) 実験の内容
 筑波研究所の実験水槽走行装置の速力に合わせた速力で散布装置を走行させながら、油処理剤を散布し、通常の空中散布条件と同様の粒度分布、散布量が得られるノズル及び吐出圧力を決定した。
b. 油処理剤分散処理効果実験
(a) 日時
自 昭和62年5月25日
至 昭和62年5月29日
(b) 実験の場所
茨城県筑波郡大穂町南原2
 (財)日本造船振興財団 筑波研究所
(c) 実験の内容
 実験水槽に一定量の油を散布後、拡散した油面にa.の実験結果で得られた散布条件にしたがい下記により油処理剤を散布し、それぞれの波浪による水中での油分濃度を測定し、油分散状況を観測することで油処理剤による処理効果を確認検討した。
a) 油処理剤  型式承認品の中から4種を選定した。
b) 供試油種  A重油
c) 調査事項  水中拡散油分濃度及び分散処理油拡散状況
■事業の成果

本事業の完成により、調査研究項目ごとに下記の成果をあげることができた。今後、この成果を活用することにより、海洋汚染及び海上災害の防止に大きく寄与するものと期待される。
(1) 有害性ガスの防護対策に関する調査研究
 本調査研究は、現在、海上輸送されている有害液体危険物質が事故等により、海上へ流出した場合の防除方法の検討を行っているものである。
 本年度は、有害液体危険物質のうち、流出後、海面に浮遊する物質について、液及びガス拡散の範囲を数値シミュレーションを用いて求め、火災、毒性等の危険円を設定するとともに、実際の流出事故が発生した場合に、これら危険円を簡易に算出する手法を開発した。
 また、有害な化学物質が及ぼす対人毒性について、検討を加え、人体への健康被害対策を調査することにより防除活動に携わる人々の安全確保のため、自己診断表を作成した。
 これらの調査研究の結果、有害液体危険物質の安全な防除法の確立のための貴重な資料を得ることができた。
(2) 外洋における大量流出油事故の防除技術に関する調査研究
 本調査研究は、昭和60年度から、石油備蓄基地の備蓄タンクの破損事故、海洋油田の暴噴事故及び大型原油タンカーの海難事故による海洋への原油の大量流出事故を対象として、これらの事故が発生した場合の防除方法及び防除資機材の検討を行っているもので、本年度はその最終年度である。
 本年度は、外洋における流出油防除法の1つとして考えられる濃縮型油処理剤空中散布の有効性を実験により調査検討し、その分散処理効果が確認されたことにより、外洋での流出油防除法としての油処理剤空中散布の有効性が明らかになった。
 また、昨年度行った流出油拡散シミュレーション結果及び防除資機材の性能評価に基づき、流出油処理対策のケーススタディを行い、問題点を検討し、外洋における流出油防除処理方法の基本方針の確立を図り、もって海難防止に寄与するところ大なるものがある。





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