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■事業の内容

(1) 海上検証実験
[1] 海上漂流ブイの追跡
 昭和62年7月10日より7月14日まで相模湾内の3か所において海上保安庁水路部が開発した緊急用海潮流測定装置(海上漂流ブイ)を使用して時々刻々に変化する位置を20時間連続測定を行い、流況・漂流予測値の検証データを収録するとともに実験海域の海上風を測定した。
[2] 流況及び漂流予測計算の実施
 昨年度に研究開発した流況及び漂流予測プログラムにより海上実験時と同期間の流況及び漂流予測値を計算し、漂流経路との適合度を検討したところ吹送流の予測流速がかなり大であることが判明したので、吹送流シミュレーションの見直しを行いデータテーブルの改良を行った。この結果、適合度の向上が計られた。
(2) 漂流位置の確率予測方式の開発
[1] 流況・漂流の乱れの要因の検討
 漂流位置の推定精度に影響する要因をとりあげて、これらの影響の大きさを定量化するために、海上検証実験データをもとにして次の事項について検討を行った。
イ. 漂流開始時間の推定誤差
ロ. 漂流開始場所の推定誤差
ハ. 潮流の影響
ニ. 風向・風速の推定誤差
ホ. 海流の推定誤差
[2] 要因別の乱れの大きさの推定計算の実施
 上記のイ.〜ホ.の5項目の要因について数値シミーレーションによって求めて、それぞれの誤差の大きさについて比較検討したところ、漂流開始場所の推定誤差と風向・風遠の推定誤差並びに海流の推定誤差が大きく影響することが判明した。
[3] 上記の3つの誤差を含む効率的な計算方法と表示方法を開発して漂流検証実験データに適用して確立的予測範囲内に整合していることを確認した。ただし、海上検証実験の3ケース目については、大島周辺部の渦流部に入ったため、平均的海流パターンと異なり確立的予測範囲外となった。
(3) 綜合的予測情報提供システムの確定
[1] 内湾性沿岸域及び外洋性沿岸域の流況・漂流予測方法の総括
 昭和58年度より実施してきた研究成果と海上検証実験データに基づいて流れの性質の異なる内湾性沿岸域と外洋性沿岸域の流況・漂流予測方法の総まとめを行った。
[2] 予測情報の提供システムの確立
 流況・漂流予測計算の結果をどのようにして必要とする現場へ伝達すべきであるかについて予測計算を1か所で実施して海上保安庁の海洋情報システムで伝送する方法と各現場においてパーソナルコンピューターで計算する方法について検討を行った。その結果、予測情報としては、決定論的の流況と漂流の予測値を出力するだけでなく、誤差範囲を含んだ予測をすることにすると大型電子計算機による1か所での計算が優位である。しかし、当研究成果の汎用性を考えるとパーソナルコンピューターによる各現場での計算実施方式も十分に検討する価値がある。従って、風データ及び海上風推定計算の取り扱いを工夫することによってパーソナルコンピューターでも予測可能であることが判明したので、基本的には、パーソナルコンピューター上で稼働できるよう設計することに決定した。
■事業の成果

我が国の沿岸域は海難・海上災害が多く発生しているにもかかわらず、船舶の海難防止、救助及び海上防災に必要な流況及び漂流予測とその提供システムが整備されていない現状からこれらの研究が急務であったので、本事業により流況及び漂流予測に必要な基礎資料を収集・解析することによって、確度の高い予測方法の研究と予測情報を即時的に提供可能な方法を研究したことは、海難防止に寄与するところ大なるものがある。





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