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■事業の内容

(1) OTC'87調査について
[1] 派遣した職員の氏名
深海開発事業部  研究副主幹  磯谷  實
海洋開発研究部  研究員    工藤 君明
[2] OTC'87の概要
a. 期間     1987年4月27日(月)〜4月30日(木)
b. 場所     米国、ヒューストン
c. 論文発表会  46セッション、237論文が発表された。そのうち日本からの発表が16論文あった。
d. 展示     約1350社
[3] 海洋開発関連機関の調査内容
a. スクリップス海洋研究所
 カリフォルニア大学の海洋学部門として、海洋科学の調査研究を実施している。
 同所の海洋調査船MelvilleとSproul及びFlipを見学したほか、同所の研究計画等について調査した。
b. ウッズホール海洋研究所
 米国東海岸にある研究所で、潜水調査船「アルビン」及び同母船「アトランチィス<2>」を保有している。
 同研究所の研究計画の概要を調査したほか、特に近年注目されている海洋音響トモグラフィーの研究の進展状況について調査した。
c. NOAA(National Oceanic and Atomospheric Administration)
〜米国海洋大気局
 NOAAは国の海洋科学技術に関する施策を統括している官庁であり、今後の日米の海洋科学技術分野における協力等について意見交換を行った。
d. 米国海軍デビット・テーラー艦船研究所
 米国海軍の船舶に関する様々な研究を実施している研究所であり、当センターで建造を進めている6,500m潜水調査船についての協力等について協議した。
e. Perry Offshore Inc.
 小型の有人潜水調査船や無人探査機のメーカーであり、同社で現在開発中の小型無人探査機等についての調査を行った。
f. Harber Branch Oceanographic Institution, Inc.
 浅海域の科学調査研究、研究用機器システムの開発を行っている民間企業であり、現在の研究開発プロジェクトの実施状況や今後の開発計画等について調査した。
g. American Bereau of Shipping(米国船協会)
 米国の船舶等の船級検査を行っている団体であり、今回は、海洋構造物の係留方法に関する基準等について調査した。
h. Brantner and Associates, Inc.
 潜水調査船等に用いられる水中コネクターのメーカーであり、当センターで建造中の6,500m潜水調査船用のコネクターも一部同社で製作中であったので、これらについて詳細に調査した。
(2) OCEANS'87調査について
[1] 派遣した職員の氏名
企画室企画課  課長代理  辻  義人
海洋開発研究部  研究員  浅沼 市男
[2] OCEANS'87の概要
a. 期間   1987年9月28日(月)〜10月1日(木)
b. 場所   カナダ、ハリファックス(国際貿易・会議センター)
c. 共催   MTS(Marine Technology Society), IEEE(Institute for Electrical and Electronics Engineers)
d. 会議・展示会の参加者数
約500名
e. 論文発表会
 次に示す11のセッションに分かれ、約380件の論文が発表された。その内、日本からの論文発表は8件であった。
○ 情報システム関係
○ リモートセンシング及びデータ処理
○ 音響技術
○ 氷海技術
○ 海洋資源調査及び管理
○ 海洋観測機器
○ 海洋環境機器モニタリング
○ 有人・無人潜水システム
○ 海洋構造物
○ 海洋科学
○ 海洋工学
f. 展示会
 展示会は論文発表会と並行して行われ、約100の企業・団体によって海洋観測・開発に欠かせない機器が展示されていた。
[3] 研究機関等の調査・視察
a. ベットフォード海洋研究所(カナダ、ノバスコシア州ダートマス)
 当研究所は、1962年に4,000万ドルの費用を投じてカナダ政府によって設立され、海洋学の分野で世界的に有名である。主としてカナダ大西洋及びカナダ東部北極海の海洋環境・資源の情報を提供することを任務としている。リモートセンシング等のデータ処理技術、流速計の係留技術の紹介を受けた。また、DAWSON(1311トン)及び自航式無人探査船DOLPHINの見学を行った。
b. ニューファウンドランド州立メモリアル大学応用理工学部海洋工学グループ(カナダ、ニューファウンドランド州セントジョーンズ)
 当大学はニューファウンドランド州で唯一の大学で、一部はカナダ西岸に施設を有し、13,000人の学生が在学している。
 応用理工学部の海洋工学グループは1969年に設立され、ここでは土木、電気、機械、造船及び応用数学科の各分野の専従の教授31名、職員約30名及び大学院生約30名の計90名が、研究を行っている。
 VAX8500を備えたコンピュータシステム、海洋構造物の大模型による応力腐食実験状況、波動水槽及び氷山のスコアリング実験用砂槽を見学した。
c. 海洋ダイナミックス研究所(カナダ、ニューファウンドランド州セントジョーンズ)
 当研究所は1924年に設置された全国研究協議会(NRC)の機関の一つで、国際的にも著名であった北極航海船舶海洋研究所(AVMRI)が組織変更されたもので、大規模な実験場が大学構内に建設中である。建設費は約100億円で、竣工すると世界最大規模の海洋技術、船舶流体力学、北極海工学の分野における研究開発施設になるといわれており、大学、企業及び政府機関からなる研究組織の中心になることが期待されている。
 大型模型製作工場、氷海水槽、曳航水槽、海洋環境水槽を見学した。
d. ウッズホール海洋研究所(米国、マサチューセッツ州ウッズホール)
 1920年代の後半、全米科学アカデミーが海洋調査研究所の設立を働きかけ、1930年に海洋科学の研究を目的とし、私的であるが営利を目的としない研究所として設立された。
 実際の活動は1931年ロックフェラー財団の300万ドルの援助のもとに、生物学者Henry Bryant Bigelow博士の指導によって始まり、現在では、広範な海洋科学の研究機関として世界的な地位を築いている。
 VAX8800及びVAX780(3台)を備えたコンピュータシステム、フライングフィシュ、SOFARフロート、低層流・地質探査システム、乱層流測定システム及び、調査船「Knorr」(2,075t)の見学を行った。
e. シピカン社(米国、マサチューセッツ州マリオン)
 当社は投げ捨て式のセンサー及び装置の開発・生産では世界的な企業である。従業員は約700名でこのうち1/3が技術者である。
 新製品の開発状況、試験用塩分水槽、高圧タンク、XBT等のワイヤー工場、ソノブイ工場を見学した。
f. 国立海洋データセンター(米国、ワシントンD.C.)
 NOAAのNESDIS(National Environmental Satellite Data Information Service)の下部機関で全世界から収集される海洋計測データの計算機への入力、保管、提供を主な業務とする機関である。これらの業務の説明や、検索のデモンストレーションの説明を受けた。
(3) 海外の研究者・技術者の招へい
[1] 招へい研究員名
ジェット推進研究所(JPL)、宇宙地球科学部門、主任研究員
スクリップス海洋研究所(SIO)、地球物理学部門、教授
Dr. Robert H. Stewart
[2] 招へい中における検討結果
a. TOPEX衛星計画の全体計画について
 1991年に米、仏共同で打ち上げが計画されているTOPEX/POSEIDON衛星観測計画の進捗状況、特に衛星搭載センサーの開発状況及び研究体制の整備状況等について説明があった。
b. マイクロ波による海面高度計測技術について
 衛星の高度計データに含まれる種々の海洋現象の影響の評価手法が明らかになった。
c. 海面高度計測と黒潮などの海流を中心とする海洋現象との関連について
 黒潮など西岸境界流の西側は、1mほど海面が高いことが知られているが、TOPEX衛星によってその変動を追跡することが可能となる。また、この衛星による観測は雲の影響を排除し海面高度情報を得ることが可能で、特に日本近海のように雲の多い海域では非常に有効である。
d. 海面高度計測と全地球規模の海洋現象の関連について
 太陽からのエネルギーの大部分は赤道海域において受け取られる。このため、赤道の大気と海洋の相互変動の実態を把握することが必要である。また、調査海域が遠方で広域なため、人工衛星による観測手段の寄与するところは極めて大きい。
e. 衛星データの利用方法について
 衛星データの基本的流れは決まっているが、データを各研究者レベルに伝達する方法についてはメディアの選択がなされておらず、今後の検討を要する。
 データの配布方法は、通信網を利用した電子通信による配布か、光ディスクによる配布が有力視されている。
■事業の成果

[1]OTC'87会議・展示会及び米国の海洋開発関連機関、[2]OCEANS'87会議・展示会、米国及びカナダの海洋開発関連機関の調査等を実施し、最新の技術動向を調査した。
 その結果、当初予期した以上の技術情報、資料の収集を行うことができ、特に、現在当センターが進めている、6,500m潜水調査船の研究開発等、先端的研究開発事業の推進にとって、極めて重要なデータや情報が得られた。
 また、海外からの研究者・技術者の招へいについては米国から、宇宙地球科学部門の研究者を招き、わが国では経験の少ない人工衛星を利用した黒潮等の海流を中心とする海洋現象の実態を把握するための評価手法等について、指導、助言を受けたことは、我が国の海洋科学技術の進展に寄与するところ大なるものがある。





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