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■事業の内容

本事業は内湾域(我が国では幅が20〜30km)の海洋構造(水温、流速等の立体的な分布)の経時変化を求めるため水中音響トモグラフィ(断層診断)理論を応用して、測定手法を究明するため次のとおり実施した。
(1) 機器の試作
a. 水中係留系の試作
 送・受波器を海面下500mに設置し、計測作業終了後海底から浮上させる装置を試作した。
b. 水中位置測定装置の試作
 水中の送・受波器位置を船上で測定可能の方式(海面と送・受波器の水中距離測定とロランC電波による船位測定との組合せによる)による水中部を試作した。
(2) 海上実験
a. 予備実験
 試作した水中係留系の作動確認を主として送波側のみ係留し、水中位置の測定を行った。このため、受波側は船上からの吊下方式で超音波5KHzの水中伝播時間及び受信波の強度の測定を行った。
b. 本実験
 送・受波器とも海面下500mに設置し、送・受波器の水中位置及び超音波5KHzの水中直接波、海面反射波の伝播時間測定を行った。
(3) データ解析
a. 超音波5KHzの水中伝播記録から受波波形の特性を求めた。
b. 水中位置測定装置による送・受波器位置の測定値を解析し、その精度評価を行った。
■事業の成果

本事業は、近年医療面で利用の盛んな断層診断(トモグラフィー)理論を、水中に応用し、水温、流速等の立体分布(海洋構造)の経時変化を求めようとするものであり、昨年度までの研究によって、現実の海中では音波の伝達経路や減衰状況が極めて複雑であり、送受波器の位置決定も大きな課題であることが判明している。
 本年度の研究においては、海中における送受信に有効な音波の波形列を確定し、その雑音除去等の信号処理手法を解明した。また、送受波器の海中係留法と海中位置測定法を確かめることができた。
 今後実験によって測定精度を確認し、実用の場合の観測網の展開について研究を行うことにより、完成後は海洋構造究明が進展し、海難防止、海洋産業の発展等に寄与するところ大なるものがあると思われる。





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