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■事業の内容

(1) 最適自動運航システムの研究開発
[1] 海象気象状態監視評価システム
a. 海象気象状態監視評価システムの開発
(a) 船体応答による波浪推定技術の開発
 船体運動以外の情報として、波の主方向を使用した場合、及び船体運動スペクトラムの高次のモーメントを使用した場合の波浪推定法について、検討を行い、波浪推定計算プログラムの改良を行った。
 これらの波浪推定計算プログラムによって一連の波浪推定計算を行った。
 (担当:三井)
(b) 低気圧モデルによる波浪予測技術の開発
 低気圧モデルによる波浪予測技術においては、昨年度に引き続き低気圧モデルの作成を行った。
 昨年度分類の困難であった特殊な低気圧の分類方法を開発し、モデル化を行うことが出来た。
 このモデルを用いる狭域波浪予測システムのプログラム化を行った。
 一方、船内海気象状態監視装置の全体システム仕様の取りまとめを行った。
 (担当:三井、石播、住重、日立、鋼管)
(c) 総合シミュレーション準備
 総合シミュレーションのための表示画面の設計を行い、作成したプログラムを用いて海象気象状態の単独システムのシミュレーションを行った。
 (担当:三井)
[2] 船体状態監視評価・姿勢制御システム
a. 船体状態監視と姿勢制御に関する自動システムの開発
(a) 船体状態監視・評価システムシミュレータ試作
 船体状態監視・評価システムのシミュレータを試作し、海象・気象予測の情報と同時に船体状態監視センサーからのリアルタイム情報を入れてシミュレーションを行い、長短期の船体応答の予測評価を行うシステム・装置を検証評価した。また、船体応答の評価情報にもとづき設定された操船情報をバラスト制御システムヘ伝達し、安全かつ経済的な荷役を行う総合システム用プログラムを作成した。
 (担当:住重、石播、川重、日立、三菱)
[3] 最適航路計画システム
a. 最適航路計画システムの開発
(a) 単独シミュレーション
 単独シミュレーションの実験評価方法の決定、シミュレーション実行、データ解析及び評価等を行った。また、シミュレーション結果にもとづくソフトウェア改良を行った。
 (担当:日立、石播、川重、住重、鋼管)
(b) 総合シミュレーション準備
 総合シミュレーションに向けてシステム設計及びシミュレーション用試作機(条件設定盤)の製作を行った。
 (担当:日立)
[4] 総合運航管理システム
a. 最適自動運航管理システムに関する開発指針設定と総合評価
(a) 総合シミュレーション全体計画の検討
 各要素システムごとにその本来の機能とシミュレーション上の機能を対比し明確にした。つぎに、最適自動運航シミュレーションの基本方針を確立し、そのシステム構成、データの流れ等を検討、確認した。また、船内統合管理シミュレーション及びデータ通信処理装置の実験についても、それぞれの実施要領の概案を検討・確認した。
 担当:石播、川重、住重、鋼管、日立、三井、三菱、ジャパンライン、川汽、商船三井、郵船、昭和海運、山下新日本、東船大、東大、阪大、神船大、気象協会、船所
(b) 総合シミュレーション及び実用化へ向けての支援と評価
 最終評価関連作業方針を見直し、本年度及び次年度に行うべき各種評価・支援作業の位置づけとその手順・方法の再検討を行った。続いて、各要素システムごとに個別システムとしての支援と開発成果の個別評価を行い、次年度の総合シミュレーション及び最終総合評価へ向けての前段階を完了した。
 担当:石播、川重、住重、鋼管、日立、三井、三菱、ジャパンライン、川汽、商船三井、郵船、昭和海運、山下新日本、東船大、東大、阪大、神船大、気象協会、船所
b. データ通信サブシステムの開発
(a) 実証実験
 ハードウェア及びソフトウェアに関する下記の基礎実験を実施し、全て所定の要求仕様を満足していることを確認した。
 通信処理装置の機能の実験
 通信処理装置の性能測定の実験
 通信処理装置の通信効率の測定実験
 通信処理装置の誤り制御効果の実験
 経済的伝送ソフトウェア(風波浪グリット情報)の実験経済的伝送ソフトウェア(予備品管理情報)の実験
 船陸間ビデオテックス伝送実験
 船陸間静止画伝送実験
 ファクシミリ(G4)の縮図伝送実験
 ファクシミリ(G4)のカラードロップによる実験
 キャラクタ情報の伝送時間比較実験
 (担当:石播、川重、鋼管、三菱)
(b) 試作機器及びシステムの製作・改良
 ハードウェアとして、通信処理装置の実験用プリンテッドサーキュイットボード6ユニット、及びインターフェース(モデムシミュレータ)を製作した。
 ソフトウェアとしては、実験用被伝送データソフトウェアを開発し、あわせて63年度の単独評価実験時に使用する表示・画像プログラムを作成した。
 (担当:石播、川重、鋼管、三菱)
c. 船内統合サブシステムの開発
(a) システムの実用試験
 統括管理、船内データベース管理、船内情報伝送管理の夫々のソフトウェアについて、昨年度のテストシミュレーションの結果、摘出されていた問題点を改良して、改良点の確認とシステムの作動検証の為のシミュレーション運航実験を行った。本年度のシミュレーション実験は、前記の三つのソフトウェアを相互に結合して実施出来る様にした。
 (担当:三菱、石播、川重、住重、鋼管、日立、三井)
(b) システム実用試験の評価・分析
 システム試験の結果をシステムの無人化性、安全性、信頼性、保守性、即時性、緊急対応性、等の観点より評価、分析した。また、システムが船の運航上必要な程度の作動速度をもっているかどうかについても評価分析した。
 (担当:三菱、石播、川重、住重、鋼管、日立、三井)
(c) システムプログラムの改良
 昨年度開発したシステムをべースに、推論表示の自然文表示化、グラフィック表示内容の充実、データベースと知識べースの結合、状態表示項目の見直し、船陸間通信部分の見直し、サブシステム状態表示の追加、システム作動時間の短縮等の改良を行った。
 (担当:三菱、石播、川重、住重、鋼管、日立、三井)
(2) 出入港自動化システムの研究開発
[1] 港内航行誘導システム
a. 港内航行誘導システムに関する開発指針の設定と海陸一体運航システム評価
イ. 港内航行誘導システム各試作機器の評価
61年度に作成した試験方案に従い、各サブシステムを結合し港内航行誘導システムとしてモード移行時の実験を行い、種々の立場から評価を実施した。
 担当:石播、川重、住重、鋼管、日立、三井、三菱、ジャパンライン、川汽、商船三井、郵船、昭和海運、山下新日本、東大、東船大、広大、神船大、九大、船研
b. 港内航行誘導システムの開発
(a) 試作機器の実験・評価・改良(第2次)
 港内航行誘導統括システム、港内自己誘導装置および操縦運動シミュレーション装置の単独実験と結合実験を行い、基本動作が設定通りであることを確認した。
 さらに、来年度(63年度)に行う総合シミュレーション実験のための装置について設計計画を実施した。
 (担当:石播、州重、住重、鋼管、日立、三井、三菱、船所)
c. 港内航行誘導支援装置の開発
(a) 試作機の実験・評価・改良
 港内航行誘導支援装置のもつ、狭域衝突予防装置、港内航路設定装置及び港内船位認識装置の三つの主要な装置のアルゴリズムの有効性及び機能の確認をするため試験用航行イベントシナリオを作成し試作機単独でシミュレーション実験を繰り返し行って、アルゴリズムソフトの改修と各種パラメータの最適化によりシステム全体が合理的に作動するよう調整・改良した。ついで、港内航行誘導システムの試作機と組合せ港内航行イベントシナリオにもとづきシミュレーション実験を行った。
 (担当:鋼管、三菱、川重、石播、住重、日立)
(b) データの解析
 上記の試作機単独シミュレーション実験及び組合せシミュレーション実験の結果からデータ解析を行い、試作機の機能、能力を詳細に検討した。
 (担当:鋼管、三菱、川重)
[2] 衝突・座礁予防システム
a. 衝突予防システムの開発
(a) 予測衝突危険範囲設定ソフトの検証・改良
 昨年度開発した予測衝突危険範囲設定ソフトウェアを多数のシミュレーションにより検証・改良した。本年度の研究で、他船同士の避航も考慮した予測衝突範囲に関する情報を生成できるソフトウェアが完成した。
 (担当:住重、三菱)
(b) 避航ロジックの検証・改良
 昨年度開発した衝突避航ロジックを多数のシミュレーションにより検証・改良した。本年度の研究で、全関連船舶の将来行動を法規・慣行に則る動作であるとして予測し、自動避航に関する操船情報を生成できるソフトウェアが完成した。
 (担当:川重)
(c) 総合シミュレーション準備
 総合シミュレーションでの実施・表示内容、最適航路計画システムとの接続・通信及び個別シミュレーションでの実施・表示内容、プロジェクタの接続を検討した。
 (担当:川重、住重)
b. 座礁予防システムの開発
(a) 危険予知システムの試験・解析・評価
 東京商船大学の汐路丸に乗船し、東京湾と大島西側を航行中のレーダビデオとディジタル海図とのマッチング及び航路監視シミュレーション実験を実施し、下記各種諸機能の確認及び評価を行い、不充分な個所の改良を行った。
 航路情報の自動入手
 自船位置の高精度自動プロッティング
 水面下の障害物の自動検知
 危険性の自動制御
 危険情報の自動出力
 (担当:住重、三菱、日本鋼管)
(b) 水中障害物ソナーの試験・解析・評価
 昨年度製作した試作機を実験船に搭載し、沼津市三津の実海面において、春期、夏期、秋期の3回実験を実施し、下記、各種機能の確認及び評価を行い、不充分な個所の改良を行った。
 送受波器の特性
 浅海域における音線特性
 水中雑音除去
 探知距離及び精度
 水中障害物情報の自動出力
 (担当:住重、三菱、鋼管)
(c) 座礁予防システムのまとめ
 本年度の機能確認及び評価によって、改良した最終的なシステムの仕様、フローダイヤグラム、ソフトウェア階層構造図等を完成させた。
 また、将来の実用化への対応として、ハードウェア及びソフトウェア等の見直し、検討を行い、問題点の抽出及び対策を立てた。
 (担当:住重、三菱、鋼管)
[3] 自動離着桟システム
a. 自動離着桟システムの開発
(a) 試作機器の評価・改良
 離着桟制御装置のソフトの改良を行い、単独シミュレーション及び出入港評価シミュレーション(操縦運動シミュレーション装置と接続して行うシミュレーション)による検証を行い所期の性能をもつことを確認した。
 (担当:日立)
[4] 自動係船・錨泊システム
a. 岸壁係船システム及び乗下船装置の高度自動化開発
(a) 索繰り出し試作装置の実験・解析
 索繰り出し装置、係船ウインチ等からなる係船装置と、コンピュータ、シーケンサ等からなる制御装置を組立、調整後、実験を行い、機能の確認をした。また、実験データの解析も行った。
(担当:鋼管、石播、川重、住重、日立、三井、三菱)
b. 自動錨泊システムの開発
(a) 試作機器の実験・評価・改良
 昨年度までに試作した錨泊制御装置について、まず、自動錨泊システムがもつシミュレーション機能を用いた単独シミュレーションによる実験・評価・改良を実施した。
 つぎに、関係システムとともに自動錨泊システムと船舶技術研究所に設置されている操縦運動シミュレーション装置との接続試験を実施した。さらに、関係システムとともに、出入港自動化シミュレーションを実施して、錨泊制御装置の実験・評価・改良を実施した。
 また、次年度に予定されている総合シミュレーションに備えて、問題点を明らかにするとともに、その対策についても検討した。
 (担当:川重・住重・鋼管・日立・三菱)
[5] 自動荷役システム
a. 乾貨物自動保全システムの開発
(a) 乾貨物の荷傷み防止装置の実験・評価
 石炭の自然発火監視システムについて、木製中型石炭槽中の物標筒検知実験、次いで木製中型石炭槽中の乾燥地検知実験を行い、いずれにおいても物標の三次元的形状の把握に成功し、石炭運搬船の貨物船の環境下でも、自然発火監視機能を有する事が実証出来た。
 (担当:三井)
(b) 実用化への指針の策定
 5種の貨物保全システムに関する研究開発成果と、実用化段階への指針について取りまとめた。
 (担当:川重、日立、石播、三井)
(c) コンテナ荷崩れ予測ソフトウェアの改良
 実際の船体運動下で得られる船体状態監視情報が入力された場合に、コンテナ保全装置の状態情報を適切に出力する機能を有する点を評価・確認するためのソフトウェアの改良を行った。
 (担当:三井)
b. 乾貨物荷役の高度自動化開発
(a) 自動荷役制御装置試作機器の実験・評価
 自動荷役制御ソフトの拡充を行うとともに、デッキクレーンモックアップ装置と制御コンピュータによる自動荷役実験を行い、機能を検証した。
 (担当:三井)
(b) 荷役作業関連自動化試作機器の実験・評価
 61年度製作し、ハード関係の実験を行った船倉内貨物集積・清掃装置試作機に自動運転用センサ・制御装置を組込み、制御ソフトを作成して、自動運転実験を行い、機能を検証した。
 (担当:三井)
(c) 実用化への指針の策定
 開発研究を行った各項目について実用化への方策・追加検討必要項目などをまとめた。
 (担当:三井、三菱、住重、鋼管)
c. 液体貨物荷役の高度自動化開発
(a) 試作機器の性能確認実験・改良
 ポンプキャビテーション発生検知装置に対して、センサの応答性等に関するソフトの改良を行った。ポンプの各運転点でセンサとしての性能試験を行った結集、定量的にポンプのキャビテーション発生初期から現象を正確に捉えることができ、性能的に計画時の仕様を満足する成果を得ることができた。
 (担当:鋼管)
(b) 全自動荷役システムのシミュレーション
 61年度作成した全自動液体貨物制御システムが貨油積載・満載航海・貨油荷揚・バラスト航海の各作業ステージにおいて、荷役開始から手仕舞までの一連の荷役作業を自動的に遂行するための荷役制御トータルシステムとして十分な機能を有し、且つ荷役中の異常状態に対しても適切に対処することをシミュレーションにて検証し、実用化が可能であることを確認した。また、液体貨物荷役作業において、陸上からの荷役作業条件に基づき、積載から荷揚までの荷役制御トータルシステムを統括する荷役計画立案機能として、初期荷役計画作成システムの外部仕様書を作成した。
 (担当:石播、川重、鋼管、三井、三菱)
(3) 研究開発成果の広報資料作成
[1] 映画の製作
a. シナリオの計画立案
 本研究開発の成果を広報するため、研究開発現場のロケーション、太平洋航路コンテナ船の航海中乗船撮影等を含む22分の映画シナリオを計画立案し、作成した。
 (担当:造船7社、(株)ポルケ)
b. 映画の製作
 上記のシナリオにもとづき16mm映画「考える船」(日本語版)、「Intelligent Ship」(英語版)各22分を製作した。製作は(株)ポルケが行った。
 マスター2巻(22分)の他、日本語版プリント3本(6巻)、英語版プリント3本(6巻)、ビデオテープ10本(20巻)を作成した。
 (担当:(株)ポルケ)
■事業の成果

本事業は、陸上からの支援により船内作業の大幅削減を可能とする海陸一体化の運航システム、機器の運転状態、気象・海象状態の科学的評価に基づき最も経済的で安全な運航のあり方を判断し、自動操船を行う知能化システムから成る最適自動運航システム及び出入港自動化システムについて研究開発を実施しようとするものである。
 その第5年度にあたる本年度研究においてはシステムと装置の試作及び調整試験を行い、また、改良すべき点についての前年度の摘出結果を受けての試作改良及び実験を十分に行うことができ、これら各要素システムの評価を行い、所期の目的に叶うことを確認した。さらに、次年度に予定されている総合シミュレーションのための予備検討も行い、これについての最終総合評価のための準備を行うことができた。
 これらの成果により、高度自動運航システムの研究開発はさらに達成の域に近付いたものと考えられ、わが国造船業界並びに海運業界の今後の発展に寄与するところ大なるものがある。





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