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■事業の内容

(1) 輸出船市場調査研究
[1] 調査対象エリア
エリア18  セネガル、モーリタニア、カナリー諸島、リベリア、ガーナ、ナイジェリア
エリア19  シェラレオーネ、コートジボアール、ギニア
エリア20  スーダン、ケニア、タンザニア、南アフリカ共和国、マダガスカル
[2] 調査研究項目
(a) 一般事情(政治、経済、産業、貿易)
(b) 海運事情(一般事情、船主の実態とその保有船舶、海外荷動需要の現状、海運政策)
(c) 船舶事情(船舶保有量、船腹需要、船腹拡充計画)
(d) 漁業事情(漁業の実態、漁船保有状況、漁業開発計画、漁船拡充計画)
(e) 造船事情(造船所の実態、建造能力、造船政策)
(f) 港湾事情(含、開発計画)
(g) わが国からの輸出実績及び輸出対策
(h) 評価
[3] 調査概要
 今回調査研究を行ったエリア18、19および20の14カ国は、リベリア、南アフリカ共和国、カナリー諸島を除いて発展途上国である。
 先ずリベリアは、同国に登録されている船舶の殆どが外国系船主の便宜置籍船であり、同国自体の船舶需要については期待できない。
 また、南アフリカ共和国は海運力の増強に努めており、ある程度の船舶需要が見込まれるが、同国のアパルトヘイト政策により政情が不安であり、ここ当分輸出市場として期待できず、カナリー諸島はスペインの一州であり、その海運業もスペインが支配しており市場として考えられない。
 残り11カ国(発展途上国)のうち、ナイジェリアは往年その豊富な鉱物資源により比較的経済事情も安定しており、政府も海運力の増強・近代化に努めていたため船舶需要も活発であったが、世界的な石油需要の減退に伴い財政が悪化し、船舶建造意欲も減退している。更に第3造船国の進出、円高によるわが国の国際競争力の低下等により受注に直結させることは難しい状況である。
 その他の国々については、経済事情も悪く(中には飢餓状態の国もある)、また、その殆どが旧宗主国であるフランス或いは英国と密接な関係にあり経済面をはじめ全ゆる面で援助を受けている。更に、わが国はこれらの国々とは地理的にも不利な条件にあり殆ど市場として期待できない状況である。
 但し、これらの国もそれぞれの実情に応じて船舶建造の希望を持っているが、これらは経済協力船(無償)による他ないと考えられる。

(2) 海外市場調査
[1] 調査先  バングラデシュ
[2] 調査員  (株)新潟鉄工所 造船事業部営業部次長 久保田 昌弘
石川島造船化工機(株) 船舶事業部営業グループ課長代理
清水  康男
林兼造船(株) 営業部新造船営業課   筒井  隆幸
事務局 業務部長           服部   要
○ 主な訪問先 Ministry of Port,Shipping and In land Water Transport
Bangladesh Fisheries Development Corporation
Bangladesh In land Water Transport Corporation
Bangladesh Shipping Corporation
Chittagong Port Authority
External Resources Division
Marine Fisheries Academy
[3] 調査期間  昭和61年9月25日〜10月3日
[4] 調査内容  船腹拡充計画(経済協力船を主とする)
輸送量実績と今後の見通し
日本を除く外国からの船舶の供与状況
現地適存船の選定
その他経済協力船の供与促進に関する事項
[5] 調査概要
 バングラデシュ経済は破産状態にあり、日本をはじめとする欧米先進国からの経済援助に全面的に依存している状況である。従来これらの援助は食糧援助がその主体を占め、これにより漸く飢餓状態を脱したところであり、今後インフラ関係の整備・拡充に着手しようとする段階である。
 同国の現在の船舶保有量は約36万GTであり、自国船による積取比率は約15%であるが、政府は海運力を増強して、これを40%に引上げるよう計画をたてている。しかし、同国の経済事情からみて、完全実施は困難と考えられる。
 更に第3造船国である中国、韓国が進出しており、国際競争力からみて、これらのコマーシャルベースによる受注は難しい状況である。このため、同国に対しては経済協力船(無償)によるしかないと考えられる。
 一方、同国は河川を利用した水路が発達しており、これらに係る船舶の需要があり、政府はこれらを調達する計画をもっている。
船種としては、浚渫船、タグボート、水路調査船、RO/ROフェリー等である。但し、経済協力船についても西独、フランス、スウェーデン等の諸国が積極的に受注活動を実施しており、わが国においても積極的な対応が必要である。
 今回の調査により、同国の市場としての実情、現地道存船の概要が判明したので今後の対応の指針となる。
■事業の成果

近年の日本の中小型造船業の工事量に占める輸出船の割合は、国内船の建造需要の激減もあり約70%となり、斯業が存続していくためには輸出船に頼らざるを得ない情勢にある。
 しかるに、世界的な船腹過剰によりその需要は依然として低調であり、これに加え第三造船国の進出も日増しに激化している。
 又、かって好市場であった中近東、アフリカ、中南米諸国は政治紛争・インフレ等の要因により注文は途絶えがちとなっている等、これらの状況から国際競争は熾烈化の一途を辿り海外市場は益々狭められている。
 本事業により海外市場調査、広報宣伝等を行い、国際競争力を強化すると共に海外市場の維持、開拓を行ったことは、今後の日本船舶の輸出の振興に大きく寄与するものと思われる。





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