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■事業の内容

(1) 海上実験
 東京湾内において底質種別の異なる地点4カ所を選定し、簡易コアリングによって海底4〜5mまでの海底地質を採取するとともに、コアリング孔を利用した密度検層及びVSP検層3〜24KHzの送受波器を使用した反射音響データを収録した。
 実施期間  6月30日〜7月5日
(2) 海底地質データの分析及び試験
 海上実験で得られた海底地質試料について、次の5項目の分析及び試験を実施した。
a. 粒度組成分析
b. 含水比試験
c. 湿潤密度試験
d. 比重試験
e. 音波伝播速度試験
(3) 音響データと海底地質情報との相関についての解析
 海上実験で得られた反射音響デジタルデータについて、雑音除去、ゲイン及び波形整形の前処理を施し、高速フーリエ変換による周波数解析、減衰解析を実施した。
 このコンピュータ解析をした音響データと土質試験データとの各パラメータについて、海底下4〜5mの地質の数量的判別可能性について相関解析を実施した。
(4) 判別方式の研究
 前項の解析結果を検討すると、4地点それぞれが地質性状に相違があるため一様ではないが、比較的高い周波数と粒度組成の変化が高目の相関性を示していることが特筆される。また、反射音圧記録と地質構造を対比させて見ると、視覚的には反射音圧記録の方が微細な変化を示していると解釈できるが、数量的な評価は困難であった。その他のパラメータには明瞭な相関性は認められず、この点、更に詳細な解析と検討を要するものと考えられる。
 一つの方法として、反射音響データから直接音響インピーダンス列を求めるソフトの開発を行い、土質物性としての密度、音速度の関係から粒度組成を判別することも最近の学説から見て可能性がある。
 今後、音源についてもなるべく高い周波数を含む幅広いものを使用し、分解能の向上と情報量の増加を図ること等の改良、工夫を加え、より判別能力を増強することが必要と考えられる。
■事業の成果

今年度は4ケ年計画の2ケ年目に当り、東京湾内において、初年度の成果を踏まえ、より整った波形の送受波器による音響データと、簡易コアリングによる乱れの少ない海底地質試料を得て研究を進めた。表層については、既に初年度において、音圧分布と粒度組成との相関が高いことが判明しており、今年度は海底下4〜5mの判別について期待されたわけであるが、結果的には高い周波数において相関性が認められた。ただし、明確な判別方法が得られたとはいえない。
 しかし、今後,一部の改良と新たなソフト開発を含むより詳細な解析によって、判別方法の設定の見通しが得られたことは評価でき、この研究を基礎にして、統合ファイル実用化が実を結ぶことにより海難防止に寄与するところ大なるものがある。





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