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■事業の内容

(1) 海洋情報統合ファイルの詳細設計
 昭和60年度の研究結果を基に統合ファイルのデータ構造及びデータ量並びに提供システムの処理機能を取りまとめて詳細設計を行った。
[1] 提供システムの外部仕様について
a. 提供システムによって提供することを目標とするデータの範囲を決定した。
b. 提供システムで使用する以下のデータ項目の出典は次のとおりとする。
水深-JODCの磁気テープ
地質-沿岸域情報整備調査の「底質」磁気テープ
藻場-沿岸域情報整備調査の磁気テープ
渦流・急潮発生箇所-沿岸域情報整備調査の磁気テープ
c. 社会データ項目については、最低限、位置と名称を表示する。
d. 各データ提供機関は、その責任の範囲内でデータを更新できるようにする。
e. 検索対象の海域を、緯度方向、経度方向で異なる度数で指定できるようにする。
f. 「水深」の検索については、次の3種類とする。
(a) 水深幅による検索
(b) 以深値による検索
(c) 以浅値による検索
検索は0.1メートル単位で行う。
g. 「潮汐」の表示については、潮位関連図だけでなく、潮汐調和定数の値も表示する。検索結果のプリント出力では、機関コード、分潮数を出力する。
h. 「水温」の加工については、最大水温値、最小水温値を求めるのではなく、平均、標準偏差を計算する。
i. 観測地点等の表示は、点数が多いとディスプレイ画面が見にくくなってしまうので、これを避ける方策を検討する。
j. 「漁港」の種別は、検索結果一覧表の画面で表示する。登録漁船隻数、水場げ高、漁港地区人口、係船岸壁延長をデータ属性表示画面に5年分表示する。
k. 「環境基準類型あてはめ水域」の検索データ入力画面で類型も検索条件に加え、類型ごとに色分けして表示する。
l. 「公園区域と水産動植物」の検索結果図画面で両者を色分けして表示する。
m. 全般事項
(a) 検索結果図画面では、検索条件として指定された海域のみを表示し、経度・緯度方向を表示エリア内いっぱいに表示する。検索結果図画面に、海域の緯度・経度も表示する。
(b) 画面のスクロールは実施しない。
(c) 検索結果図画面からも、プリンタ、フロッピーディスクヘ出力できるようにする。
(d) 社会データ項目の検索条件は、基本的には海域及び行政区域とする。
(e) 海域指定時にメッシュ分割数も指定できるようにする。
(f) 検索結果図画面においては、各メッシュごとの統計値のみでなく、海域全体の統計値も表示する。また、データ点数も表示する。
n. 「データ更新」において、提供情報ファイルを指定する場合は、既に登録されている提供情報ファイルの一覧表を表示し、番号選択により指定する。
o. 「環境基準類型あてはめ水域」のデータ属性表示画面では「観測年」も表示する。
p. 「海流」「海上気象」等の検索結果を出力する時は「観測年月日」も出力する。
[2] データ量の調査について
a. 管区ごとに海域を分割するのではなく、緯度、経度によって海域を分割する。
b. 社会データ項目についてもデータ量を調査する。
[3] 内部仕様について
a. 提供システムの範囲としては、海上保安庁水路部にあるACOS-650も含めるものとする。
b. 本システム全体の名称を「統合ファイルシステム」と呼ぶこととする。
[4] 統合ファイルの構成/構造
a. 統合ファイルは、管理情報ファイル、提供情報ファイル及びプログラムから構成される。
b. 提供情報ファイルの構造としては、階層構造、網構造、関係構造の3種類が考えられる。これらの構造を比較検討して、多様なニーズに容易に対応できる点、データベースの変更が容易である点から関係構造が適しているので、これを採用する。
(2) プログラムの開発及び統合ファイルの構築
 (1)に従い、処理及び提供システムに必要なプログラムを開発し、これを用いて統合ファイルを構築した。
[1] プログラムの開発
 統合ファイルとは、提供情報ファイル及びプログラムの集合体である。統合ファイルシステム内に存在する管理情報テーブルに、これらに関する情報が書き込まれることにより一括管理される。
a. 提供情報ファイルは、位置を示す緯度、経度、観測年月日、あるいは観測値などが、ある固有の形式で書き込まれているファイルである。
b. プログラムはその処理内容によって、検索、加工、再編成に分けられる。
(a) 検索プログラムは、提供情報ファイル内のデータの検索を行うものである。
(b) 加工プログラムは、提供情報ファイルを用いて、統計処理、図表示など各種の加工を行うものである。
(c) 再編成プログラムは、既存の提供情報ファイルに新しい属性の追加、あるいは提供情報ファイル内のデータ抽出などを行って、新しい提供情報ファイルを作成するものである。
[2] 統合ファイルの構築
 管理機能のプログラムを使用し、海洋情報統合ファイルを構築した。構築の手順は次のとおりである。
(a) 統合ファイルシステム用マスターファイルの作成
(b) 中間ファイルの作成
(c) フロッピー登録
(d) コード変換
(e) 提供情報ファイル登録
(f) プログラム登録
(g) スキーマ登録
(3) 利用テスト及び評価
 開発した諸プログラム及びファイルを用いて、利用テストを実施し、結果を検討・評価した。
[1] 管理機能
 統合ファイルシステムの管理機能については、フロッピーディスク、提供情報ファイル。利用者プログラムの登録、更新、削除等、管理に必要な機能がすべて準備されており、新たな提供情報ファイルや利用者が作成するプログラムも登録できるため、システムとしての拡張性も十分確保されていると考えられる。
[2] 提供機能
 提供機能は検索、加工、表示・出力の諸機能に分けられる。それぞれの機能は利用者の円滑な業務実施に有効に活用され、フロッピーディスクヘの出力機能を準備したことにより、紙を媒体とした従来の提供方法に加え磁気媒体による提供方法も可能となったため、データ提供機関としてのサービス内容も大幅に向上するものと考えられる。
[3] 操作性
 格納媒体の種類を変えて岸線表示の応答時間を計測した結果、1次メッシュの海域の岸線表示に要する時間は、フロッピーディスク160秒、ハード・ディスク104秒、RAM・ディスク95秒であった。また、水深データを対象として、検索されるデータ数(100個)と応答時間の関係は、いずれの場合も約25〜30秒で処理が終了しており、この時間は利用者にとって十分許容できる時間であると考えられる。
 本システムは、海洋情報を連結して利用する場合の利用効率化を図るという目的には十分対応できるものと評価できる。
■事業の成果

沿岸域における海洋情報は、水深・波浪及び気象等の自然情報並びに港湾・漁港・マリーナ・養殖施設・航路・魚礁・港湾区域・漁港区域・漁業権設定区域等の社会情報等多岐にわたっている。
 しかし、これらの情報は分散して所在しているのが現状であり、連絡して利用する場合には不便な状態におかれている。
 本研究では、これら各種情報の利用の効率化を図るため、海洋情報統合ファイル及びその情報を提供するための海洋情報提供システムの設計と必要なプログラムの開発並びに実際のファイルの構築を実施した。
 利用テストの結果、海洋情報を連結して利用する場合の効率化を図る目的には十分に対応でき、今後は海洋情報を必要とする場合、大いに貢献するものと期待される。





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