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■事業の内容

軌道空間都市の実用化研究
1) 研究項目  軌道空間都市(トラポリス)の実用化研究
2) 研究内容
[1] テーマI:「トラポリスの実用化に伴う社会的・工学的課題に関する研究」
イ) 建築構造物の振動伝搬制御
 前年度までに固体音に対する防振道床の構造及び効果、構造物中に伝搬特性等について模型(昭和59年度製作の1/2縮尺模型)を用いて実験・研究を行ってきたが、本年度はその成果を踏え実用面へ検討をさらに進めて、まず列車走行に伴い軌道面に対する加振力の特性を実測により明らかにし、固体音の構造物に対する伝搬系において実用的な固体音の制御及び予測手法を検討した。
ロ) 長大構造物の供給処理システムに関する研究
 既成市街地内にトラポリス(新市街地に相当する)を導入する場合、諸供給処理システムは、市街地の既成システムに大きな負担をできるだけかけないよう工夫をこらす必要がある。中水道、雨水抑制下水道、ゴミ処理等にわたり、トラポリス建設に際し、附帯すべきシステムの研究提案を行った。
[2] テーマ<2>:「多点入力地震波を受ける構造物の挙動に関する研究」
イ) 耐震壁を含むトラポリス構造物の耐震安全性に関する研究
 前年度は多入力として時間差入力を構成し、特に対称でない2支柱で構築されたいわゆる非対称形のトラポリス構造物を想定、ねじれ振動系が時間差入力を受ける場合の挙動に注目したが、本年度は波動論により波の分散性を考慮した位相差多入力を構成、擬似動試験を通じかつ前年度との比較研究を行うことにより大スパン架構の時間差入力、位相差入力の応答特性の差を検討した。
ロ) トラポリス構造物が受ける地震力の空間分布
 位相差多入力及び2層形式トラポリスモデルを対象に地震力の分布がどのように変化するかを振動実験により検討、多質点系モデルの設計用地震力のあり方をさぐった。
[3] 実験用供試体の製作及び貸与
多入力振動試験装置用供試体  4セット
擬似動的試験装置用供試体   5セット
予備実験用供試体 1体
本実験用供試体  4体

■事業の成果

トラポリスは、都市計画的視点にたつならば都市内密集地に土地空間を生みだすことが最大の特徴である。従って、不良地宅地では周辺地域を含め再開発整備の拠点として文化、行政、公園等の諸施設設置地の空間を捻出でき避難地の確保も可能である。都心部の人口空洞化地域では、人口呼び戻しが可能となり、これまで蓄積された文化、行政、公園等の都市周辺部の郊外トラポリスは最寄駅までのアクセスサービスを省略することができる。
 一方、鉄道企業サイドの視点にたつならば所有地の高度利用をも走らすことで企業経営上の戦略となりうる。
 このようにトラポリス建設は多大の効果をもたらすことが認められ、理論上概略的には、実施可能であることがわかった。しかし、1.周辺地域の計画との調和 2.長大構造物としての構造上、防災上の問題や環境・景観に関する検討 3.現行法での取扱い等でまだ実施の可能性を判断するための問題が多く残されている。
 従って、これまでの調査及び実験研究の結果、理論上の有効性が実証され安全性確保の定めの設計法については、様々のアイデアを提案したが、本研究は基本構想の段階と事業化段階の橋渡しをするものであり、現実に実現を迎えるには、事業化段階の検討を必要とする。
 そこで本研究事業では、実用化に向け更に一層の進展を目指しこれまでの成果を踏まえ、これらの課題への対応を調査・実験により実証的に検討し、諸対策を提案できたことは、大都市における都市づくりの考え方を根本的に変えることができ、豊かな材料によって豊かで安全な町づくりが可能となることが大いに期待できる。





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