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■事業の内容

(1) 集積効果による発熱の危険性を予測する手法の開発
 ばら積み貨物として船舶運送され、かつ、集積効果による自然発熱のおそれのある物質の代表例として石炭を選び、昭和59年度から開発してきた計算機プログラムに、船倉に積付けられた石炭層の表面及び内部における酸素拡散項を導入し、以下の実験及び検証を行った。
[1] モデルによる計算機シミュレーション
a. 気体拡散を導入した計算機プログラムの開発
 実船計測に基づく発熱機構を解析し、実験により石炭の積載状態における気体拡散を導入したシミュレーション用プログラムが開発された。
b. シミュレーション・テスト・ラン
 地上実験を対象としたシミュレーション計算によって不確定要素の解析結果を基に実船のシミュレーション計算を行った。
 シミュレーションは、自然発熱の挙動を的確に把え得ることを示した。
c. 結果のとりまとめ
 三種類の石炭についてのシミュレーション計算結果を報告書にとりまとめた。
[2] 危険性評価方法の策定
 石炭に関するシミュレーション解析の方法を調査研究してきたが、その手法自体は、他のばら積貨物にも適用し得るものである。

(2) 危険性評価のための系統試験方法の国連危険物運送専門委員会及び一般危険物分科会への提案
 昨年度の国連における審議経過から、我が国提案の検討が下記会合に延期されたことから、提案審議に対処するため、秋田委員長及び近藤委員を派遣した。
[1] 会議名 :国連危険物運送専門家委員会
第35回一般危険物分科会
[2] 開催場所:ジュネーブ
[3] 開催期間:1986年8月4日〜8日
[4] 派遣員 :危険物評価委員会委員
秋田 一雄(産業災害問題研究所長)
同上委員
近藤 東郎(慶応義塾大学医学部教授)
[5] 派遣期間:1986年8月2日〜11日
[6] 審議内容:我が国提案([1]ガスの引火性、[2]可燃性物質及び酸化性物質の試験方法等、[3]毒性の測定に係る変異原性テスト)及びその対案並びに上記以外の各国提案が審議された。
■事業の成果

(1) 船舶によりばら積運送される貨物(固体)が集積効果によって自然発熱する危険性を予測するため、石炭を例に検証を行った結果、その評価方法が開発され、石炭以外の物質についても発熱源が酸化反応に基づくものである場合は、シミュレーション計算式の反応項に多少の修正を加えることにより、この危険性評価方法を適用できるものである。
(2) 国連への我が国提案の中、「可燃性物質及び酸化性物質の危険性評価のための系統試験方法」は、一部修正の後、第35回一般危険物分科会で採択された。
 以上のことにより、海上運送における固体ばら積み運送時の危険性評価については、集積効果による発熱特性に対する危険性評価方法の確立を図り、また一方、未知物質の危険性評価について昭和57年度以降策定してきた危険性のための系統試験法を国連の場へ提案することにより、これら危険物等を運送する船舶による海上災害の防止に寄与するところ大なるものがある。





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