日本財団 図書館


■事業の内容

(1) 計測機器の整備
[1] 購入により次の機器を整備した。
 ジャイロシステム  1式
[2] リースにより次の機器を整備した。
 ドップラレーダ   1式
(2) 実船試験
[1] レベルアイス及びパックアイス中試験
 浮氷域航行時及びレベルアイス中における連続砕氷航行時において、船速、加速度、応力、トルク、スラスト、回転数を計測するとともに、付近海氷の氷状を観測した。また、その時の気象・海象条件を知るために、天候、風向、風速、気圧、外気温度、水温を計測した。
[2] ラミング中試験
 リッジや極厚氷突入時の船の挙動を知るために、チャージング時において[1]項と同様の計測や観測を行うとともに本船の氷への進入距離を測定した。
[3] 氷海中旋回試験
 レベルアイス連続砕氷時に旋回試験(左旋回:舵角15°、回頭角180°;右旋回:舵角15°、回頭角90°)を行い、船速、加速度、応力、トルク、スラスト、回転数を計測し、船首方位の時間変化を記録した。また、付近海氷の氷状観察を行った。
(3) 南極海域の氷状計測
 停船時を利用して海氷上に移り、付近海氷から試験用氷試料を採取し、氷温、塩分濃度、比重、結晶、氷摩擦などを計測した。また、氷試料の三点曲げ試験を行った。
(4) 前年度実船試験結果の解析
[1] 1次処理
 72本の磁気テープに収録された実船計測結果を、帰国後一定の形式でペンチャートに出力しテープスピードや信号レベル等のチェックを行った。
 また、音声メモと出力信号の関係を求め、キャリブレーション係数を決定した。次に、これらと船速の記録およびVTR画像から割出した氷厚データとの時間的なマッチングを行った。
[2] 2次処理
 非砕氷航行時、流氷域又は平板氷中で連続砕氷航行時及びチャージング砕氷航行時に計算された軸回転数、スラスト、トルク、推進電動機の電圧・電流、対水速力、ピッチ、ロール、外板ひずみ、船首・船尾の上下・左右加速度、船体中央前後加速度などを所定の計算式を用いて解析し、流氷中あるいは平板氷中の砕氷性能、チャージング中の操船性能、船体運動などについて評価を行った。
 また、採敢氷試料について、3点曲げ試験、圧縮試験、結晶構造観測等を行い、海氷の力学的性状を調べた。

■事業の成果

南極観測船“しらせ”を利用した氷海域航行性能実験及び氷象計測の5ケ年計画の3年目の研究として、“しらせ”の本務行動に支障をきたさない範囲で、平水中及び波浪中の推進性能実験、氷海中の航行性能実験及び氷状観測並びに前年度実船試験結果の解析を行い、氷海航行性能を評価するための氷厚、氷の強度、積雪量などの氷質・氷状に関するデータ、流氷域あるいは平担水中での砕氷航行性能、ハンモックアイス中のチャージング性能などのデータをさらに蓄積することができた。
 これらの成果は氷海船舶の設計、建造に活用され、今後の氷海技術の発展に寄与するところ大なるものがある。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION