日本財団 図書館


■事業の内容

1) 研究項目  軌道空間都市(トラポリス)の実用化研究
2) 研究内容
[1] テーマ1  トラポリスの実用化に伴なう社会的、工学的課題に関する研究
イ. トラポリスの沿線地域生活に及ぼす開発効果に関する研究
 沿線実態調査より選出した地区を対象に軌道空間と沿線地域生活の現状を住民行動の実態調査及び意識調査から把握し、トラポリス導入による沿線地域の生活環境改善を具体的に予測検討した結果、トラポリス導入の社会的意味をもつ適地を模索することが可能となった。
ロ. 郊外型トラポリスのモデル提案
 これまでの23区トラポリスの検討をこえて、より広範囲にトラポリス導入の可能性を検討するため、東京近郊(区部周辺域)の地域構造の分析把握を基に郊外型トラポリスの提案を行う一方、モデル地域の選定、基本構想設計図一式及び構想模型を作成した。
ハ. 軌道床の防振工法の開発
 前年度製作の1/2縮尺模型建物を用い、新たに実験用防振床を敷設して、電車通過時に飾る固体音の制御方法について実験的研究を行い、特に軌道床の防振方法とその効果について実用的な工法の開発を行った。
[2] テーマ2  多点入力地震波を受ける構造物の挙動に関する研究
イ. 耐震壁を含むトラポリス構造物の耐震安全性に関する研究
 前年度製作の多入力振動試験装置並びに多入力擬似動的試験装置を用いて、RC造耐震壁を含む大スパン架構が多入力を受けた場合を想定した供試体を用いて多入力振動実験並びに擬似動実験を行い、その破壊性状、耐震性能上の問題点を解明し、大スパン架構建設の安全性を検討した。
[3] 実験用供試体・試験体の製作貸与
イ. 多入力擬似動的試験装置用供試体  5セット
a. 予備実験用    1セット
(壁試験体1体+柱試験体1体)
b. 本案験用     4セット
(「壁試験体1体+柱試験体1体」×4セット)
ロ. 軌道空間構造物模型の防振道床試験体1式
壁供試体     1体
防振道床試験体  1体
ハ. 多入力振動試験装置用供試体    4セット
a. 予備実験用  2セット
(柱A供試体1体+柱B供試体1体)  1セット
(梁試験体1体)         1セット
b. 本実験用   2セット
(柱A供試体1体+柱B供試体1体+梁供試体1体)
2セット

■事業の成果

トラポリスは、都市計画的視点にたつならば都市内密集地に土地空間を生みだすことが最大の特徴である。従って、不良地宅地では周辺地域を含めた再開発整備の拠点として文化、行政、公園等の諸施設設置地の空間を捻出でき避難地の確保も可能である。都心部の人ロ空洞化地域では、人ロ呼び戻しが可能となり、これまで蓄積された文化、行政、公園等の都市周辺部の郊外トラポリスは最寄駅までのアクセスサービスを省略することができる。
 一方、鉄道企業サイドの視点にたつならば所有地の高度利用をもたらすことで企業経営上の戦略となりうる。
 このようにトラポリス建設は多大の効果をもたらすことが認められ、理論上概略的には、実施可能であることがわかった。
 しかし、1.周辺地域の計画との調和2.長大構造物としての構造上、防災上の問題や環境・景観に関する検討3.現行法での取扱い等でまだ実施の可能性を判断ずるための問題が多く残されている。
 従って、今回の調査及び実験研究の結果、理論上の有効性が実証され安全性確保のための設計法については、様々のアイデアを提案したが、本研究は基本構想の段階と事業化段階の橋渡しをするものであり、現実に実現を迎えるには、事業化段階の検討を必要とする。
さらに、これまでの基礎研究、応用研究及び実際の経験上からの知識が利用され導入された開発研究が達成されるならば、大都市における都市づくりの考え方を根本的に変えることができ、豊かな材料によって豊かで安全な町づくりが可能となることが大いに期待できる。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION