■事業の内容
(1) 有害危険物等の防除技術に関する調査研究 [1] 有害液体危険物質の防除技術に関する調査研究 a. 水中における拡散挙動実験の実施 沈降性物質について、次の水槽実験を行った。 (a) 沈降拡散実験 イ. 実験項目 沈降速度、沈降拡散の状況及び拡散範囲の解析 ロ. 実験対象物質 水酸化ナトリウム、塩酸、酢酸、塩化カルシウム、グリセリン、クレゾール、1-2ジクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素、クレオソート(木炭系)、エチレングリコールジアセテート、パークロロエチレン (b) 水中溶解実験 イ. 実験項目 溶解速度及び物質の経時変化の解析 ロ. 実験対象物質 (溶解速度)クレゾール、1-2ジクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素、クレオソート、エチレングリコールジアセテート、パークロロエチレン (経時変化)クレオソート、エチレングリコールジアセテート、パークロロエチレン b. 沈降性物質の防除法及び防除資機材の検討 水中に沈降する物質の防除処理について、回収機器・検知器等資機材の有効性を検討し、これらの資機材を用いた基本的防除法を決定した。また、合わせて浮遊性物質に対して行った防除資機材の有効性評価のうち、油処理剤及び油ゲル化剤について、実験方法を変え、再度有効性評価を行った。 c. 海中拡散漂流性物質の防除法及び防除資機材の検討 挙動に関する水槽実験から拡散漂流性物質について拡散希釈の範囲、中和処理の適否、沈降剤使用の適否等を検討し、基本的な防除法を決定した。また、水面浮遊時における油ゲル化剤の有効性評価について一覧表を作成した。 d. データ・シートの作成 昨年度実施した浮遊姓物質の基本的防除法を基に個々の物質について検討を行い、物質の性状等とともに収録し、浮遊性物質の事故発生時における防除処理の参考となるよう別冊として、データ・シートを作成した。 [2] LNG、LPGの災害防止に関する調査研究 a. 衝突時の災害規模の推定 (a) 衝突による船体破壊規模の解析 液化ガス船が他船と衝突した場合に、貨物タンクにまで破壊を生じ、貨物が流出する可能性について検討を行うとともに、タンク破壊によって起こる破口の大きさを解明した。 イ. 対象船型 LNG船 125,000m3独立球形タンク方式 衝突船 1万トン、8万トン、20万トン ロ. 衝突速度と開口面積 衝突船 タンクに開口を生じさせる衝突速度 開口5m2を超える衝突速度 1万トン 12Kt以上 12Kt以上 8万トン 8.6Kt 9.8Kt 20万トン 6.8Kt 6.8Kt
(b) 危険範囲の予測 衝突解析の結果を基に、液化ガスが貨物タンクから流出した場合の液及びガスの拡がりについてシミュレーション解析を実施した。 ・ 計算結果 LNGの拡散範囲 流出速度 20m3/秒 最大液面半径 約120m LPGの拡散範囲 流出速度20m3/秒 最大液面半径 約150m b. 安全防災対策 前記a.の結果を基に、液化ガス積載船の貨物タンクから液化ガスの流出した状況を想定し、応急対策、災害拡大防止対策、救助作業等について調査研究を行った。
(2) 海上防災関係資料のしゅう集及び解析に関する調査研究 a. 国内災害事故調査 (a) 油濁事故 錦晴丸流出油事故 協和丸流出油事故 JAG DHARMA号流出油事故 LOCK WOOD号流出油事故 CARMEN号流出油事故 (b) 爆発事故 第6明和丸爆発事故 b. 海外調査 (a) 対象国及び調査機関 イ. ノルウェー ・ State Pollution Control Authority ・ The Norwegian Maritime Directorate ロ. スウェーデン ・ Swedish Coast Guard Service ハ. イギリス ・ Shell U.K. Exploration and Production (b) 調査項目 防災制度、防災対策、防除資機材、研究開発、事故事例、教育訓練等 (c) 関係機関との連携 情報拠点の確立 (d) しゅう集資料 防災対策 13点 防除資機材 2点 研究開発 7点 事故事例 6点 教育訓練 1点 施設 7点 会議論文 1点 計 37点 その他国内での購入した海外文献 8点 合計 45点 c. 海外調査入手資料及び購入文献の解析 海外調査でしゅう集した資料及び購入文献のうち33点について、翻訳、解析を行った。 d. 資料の分類 国内外から入手した海上防災関係の資料を一定の基準に基づき分類し、分類作業の基本的要領を示すとともに、海外資料についての索引カードを作成した。 ・ 基本分類 対象物質、場所、環境、性格(管理、荷役作業、排出防除作業、消火防火作業、訓練、資機材、事故例) (3) 外洋における大量流出油事故の防除技術に関する調査研究 a. 石油備蓄基地及び海洋油田の現状 石油備蓄基地及び海洋油田の施設の稼動状況、防災対策並びに防除資機材についての資料をしゅう集するとともに、むつ小川原石油備蓄基地及び阿賀沖油ガス田プラットフォームの現地視察を実施し、その現状について調査を行った。 b. 事故時の外的条件の決定 大型原油タンカー、海洋油田及び石油備蓄基地の事故による大量流出油事故を想定し、流出油量、流出速度を決定し、その場合の外洋における気象海象条件を決定した。 (a) 流出油量 イ. 大型原油タンカー 1万、6万、10万トン 瞬間流出 ロ. 備蓄基地、海洋油田 500kl/日、1,000kl/日 連続流出 (b) 気象海象条件 イ. 流れ 0.2、0.5、1.0、1.5、4.Okt ロ. 風 3.6、15.0m/秒 ハ. 流れに対する風の角度 0、45、90、135、180度 c. 油拡散影響域の予測 外洋において、大量流出油事故が発生した場合の防除対策を検討するため、各種の条件を設定し、コンピュータシミュレーションモデルを用いて、流出油の一般的な拡散・挙動について解析調査を行った。 ・ 調査事項 流出24時間後、7日後の拡散面積、拡散半径、幅、長さ
■事業の成果
本事業の完成により、調査研究項目ごとに下記の成果をあげることができた。今後、この成果を活用することにより、海洋汚染及び海上災害の防止に大きく寄与するものと期待される。 (1) 有害危険物等の防除技術に関する調査研究 [1] 有害液体危険物質の防除技術に関する調査研究 昭和58年度から、海上輸送されているばら積み有害液体物質約180種類の物質を対象にして、これらの物質が海洋へ排出された場合の防除方法の検討を進めてきた。 本年度は、海中漂流性及び沈降性物質について水中における拡散挙動実験をもとに基本的な防除法を調査研究し、昨年度実施した浮遊性物質の防除法とともに基本的な防除処理法をまとめることができた。また。浮遊性物質については、昭和59年度の基本的防除法をもとに物質ごとに特性等を考慮しながら、捲り得る防除法を類推し、データ・シートに収録した。 これにより、海上輸送される有害液体物質が事故等により海上に流出した場合の分類別の基本的防除法を解明することができた。 [2] LNG、LPGの災害防止に関する調査研究 昨年度の乗揚げに続き、本年度は、液化ガス積載船舶の衝突事故について、調査研究を実施し、その結果、衝突による貨物タンクへの影響及び貨物タンクから液化ガスが流出した場合の危険範囲を解明することができ、液化ガス積載船舶の安全防災に資することができた。 来年度は、液化ガス積載船舶の火災事故による船体及び積荷の安全防災対策について検討し、これにより、液化ガス積載船舶海難発生時の総合的な安全防災対策の確立を図ることとしている。
(2) 海上防災関係資料のしゅう集及び解析に関する調査研究 国内調査については、過去に日本周辺海域で発生した流出油事故等を中心にその概要及び事故処理作業等に関する資料をしゅう集し、一方、海外調査については、ノルウェー、スウェーデン両国の防災対策、事故処理の基本方針及び組織制度面、防除資機材、研究開発の現状、教育訓練等海上防災全般にわたって調査を行い、資料のしゅう集解析に努めるとともに、関係機関との連携の強化を図り、情報拠点が確立された。 更に、過去にしゅう集した資料は、分類基準に従い分類整理を行い、関係者への資料提供システムの基礎を確立することができた。
(3) 外洋における大量流出油事故の防除技術に関する調査研究 本年度は、石油備蓄基地及び海洋油田の現状、並びに一般的な油拡散影響域の予測を行い、外洋における流出油防除技術の確立を図る上で必要となる基本的な事項の調査研究を行ったもので、その結果、流出油の一般的な拡散・挙動を把握することができ、外洋における流出油事故対策検討のための基礎資料を得た。 来年度は、本年度の調査研究結果を基に、流出油の防除処理システムの検討及び現状の流出油防除資機材の評価を行うとともに、実際の油流出油事故における対応策を検討するため、特定の海域を想定して、流出油の拡散シミュレーションを実施する予定にしている。
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