■事業の内容
(1) A班 [1] 調査先 タイ・マレーシア [2] 調査期間 昭和60年7月24日〜8月11日 [3] 調査員 4名 団長 石川島興産(株)取締役(旧) (財)船舶解撤事業促進協会顧問(現) 山本 彰 団員 (株)寺岡鉄工企画部長 羽深 保広 宇部興産プラント事業本部エンジニアリング 本部プロセス設計第三部課長 十亀 義明 (社)日本造船工業会業務部課長 園部 廸夫 [4] 調査先 タイ国 Thai International Steel社、Thai Ship Plate社、Thai International Shipbroakers社、Nakorn Thai Steel Works,Thang Talay International社等14カ所 マレーシア国 AMS(Amalgamated Steel Mills社)、MSE(Malaysia Shipyard & Engineering社)、Perwaja Trengganu社等6カ所 [5] 船舶解撤事業の現状・見通し・問題点 (a) タイ国 1) 現在稼動しているものは、政府のライセンスを取得しているもの1社のほか、最近稼動した体制の整っていないもの1社のみで発生材生産量計約10万トン/年以下である。 2) タイ国における船舶解撤事業は、政府の投資奨励法には適合した企業であるが、事業としては民間主導型で進行している。 3) 解撤事業の重点地域は、Layong Maptaphut地区におけるNESDBの計画する政府主導の工業団地及び周辺のものと、Prachuap Kirikan以南地区でのBOIライセンスによるものとがある。 4) 解撤発生材の消化は、国内消費(内需志向)を目途としている。 5) 鉄鋼、伸鉄業者が解撤を併営したり、新たに解撤ヤードと伸鉄工場を併営する計画を持つものなど需要先とのパッケージ経営が多い。 6) 設備、工法とも技術的には台湾方式の導入が主流となっている。 7) 採算については、国内需要とのバランスが崩れない限り、十分採算に乗るものと判断でき、鉄鋼需要と共に解撤事業も進展して行くものと考えられる。 (b) マレーシア国 1) 現在マレーシア国には、実稼動する船舶解撤ヤードはないといってもよい。 2) マレーシア国における船舶解撤事業は、政府主導型になる公算が強い。 3) ブミプトラ政策の一環として、3カ所にライセンス乃至検討指示がされている。 4) 解撤発生材の消化は、国内消費を目途に計画検討されているが、大型船から大量に発生する伸鉄材の内需先がほとんどない。 5) 現状の鉄鋼関係経済環境の下で船舶解撤事業を内需ベースに採算をのせることは極めて困難である。 6) 純民間企業(ASM)の計画では、解撤・製鋼・圧延・伸鉄の4行程のパッケージ型経営を考えている。 7) 技術面では、中国系民間企業(ASM)の場合、台湾方式に進む公算が強いが、環境条件により一概には断定できない。 造船修理工場(MSE)でやる場合には、日本式あるいは、韓国式の工法の採用も十分考えられる。 8) 日本に援助を求める要望事項として、{1})船の購入に関するノウハウ、{2})購入資金、{3})設備及び施工技術指導、{4})発生林売却の指導、斡旋等である。
(2) B班 [1] 調査先 インドネシア・フィリピン [2] 調査期間 昭和60年9月25日〜10月16日 [3] 調査員 4名 団長 ヤマト国際(株)代表取締役 中牟田 登 団員 備南開発(株)常務取締役 吉田 稔 〃 七福鋼業(株)代表取締役社長 田中 邦好 〃 (社)日本船主協会企画部課長代理 植村 保雄 [4] 調査先 インドネシア国 Krakatan Steel社、Interworld Steel Mills社、P.T.Kusuma Junas Baja Indonesia社、P.T.Gunung Groha Hijou社等13カ所 フィリピン国 PHil-Asia Shipbreaking社、Atlantic Gulf & Pacific社、Philppine Sinter社、NASCO,Colorado Shipyard社等13カ所 [5] 船舶解撤事業の現状・見通し・問題点 (a) インドネシア国 1) インドネシア国における船舶解撤事業は、未だ初期の段階であり、近い将来、国際的取引を行う企業も数社現われてくるかもしれないが総じて小規模の国内船を対象にした解撤業者(5〜6社)が中心である。 2) 現在の解撤能力は、年間30万〜40万トンと推定され、スクラップの需要は、年間85万トン程度であり約1/2%以上が輸入されている。 3) 圧延事業者に対し、伸鉄材が制限され、国営製鉄製品のビレットの使用が指導され、また同製鉄が流通経路に深く関与し、価格決定を行っている。 4) 近年強力な労働者保護政策が採られ、解雇が極めて難しく多数の労働者を使用する場合、柔軟に対応できないこと。また、賃金水準が低いことによるコスト・ダウンの利点はあるが、反面、労働者の質的問題が存在する。 5) 解撤現場については、発生材の整理(場所の有利用)、食器材の有効活用、トラック・スケールの不備による発生材の計量等、運営上の問題があり、大型船の解撤を本格的に行う場合、資金・技術等の諸問題が存在する。 6) 船舶解撤事業をすすめるのに必要な現場の条件および気象・地理的条件が概ね揃っており、事業の運営及びビレットに代る伸鉄材の使用奨励等政府の施策が適切に行われれば、同事業が発展する可能性はきわめて高い。 (b) フィリピン国 1) フィリピン国における船舶解撤事業は、未だ未成熟な段階にあり、恒常的な国際取引が行われる水準には達してない。 現在、船舶の解撤を行っている企業は4〜5社程度存在すると思われるが、現時点での船舶解撤能力は、年間50万〜60万トンと推定される。 2) 現在、稼動している解撤ヤードを概観すると、大型船解撤のための立地条件及びレイアウト、雨期への対応、発生材の整理、資器材の有効活用、トラックスケールの不備による発生材の計量等に限界がある。 3) 大型船解撤に必要な要件を備えているので、今後、ヤードメーキング、資器材の配備、船舶の購入・解撤・発生材の販売等のマネジメントを効率的に行えば、大型船の解撤は十分期待できる。 4) 船舶解撤事業の採策を最大に圧迫している要因として、解撤用船舶を輸入する場合、購入価格の30%輸入税が課徴される。 5) 国営製鉄保護のため発生材の輸出が制限されており、その一方で国営製鉄NASCOが、解撤業者から購入する発生材の価格は、世界市場より相当低い。
■事業の成果
本事業は世界的な余剰船腹を解消し、海運・造船業の振興を図るため国際的規模において船舶解撤を促進させるとともに、本調査団の調査研究成果を基に現地における船舶解撤事業をより円滑に推進するため調査結果の報告と資料の提供を行い、併せてOECD、IMIF等の国際的機構に資料の提供を行い、成果の効果的利用の促進に寄与するところ大なるものがあると思われる。
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