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■事業の内容

(1) 浮遊式構造物
[1] 設計荷重と構造限界状態の検討
 各国の7種規準、規則に規定されている使用材料定数、各種荷重及び荷重係数を荷重の種類、その組合わせごとに比較検討した上、最大耐荷力に対する終局限界状態設計法と通常の使用限界状態設計を検討するとともに浮遊式箱型構造物独自の構造限界状態設計法をとりまとめ留意すべき点を明確にした。
[2] 部材断面強度算定法の検討
 限界状態設計法に基づいて制定された英国規格(BS)及び西独規格(DIN)により合成構造の部材断面強度算定法について検討し、各種の断面ごとに浮遊箱型合成構造物の断面強度算定上留意すべき点を摘出した上、船側外板の強度解析を行った。
[3] 建造施工時及び保守検査上より設計時に考慮すべき問題点の検討
 浮遊式箱型コンクリート構造物の設計時に考慮すべき点を施工段階、検査段階、曳航・係留・据付段階、保守・修繕段階の4段階にわけて摘出調査し、検討した。
(2) 浮遊-着底式構造物
[1] 耐氷構造部の設計手法の検討
 氷海域用のプレストレストコンクリート構造物の耐氷構造部について有限要素法非線形応力解析及びディープビーム設計式による解析並びに熱応力に対する解析を行い、また、サンドイッチ式合成構造の耐氷構造部について有限要素法非線形解析、簡略弾塑性解析及びアーチ理論・トラス理論による解析を行った。さらに、コンクリートの低温特性・凍結融解特性を資料により調査するとともに、コンクリート及び鉄筋の摩耗・腐食対策を解析検討した。
[2] 構造物と地盤の相互干渉の検討
 浮遊-着底式コンクリート構造物の既存の着底方法及び重力式に杭を組合わせた新方式について数値計算を行って数量的に検討するとともに海底地盤の凹凸により構造物底面に働く局所接地圧について理論解析を行った。
(3) 着底式構造物
[1] 沈設及び再浮上時安定の検討
 着底式コンクリート構造物の沈設実績に基づき現状の沈設及び再浮上工法を検討の上、沈設時における構造物の規則波中及び不規則波中における動揺解析を行うとともに地盤への影響と対策工法を解析検討した。
[2] 地震時安定の検討
 設計地震動の新しい設定方法を検討した上、数種の地震時の付加質量の計算方式を比較して、この中より固有関数展開法による計算を行い、水の圧縮性及び表面波の影響を求めた。また、構造物周辺地盤の地震による液状化に関する解析法特有の問題点を明らかにするとともに地震時に構造物が滑動することを許す設計法を導入し、在来の設計法と比較検討した。
(4) コンクリート製実機による耐久性及び強度の調査研究
 建造後約8年を経過したコンクリート製バージ「C-BOAT500」(長さ37.0m、幅9.0m、深さ3.1m)を供試体とし、下記の研究を行った。
[1] 耐久性の調査
 川崎重工業(株)坂出工場第2ドック入渠中のC-BOAT500について生物付着状況、外観の変化状況及び鉄筋の腐食状況について調査を行うとともに材質試験に用いる試料を採取した。
[2] 載荷試験
 上記の入渠中に中央一点載荷方式で重錘利用の全体曲げ特性試験を行った。スパン24.0m、荷重は14.16t〜80.89tの6段階で、たわみ10点及びコンクリートひずみ40点を計測し、実験結果を解析考察した。
[3] 材質試験
 入渠中に採取したコンクリート試料について強度試験としてシュミットハンマーによる非破壊試験及び圧縮強度試験を行い、また、化学分析として塩分量測定、遊離消石灰分析及びpH試験を行った。さらに4種の方法による物理分析を行い、化学分析結果とあわせ考察してコンクリートの劣化度を判定した。
(5) 技術指針案の作成
 海洋コンクリート構造物の技術指針の構成を検討し、詳細目次を作成した。

■事業の成果

コンクリートは耐久性に優れ鋼のようなメインテナンスが不要であるのでドックヘの定期的な入渠が困難な大規模海洋構造物には最適な材料であるため、海外では貯油機能を有する超大型のコンクリート製石油生産プラットフォームや新たな分野として氷海域のコンクリート製モービルリグが建造されている。
 本研究は今後、大きな需要が見込まれる海洋コンクリート構造物の設計・施工の確立をはかるため3カ年計画をもって実施するものであるが、その第2年度である本年度研究において浮遊式、浮遊-着底式、着底式の各構造物についてそれぞれ個有の技術課題を検討するとともにコンクリート製実機による実験的研究から海洋環境におけるコンクリートの劣化機構を明らかにした。これらの結果から設計上留意すべき点が明らかとなり技術指針の基本構想を構築することができた。





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