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■事業の内容

A 海洋汚染防止対策の調査研究
(1) 実施の項目
イ 海洋汚染防止に関する基本的事項の検討
ロ 海洋汚染防止関係条約等の国際的動向の把握、資料の収集、翻訳、解析及び情報の収集
(2) 実施の内容
イ 委員会を開催し、本年度調査研究事業の基本的事項の審議、作業方針の決定及び研究結果の評価並びに優先的研究課題の選択を行った。
ロ IMO第20回海洋環境保護委員会及び第13回、第14回バルクケミカル小委員会に技術アドバイザーを派遣し、わが国代表を補佐するとともに、各会期中開催の作業部会に参画して予め定められた対処方針に則り、わが国の意見反映に努めた。
 また、会議の模様を把握して、当局をはじめ関係方面に報告し、さらに年間を通じ海洋汚染に関する国際関係資料の収集、翻訳及び解析を行った。
ハ GESAMP・WG(EHS)への対応のため、作業部会を開催して、GESAMPの動向を把握するとともに既査定物質の見直し及び未査定物質の評定について、関連業界の意見の調整、GESAMPに提出する科学的資料の収集、作成を行った。
B 海上流入物質の挙動と海洋生態系に及ぼす影響の調査研究
(1) 実施の項目
イ 非持続性油の海産生物に及ぼす影響の調査研究
ロ 油類似有害液体物質の海産生物に及ぼす影響の調査研究
(2) 実施の内容
イ 非持続性油の海産生物に及ぼす影響を明らかにするため、次の実験を行った。
(イ) 非持続性油がミドリイソギンチャクの触手等に及ぼす影響の実験
(ロ) 非持続性油がヒザラガイの岩礁への付着力に及ぼす影響の実験
(ハ) 非持続性油によるクロフジツボの生残に関する実験
ロ 油類似有害液体物質の海産生物に及ぼす影響を明らかにするため、次の実験を行った。
(イ) 油類似有害液体物質添加海水中におけるスケルトネマの増殖に関する実験
(ロ) 油類似有害液体物質添加海水中における海水馴致ヒメダカの生残に関する実験
(ハ) 油類似有害液体物質添加海水中におけるクロフジツボの生残に関する実験
C ばら積み有害液体物質含有廃水の排出方法の調査研究
(1) 実施の項目
イ 予備洗浄マニュアルの作成に関する調査研究
ロ 換気洗浄マニュアルの作成に関する調査研究
ハ バラストのクリーン化対策に関する調査研究
(2) 実施の内容
イ P&A基準案に基づく予備洗浄について、各船が実施する必要がある場合の予備洗浄方式を調査研究し、その具体的作業方法を作成した。
ロ 附属書<2>及びP&A基準案では、換気洗浄を行った貨物タンクに漲水した水はクリーンと見なし、排出要件を課さないことと定めているので、この手法を小型ケミカルタンカーに有効に活用するための具体策を調査した。
ハ わが国の内航小型ケミカルタンカーの揚荷後における貨物タンク内の吸引点付近及び関連管系内残留物流の測定、貨物タンクの清水洗浄効果についての実際的資料を収集するため実船実験を実施し、小型ケミカルタンカーがクリーンバラストを得るためのマニュアルを作成した。
D ばら積み海上輸送される液体化学物質についての情報収集と機械処理の調査研究
(1) 実施の内容
 73/78年海洋汚染防止条約の附属書<2>の実施に備え、ばら積み海上輸送される液体化学品の海洋環境に対する汚染防止の観点と人命・積荷の安全の面からの船体の構造と設備の分野から、有害液体物質の汚染分類を査定するために必要とされる情報を収集し、コンピュータによる記憶と必要に応じて適宜その情報を検索できるシステムを作るために調査研究を実施した。
 昭和58年度においては、関連業界、関係官庁の必要とする情報は何かを調査し、ばら積み海上輸送される液体化学品の物理化学性状、人間や海産生物に対する毒性及び関連法規等についての情報を収集することが明らかにされた。対象物質は、当初国内ではら積み海上輸送されるもの、その後、IMOのMEPC(及びBCH)で報告されている物質についてのこれら情報を収集することとされた。また、情報インプットのためのコーディングカードの作成、情報のアウトプットのフォーマット及び調査項目に応じての検索を行う場合のプログラム等、ソフトウェアの検討が実施された。同時に、これらを満足できる能力を持つコンピュータについても検討が行われ、性能の比較、ソフトウェア機能の比較の結果、「FACOMシステム80モデル8」が最適とされた。
 本年度は、上記のごとき検討結果に基づき、コンピュータの基本部分を導入した。これは、CPU、ディスク一基及びプリンタ装置である。プログラムのならし運転、作動チェック等、システム全体に亘る詳細な調整が実施され、修正と改良が繰り返し行われた。この間、インプットすべき情報についての修正、新設等もあり、昭和58年度の検討結果が少なからず改良された。対象物質は国内で海上輸送されている約200物質とし、情報の収集を行った。
 情報源は、全て出版物を活用しているが魚毒性に関する情報の内16物質は、日本海難防止協会の資料である。
■事業の成果

73/78海洋汚染防止条約の附属書<2>(ばら積み有害液体物質による汚染の規制のための規則)が61年10月に国際的に効力を生ずることが予定されているが、本条約を国内法化するためには、なお相当の問題が残されている。このような、現状に立脚して国際的にはIMOの海洋環境保護委員会及びバルクケミカル小委員会に出席して、わが国の方針を直接的に反映せしめるともに、船舶からの有害物質による海洋汚染の防止に不可欠な技術的問題について調査研究を行い、上記条約の的確な国内法への導入と円滑な実施対策の確立のために、大変重要な役割をはたすことができた。





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