■事業の内容
[1] 試設計条件の調査・研究 3種の海洋コンクリート構造物について設置地点を想定して設計条件を設定した。 a. 浮遊式(発電プラント台船) ○ 設置場所 東南アジア(タイ) ○ 耐用年数 20年 ○ 曳航条件 日本〜タイ(オーシャンゴーイング) ○ 係留条件 4点係留 ○ 設計荷重 永久荷重、活荷重、環境荷重(波浪荷重)を設定 ○ 使用材料 コンクリート、鉄筋、PC鋼材、構造用鋼材の特性を設定 b. 浮遊-着底式(北極海用石油掘削リグ) ○ 設置場所 北極海 ○ 耐用年数 20年 ○ 稼動水深 20〜30m ○ 環境条件 氷荷重、地震荷重、浮遊時・曳航時の波浪、地盤特性を設定 ○ 使用材料 軽量骨材コンクリート、PC鋼材、鉄筋、鋼材の特性を設定 c. 着底式(石油掘削・生産・貯油プラットフォーム) ○ 対象海域 マレー沖、インドネシア海域、中国沿岸等 ○ 耐用年数 30年 ○ 設置地点 陸岸から200km、水深80m ○ 環境条件 地盤特性、潮汐、潮流、波浪、風、気温、地震荷重を設定 ○ 使用材料 コンクリート、鉄筋、PC鋼材の特性を設定 [2] 試設計の実施 a. 試設計 3種の海洋コンクリート構造物についてDnV、土木学会、ACI等の設計基準・指針を参考に[1]で設定した設計条件に対し試設計を行った。 (a) 浮遊武 全長83.0m、幅36.0m、深さ10.0m、吃水6.0mの発電プラント台船を全コンクリート構造及びスチール・コンクリートハイブリッド構造の2種について実施した。 (b) 浮遊-着底式 平面形状が長さ150m、幅150mの正8角形、全高50mの北極海用コンクリート製石油掘削リグ及び平面形状が長さ136m、幅136mの正8角形、全高50mの北極海用スチール・コンクリートハイブリッド構造石油掘削リグの試設計を実施した。 (c) 着底式 コンクリート重量240,000トン、底部直径106.5m、高さ108.0mのモノタワータイプ全コンクリート製石油掘削・貯油プラットフォームの試設計を実施した。 b. 強度計算等の実施 ○ 浮遊式構造物(発電プラント台船)の強度計算、安定計算(曳航時・浮遊時)を実施し設計上の問題点を明確にした。 ○ 浮遊-着底式構造物(北極海用石油掘削リグ)の強度計算、安定計算(曳航時・据付時)を実施し設計上の問題点を明確にした。 ○ 着底式構造物(石油掘削・生産・貯油プラットフォーム)の強度計算、安定計算(浮遊時・据付時)を実施し設計上の問題点を明確にした。 [3] 技術指針案の作成 浮遊式、浮遊-着底式、着底式の3種の海洋コンクリート構造物の試設計結果にもとづき技術指針の基本概念を検討し安全性の評価方法案及び6種の構成材料に関する指針案を作成した。 [4] 研究開発計画の策定 [2]、[3]により抽出され、明確となった問題点について、その解決推進方策及び年次計画を策定した。
■事業の成果
コンクリートは耐久性に優れ鋼のようなメインテナンスが不要であるのでドックヘの定期的な入渠が困難な大規模海洋構造物には最適な材料であるため、海外では貯油機能を有する超大型のコンクリート製石油生産プラットフォームや新たな分野として氷海域のコンクリート製モービルリグが建造されている。 しかしながら、我が国では、海洋コンクリート構造物の構造強度や外力に対する応答特性等についての解明が充分なされておらず、その研究の歴史も浅いことから設計・施工技術等の早期確立が望まれている。 このため本事業では3種の海洋コンクリート構造物の試設計を実施し、その結果より設計上の問題点が明確になるとともに、これを技術指針の基本概念構築に反映させることができたことは、今後大きな需要が見込まれる海洋コンクリート構造物の設計・施工技術確立に大いに役立つものと考えられる。
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