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■事業の内容

(1) 流況及び漂流予測の検証
a. 海上実験
(a) 観測項目
 流況観測は、流速計による上層、下層観測を実施。
 漂流観測は、13時間連続観測(表層)と1時間連続追跡観測を実施。
 海上風の鉛直分布の測定を実施。
(b) 観測地点
 千葉港沖、東京港沖、川崎港沖の3ケ所及び千葉港沖よりの漂流実験を実施。
(c) 観測層
 流況観測は、海面下0.5m、3mと海底上3mの3層において実施。
(d) 実験期日
 昭和59年8月27日〜8月31日
 昭和60年1月 7日〜1月10日
(e) 漂流物体
 海・空間の容量が異るドラムカン2種類と救命浮環によった。
b. 整理・解析
(a) 恒流
 各観測地点の流向、流速及び25時間移動平均値の平均ベクトル図と時系列図を作成し、昭和58年度の研究結果である予測値の恒流(潮汐残差流・吹送流・その他の流れ)と観測値との比較検討を実施した。
(b) 風圧係数
 夏・冬の実験結果より風速と風圧係数との相関を求め、昭和58年度研究結果である風圧係数との比較検討を行った。
(c) 流況の評価
 各観測地点の流向、流速ベクトルを求め、時系列図を作成し、予測値の時系列図との比較検討を実施し評価した。
(d) 漂流の評価
 漂流物体の漂流経路図を作成し、予測漂流経路図との比較検討を行い評価した。
(e) 改良
 上記の結果により、吹送流の説明変数の取り方と潮汐残差流の計算根拠となる主要分潮の追加について改良した。

(2) 予測手法の研究
a. 資料の収集
 気象庁より風資料、海上保安庁水路部、愛知県水産試験場より海象資料、運輸省港湾局、海上保安庁水路部、水産庁遠洋水産研究所、愛知県水産試験場より流況資料を収集した。
b. 資料の解析
(a) 風資料と流況資料との解析
 三河湾における15日以上の連続観測資料T.I.法で解析して潮流定数を求めた。また、25時間移動平均による恒流を求めた。恒流と風との相関について海上実験の結果判明した風の時間の取り方の改良法により相関係数を求めた。三河湾は、東京湾に比べて質・量ともに低下しているので、予測確度を高めるため、数値シミュレーションを導入した。
(b) 予測データテーブルの作成
 観測データによる解析結果と数値シミュレーション値とから各メッシュ毎のデータテーブルを作成した。
(c) 地域特性についての解析
 各メッシュ毎のデータテーブル作成に必要な三河湾の海洋構造、流況、気象(風)の特性について解析を実施した。
(d) 試算
 昨年度の流況及び漂流予測プログラムを利用して、三河湾のデータテーブルにより試算を実施した。
■事業の成果

海難や海上事故は、人命や大きな財産が失われる可能性が高く、また、油流失など重大な環境破壊をひき起す場合も多々ある。海上事故でこうした事態が起こりがちな大きな理由は、陸上事故と違って、事故現場が海水の運動や風の影響などによって移動してしまう点にある。このため、事故突発に当って、最も重要な初期救助、初期防災がどうしても遅れがちとなり被害を大きなものとしている。
 したがって、突発事故に対して人命救助と財産、環境の保全を迅速かつ適確に実施するために、現場の流況と漂流経路を正確に予測できるようにしておくことが必要である。
 本事業により、東京湾の流況及び漂流予測に必要な基礎資料を収集、解析することによって、確度の高い予測手法の研究情報を即時的に提供可能な方式を研究したことは、これらの情報を必要とする当局をはじめ、海運、建設、水産、石油等民間機関にても大いに活用されるものと確信し、もって海難防止に寄与するものである。





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