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■事業の内容

(1) 海難防止強調運動の実施
[1] 海難防止強調運動の宣伝
 海事関係者を始めとし広く一般市民の海難防止についての関心を高め、理解を深めるため関係官庁と協力し、関係42団体の協賛を得て、官民一体となった全国海難防止強調運動を9月16日から9月30日までの間、次のとおり実施した。
 次の11地区において港湾区域に重点を置き、宣伝カーを使用し、船舶乗組員、港湾関係者、漁業関係者等を対象に海難防止強調運動の巡回広報を実施した。
a. 小樽
(a) 実施日程    9月26日〜28日
(b) 宣伝実施経路  小樽-石狩湾新港-石狩港-石狩-古潭-厚田-濃昼-浜益-幌-小樽
b. 塩釜
(a) 実施日程    9月20日〜22日
(b) 宣伝実施経路  塩釜-松島湾-石巻-渡波-牡鹿半島女川-雄勝港-塩釜
c. 横浜
(a) 実施日程    9月25日〜27日
(b) 宣伝実施経路  横浜-鎌倉-江の島-茅ケ崎-平塚-大磯-二宮-小田原-横浜
d. 名古屋
(a) 実施日程    9月21日〜23日
(b) 宣伝実施経路  名古屋-境-野間-師崎-名古屋
e. 神戸
(a) 実施日程    9月19日〜21日
(b) 宣伝実施経路  神戸-須磨-垂水-明石-仮屋-生穂-塩田-炬ロ-洲本-由良-福良-湊-都志-郡家-富島-岩屋-神戸
f. 広島
(a) 実施日程    9月25日〜27日
(b) 宣伝実施経路  広島-大野-柳井-呉-竹原-三原-広島
g. 門司
(a) 実施日程    9月20日〜22日
(b) 宣伝実施経路  門司-安岡-川棚-湯玉-特牛-長府-宇部-恒見-新門司-苅田-吉富-門司
h. 舞鶴
(a) 実施日程    9月26日〜28日
(b) 宣伝実施経路  舞鶴-峰山-出石-久美浜-細野-丹後-舞鶴
i. 新潟
(a) 実施日程    9月17日〜19日
(b) 宣伝実施経路  新潟西港-松浜-太夫浜-島見浜-太郎代-新潟東港-網代浜-藤塚浜-中条-岩船-上海府-山北-寝屋-五十嵐浜-内野-間瀬-寺泊-出雲崎-柏崎
j. 鹿児島
(a) 実施日程    9月18日〜20日
(b) 宣伝実施経路  鹿児島-加治木-隼人-福山-牛根-垂水-古江-志布志-東串良-富山-串良-西桜島各港-鹿児島
k. 沖縄
(a) 実施日程    9月18日〜20日
(b) 宣伝実施経路  那覇-恩納村-名護-渡久地-辺土名-東村-石川-中城-港川-糸満-那覇
[2] 海難防止用資料の作成配布
 次のとおりパンフレットを作成し、関係者に配布した。
a. パンフレット(プレジャーボート事故0への願い)
(a) 規格   B5判 12頁 2色刷り
(b) 部数   9,000部
(c) 内容   プレジャーボート運航にあたって、出港から入港までの注意事項、航法等について説明したもの。
(d) 配布先  海難防止強調運動に合わせ関係先へ配布した。
b. パンフレット(磯釣り事故0への願い)
(a) 規格   B5判 12頁 2色刷り
(b) 部数   9,000部
(c) 内容   磯釣り・瀬渡し船の出港から入港まで及び釣客の安全に関する事項等について説明したもの。
(d) 配布先  海難防止強調運動に合わせ関係先へ配布した。
c. 出港前のチェックポイント
(a) 規格   A3判 2色刷り
(b) 部数   9,000枚
(c) 内容   主として小型内航船の出港前の点検箇所及び着眼点等を簡潔に説明したもの。
(d) 配布先  海難防止強調運動に際し主として小型内航船及びその関係者へ配布した。
d. 出港前のチェックリスト
(a) 規格   A3判 2色刷り
(b) 部数   9,000枚
(c) 内容   出港前の点検結果を記入し、安全確認をするためのもの。
(d) 配布先  海難防止強調運動に際し主として小型内航船及びその関係者へ配布した。
[3] 海難防止用ポスターの作成配布
 海難防止意識の高揚を図るため、次のポスターを作成し、関係先へ配布した。
(a) 規格   A2判 カラー印刷
(b) 部数   5,O00枚
(c) 内容   全国海難防止強調運動の実施を周知するもの。
(d) 配布先  各種船舶、船主、代理店及び関係団体
[4] 海難防止標語の募集
 5月1日から5月31日までの間一般から公募、全国から5,409点の応募があり、選考委員会において次のとおり入選標語を選定し、海上保安庁家長官表彰を行った。入選標語は、ポスター、資料等に活用した。
首席  「引きかえす勇気が守る人と船」
次席  「一に点検、二に整備、三に油断のない船出」
三席  「「まさか」より「もしも」で防ごう海の事故」
 また、他に佳作11点について、各管区海上保安本部長表彰を行った。

(2) 海難防止講習会
[1] 海難防止講習会(管理者向け)
 各地区ごとに船社、運航管理者、海事港湾関係会社幹部、漁協幹部、その他港湾管理者等、海事、港湾、水産関係の指導者層を対象に、次のとおり4個所(参加人員435名)において管理者向け海難防止講習会を開催した。
 本講習会は4人の講師がそれぞれ船舶の安全運航に関する法令・条約等の周知、海難事例からみた海難防止対策、地域の気象・海象の特性と海難防止対策等に関する事項を講演し、さらに海難防止に関するスライド映画の上映、質疑応答の実施など、受講者の技術向上に資した。
a. 干葉
(a) 開催年月日:昭和59年9月26日
(b) 開催場所 :干葉県医療センター
(c) 主な対象 :船舶乗組員(曳船、作業船)、代理店、プレジャーボート、港湾工事関係者
(d) 参加人員 :93名
b. 堺
(a) 開催年月日:昭和59年11月29日
(b) 開催場所 :大阪府臨海センタービル
(c) 主な対象 :船社、運航管理者、海事港湾関係会社幹部、漁協幹部等
(d) 参加人員 :132名
c. 徳山
(a) 開催年月日:昭和59年9月20日
(b) 開催場所 :徳山市社会福祉センター
(c) 主な対象 :海事関係者、臨海企業機関関係者
(d) 参加人員 :117名
d. 門司
(a) 開催年月日:昭和59年9月25日
(b) 開催場所 :門司文化センター
(c) 主な対象 :海事、港湾関係会社幹部、管理者、海事関係官庁
(d) 参加人員 :93名
[2] 海難防止講習会(運航実務者向け)
 各地区ごとに旅客船、漁船、小型船、タンカー等の乗組員及びその船主並びに海事関係者等の運航実務者層を対象に次のとおり4個所(参加人員327名)において運航実務者向け海難防止講習会を開催した。講習会は4人の講師がそれぞれ各種航海計器及び救命具の正しい取扱いと保守整備、船舶の安全運航に関する法令の周知と励行、海難事例からみた海難防止対策、地域の気象・海象の特性と海難防止対策等安全に関する事項を講演し、さらに海難防止に関するスライド映画の上映、質疑応答の実施など受講者の技術向上に資した。
a. 函館
(a) 開催年月日:昭和59年9月20日
(b) 開催場所 :函館港湾合同庁舎
(c) 主な対象 :青函連絡船、フェリー乗組員、漁業会社サルベージ会社安全担当者、漁業指導担当者、その他海事関係者
(d) 参加人員 :106名
b. 酒田
(a) 開催年月日:昭和59年9月27日
(b) 開催場所 :酒田市山形県漁業協同組合講堂
(c) 主な対象 :旅客船、漁船、小型船、タンカー等の乗組員及びその船主並びに海事関係者
(d) 参加人員 :41名
c. 寺泊
(a) 開催年月日:昭和59年9月21日
(b) 開催場所 :寺泊漁業協同組合
(c) 主な対象 :漁業関係者
(d) 参加人員 :85名
d. 中城
(a) 開催年月日:昭和59年6月15日
(b) 開催場所 :南西石油(株)トレーニングセンター
(c) 主な対象 :小型船舶乗組員、漁業者、代理店、各企業、海事関係者等
(d) 参加人員 :95名

(3) 海難防止巡回講習会(1地区4個所で開催した。)
 この講習会は、海難防止講習会に参加できない交通不便な沿岸の辺地で働く人々及びその家族等の関係者を対象として巡回車を利用し、海難防止に関する映画、スライドによる視聴覚面からの指導を主体として、次のとおり沿岸19地区76個所(参加人員3,868名)において実施した。
a. 釧路
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 白糠  4月23日   65名
ロ. 厚岸  4月24日   83名
ハ. 浜中  4月25日   68名
ニ. 釧路  5月 1日  160名
計  376名
(b) 主な対象:大平洋さけ・ます漁船乗組員
(c) 指導班 :釧路海上保安部

b. 根室
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 尾岱沼  12月25日   50名
ロ. 本別海  12月26日   30名
ハ. 歯舞   12月27日  100名
ニ. 落石   12月28日   30名
計  210名
(b) 主な対象:小型漁船員及び家族
(c) 指導班 :根室海上保安部

c. 小名浜
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 新地    9月25日  30名
ロ. 請戸    9月26日  22名
ハ. 岩の子   9月27日  41名
ニ. 相馬原釜  9月28日  48名
計  141名
(b) 主な対象:漁船員及びその家族
(c) 指導班 :小名浜海上保安部

d. 下田
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 新島   12月 4日  45名
ロ. 式根島  12月 5日  32名
ハ. 神津島  12月 6日  28名
ニ・ 大島   12月 7日  26名
計  131名
(b) 主な対象:漁船、瀬渡船及び遊漁船関係者
(c) 指導班 :下田海上保安部

e. 御前崎
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 相良  6月26日   45名
ロ. 吉田  6月27日   74名
ハ. 福田  6月28日   60名
ニ. 舞阪  6月30日  146名
計  325名
(b) 主な対象:小型漁船の船主、乗組員
(c) 指導班 :御前崎海上保安署

f. 蒲郡
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 宮崎   11月13日  40名
ロ. 東幡豆  11月14日  60名
ハ. 伊良湖  12月13日  30名
ニ. 豊橋   12月14日  80名
計 210名
(b) 主な対象:遊漁船、小型漁船関係者
(c) 指導班 :蒲郡海上保安署

g. 尾鷲
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 須賀利  9月26日   89名
ロ. 三木浦  9月27日  124名
ハ. 引本   9月28日   75名
ニ. 鵜殿   9月29日42名
計 330名
(b) 主な対象:漁民とその家族、遊漁者、プレジャーボート所有者、釣好きの一般市民
(c) 指導班 :尾鷲海上保安部

h. 大阪
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 谷川   5月28日  71名
ロ. 西鳥取  5月29日  48名
ハ. 泉佐野  5月30日  63名
ニ. 春木   5月31日  62名
計 214名
(b) 主な対象:漁船、遊漁船関係者
(c) 指導班 :大阪海上保安監部

i. 高知
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 甲浦   11月27日  34名
ロ. 室戸岬  11月28日  42名
ハ. 奈半利  11月29日  27名
二. 手結   11月30日  36名
計 139名
(b) 主な対象:遊漁船及び沿岸小型漁船関係者
(c) 指導班 :高知海上保安部

j. 玉野
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 日生町   10月30日  80名
ロ. 大多府島  10月31日  15名
ハ. 頭島    11月 1日  69名
ニ. 邑久町   11月 2日  43名
計  207名
(b) 主な対象:漁業関係者等
(c) 指導班 :玉野海上保安部

k. 宇和島
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 内海   1月28日  83名
ロ. 南内海  1月29日  65名
ハ. 西海   1月31日  52名
ニ. 蒋渕   2月 1日  64名
計  264名
(b) 主な対象:漁業関係者等
(c) 指導班 :宇和島海上保安部

l. 平戸
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 田乎   6月12日  45名
ロ. 大島   6月13日  35名
ハ. 志々伎  6月14日  46名
ニ. 生月   6月15日  85名
計  211名
(b) 主な対象:沿岸漁業及び旋網漁業関係者
(c) 指導班 :平戸海上保安署

m. 浜田
(a) 開催場、実施月日及び参加人員
イ. 鷺浦  2月 5日  25名
ロ. 宇竜  2月 6日  30名
ハ. 御碕  2月 7日  35名
ニ. 大社  2月 8日  35名
計  125名
(b) 主な対象:船舶所有者、漁民と家族、海事関係者等
(c) 指導班 :浜田海上保安部

n. 直江津
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 市振  11月17日  25名
ロ. 青海  11月18日  20名
ハ. 柿崎  11月19日  65名
ニ. 才浜  11月20日  46名
計  156名
(b) 主な対象:漁業者
(c) 指導班:直江津海上保安署

o. 金沢
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 小松  9月20日  25名
ロ. 松任  9月21日  30名
ハ. 金沢  9月22日  35名
ニ. 内灘  9月23日  36名
計  126名
(b) 主な対象:漁業組合員等
(c) 指導班:金沢海上保安署

p. 三角
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 竜ケ岳町  11月19日  11名
ロ. 湯島    11月20日  65名
ハ. 五和町   11月26日  30名
ニ. 本渡市   11月27日  50名
計  156名
(b) 主な対象:漁業関係者、遊漁船、プレジャーボート関係者
(c) 指導班 :三角海上保安部

q. 細島
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 延岡  11月26日  68名
ロ. 新富  11月27日  34名
ハ. 川南  11月28日  86名
ニ. 都農  11月29日  73名
計  261名
(b) 主な対象:漁業関係者
(c) 指導班 :細島海上保安署
r. 那覇
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 阿嘉・座間味  6月26日  44名
ロ. 渡嘉敷     6月27日  41名
ハ. 嘉手納     6月28日  28名
ニ. 読谷      6月29日  28名
計  141名
(b) 主な対象:漁業者、プレジャーボート関係者
(c) 指導班 :第十一管区海上保安本部

s. 渡久地
(a) 開催場所、実施月日及び参加人員
イ. 伊平屋  6月21日  25名
ロ. 伊是名  6月22日  33名
ハ. 国頭   6月25日  55名
ニ. 今帰仁  6月27日  32名
計  145名
(b) 主な対象:村役場船舶関係職員、漁業組合員、カーフェリー乗組員、プレジャーボート所有者
(c) 指導班 :渡久地海上保安署

(4) カーフェリーの訪船指導
 アドバイザーが直接フェリーに乗船し、運航及び運航管理の実態を把握して、その結果に基づき安全対策を推進するための指導、助言を行うため下記のとおり9社、9航路9隻について安全運航の調査確認を実施した。
[1] 運航管理規程及び運航規準、作業基準、事故処理基準の順守状況
[2] 海上衝突予防法等の航法諸規程の順守状況
[3] 船長の操船指導及び乗組員の執務状況
[4] 航海計器等の活用状況
[5] 旅客及び車輌の安全輸送に関する諸施設、機器の現状と保守、整備の状況(救命、脱出、消火、その他保守に関すること)
会社名 実施月日 航路 船名 トン数
琉球海運 6月26日〜28日 那覇〜鹿児島 ごおるでんおきなわ 6,881
太平洋フェリー 6月26日〜30日 名古屋〜仙台〜苫小牧 あるびれお 9,547
大洋フェリー 6月24日〜26日 大阪南港〜苅田 さんふらわあ2 12,104
加藤汽船 7月24日 神戸〜高松 りつりん 2,809
愛媛阪神フェリー 7月24日〜25日 神戸〜今治〜松山 おくどうご3 6,972
児坂フェリー 9月27日 坂出〜児島 第二さかいで丸 497
松尾フェリー 9月26日 星賀〜日比 フェリーだいあん 83
鷹島汽船 9月27日 殿浦〜今福 ニューたかしま 197
天長フェリー 10月18日 長島〜天草 第三さんよう 180 内訳  長距離フェリー 3社 3航路 3隻
中距離フェリー 2社 2航路 2隻
短距離フェリー 4社 4航路 4隻

(5) 講習会等教材の作成・整備
 海難防止に関する技術を視聴覚面から啓発するため、次のスライドを制作配付して、海難防止思想の普及を図った。
[1] スライドの制作  1種
[2] プリントの配付  75本×1種=75本
a. 題名      危険物荷役時の安全対策
b. 内容及び趣旨  内容:港内で危険物積載船舶が海難を起こした場合、港の機能を失うおそれがあるので、その安全を確保するため、荷役時の安全管理体制、手続き等について具体的に解説した。
趣旨:船舶乗組員、石油荷役関係者等に広く周知して、港内における船舶交通の安全確保を図る。
c. 規格35ミリカラーテープ同調69コマ 23分
d. 数量      オリジナル1本 プリント75本
e. 整備場所    全国の海上保安協会本支部等
■事業の成果

(1) 海難防止強調運動の実施
 わが国にとって、海は、海運、水産、レジャー等と幅広く活用されており、そこでは多種多様の船舶が活動している。このため、船舶所有者、乗組員等いわゆる海事関係者等だけでなく、プレジャーボート利用者をはじめとする一般市民に対しても、海難防止についての関心を高め、理解を深めることが必要とされる。そこで、海上保安庁並びに関係民間団体等の協力を得て、官民一体となった全国運動を展開することとした。
 本運動は今年度が初回であったが、関係民間団体等の積極的な協力が得られ、運動期間中には全国各地において宣伝カーによる巡回広報、ポスターの掲示、海難防止パンフレットの配布等を行うとともに、海上安全教室の開催、各種訓練、港内パレード等の行事も実施されるなど、海事関係者だけでなく、一般市民に対してもアピール性の高い運動となり、海難防止思想の普及、高揚に多大な効果があった。

(2) 海難防止講習会及び巡回講習会
 一般に小型船は、安全に対する各種の情報の入手が困難であり、気象・海象をはじめ安全確保のための諸対策、処置に具体的な知識を得にくいというのが現実であり、さらに堪航性の判断の不十分、安全運航に関する技術や知識の低いこと、また一面、運航形態の特殊性などもあって海難事故も多く発生している。
 各種の講習会では、映画、スライド等を活用する視聴覚面からの指導をはじめ安全運航に重点をおいた各種参考資料、海難事例の教訓等の活用により、海難防止に関する知識を反復啓発しているが、文書等による単なる注意喚起の呼びかけにくらべ、膝をまじえて行う講習会では、身近な海難の実例をもとに事故に対する反省とその対策を再確認させるうえで見るべきものがあり、質疑等に対してもその場において直接安全上のポイントを具体的に説明、指導することができて、船舶乗組員はもとより関係者の海難防止に対する自覚を高め、認識を深めて海難の減少が期待される。

(3) カーフェリーの訪船指導
 カーフェリーは多数の乗客と自動車を同時に輸送するため、一旦事故を起こすと悲惨な災害に結びつくことになる。
 安全運航を阻害する数々の問題点も指摘されている。すなわち、カーフェリーは同一航路の反復という特性からいわゆる“慣れ”による安全運航軽視の状況に陥りやすいこと、また特に瀬戸内海においては船舶が輻輳し航海環境がここ数年悪化の一途を辿っていること、違法航行船舶の存在等がカーフェリーの安全運航を著しく阻害している。
 訪船アドバイザーは、カーフェリーの通常航海時に乗船して、安全運航を阻害する問題点を実地に見聞し、安全運航の基本の見直しを行い、さらに乗組員との意見交換により、広い見地にたって実情を把握し、現状に即した有益な示唆を与え、カーフェリーの海難の未然防止上良好な成果をあげている。
 本事業は、訪船アドバイザーが乗組員に対しては安全運航の調査ならびに確認をし、必要ならば安全運航に関する改善の助言を行うことにより、また、運航管理者に対しては運航管理の改善を助言することにより、カーフェリーの安全運航に寄与するものと考えられる。

(4) 講習会等教材の作成・整備
 海難発生原因の大部分は、船舶乗組員やその他関係者の知識及び認識の不足によるものであるから、本年度においても視聴覚教材としての海難防止に関するスライド映画を制作配付し、関係者に対する周知宣伝活動を行った。
 本スライドは、事故防止のための今日的な問題点をテーマにとり上げて解決し、本事業の一つの柱である海難防止の各種講習会に活用し、海難防止思想、知識の周知啓発面で大きな成果を挙げている。
 今後、本事業を継続実施することにより、さらに関係者の事故防止に対する自覚を高め、認識を深めて海難の減少が期待される。





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