日本財団 図書館


■事業の内容

[1] 新基準の性能要件及び救命設備試験勧告による原型試験基準と現行基準との比較検討並びにこれらに関する調査
 本年度は新基準に基づく試験を実施する品目及び58年度に未検討であった膨脹型救助艇等に重点をおいて比較検討を行った。
a. 性能要件及び原型試験については、一般的にわが国現行基準よりシビアな面がかなりみられるが、各品目毎に材料、構造、性能工作精度、試験判定についての疑義事項、問題点を整理し、検討の上メーカーグループとしての対策案、解釈をまとめることができた。
b. 試験基準において抽象的表現のため、具体的試験方法や判断基準の明確でないものについては、極力メーカーグループとしての案を作成、検討し、今後の参考とするようにした。
c. 経年劣化する救命設備についての耐用期間の制定、表示を要求されているが、材料、構造、保管条件、就航航路により一概に定め難いものが多い。
 ただし、救難飲料水及び応急医療具については、物件の性格等から早急に調査に着手する必要があることを認識した。
d. 一部の試験については、わが国の法制上実施に問題の多い方法のものがあるので、その代替試験を考慮する必要があることを認識した。
e. 新しく規定された救命設備については、その設計概念を明確にし、開発供給体制を整備する必要があることを認識した。
[2] 救命設備の現用品に関する新基準に基づく試験の実施と評価
a. 供試品の収集
(現用品)
救命索発射器    型式承認品  3型式
落下さん付信号   型式承認品  2型式
発煙浮信号       〃    1型式
救命胴衣(素材)17種類
  〃 (製品)          3型式
救命胴衣用灯        改良品2型式
保温具(サーマル・プロテクテイヴ・エイド)  試作品3型式
b. 供試品の試験
 IMOの救命設備試験勧告に基づく原型試験を各供試品毎に次のとおり実施した。
(a) 救命索発射器
(ロケット(発射体)) 浸漬試験、塩水噴霧試験、落下試験、機能試験、引張試験
(ロケット発射装置及び救命索)
温度繰返し試験、保存試験、高温作動試験
(高温推力試験)、低温作動試験(低温推力試験)
(b) 落下さん付信号    温度繰返し試験、浸漬試験、塩水噴霧試験、落下試験、発射試験、光度試験、反動性試験、高温作動試験(高温推力試験)、低温作動試験(低温推力試験)、保存試験
(c) 発煙浮信号      保存試験、浸漬試験、落下試験、波中作動試験
(d) 救命胴衣素材     燃焼試験
(e) 救命胴衣       耐炎性試験
(f) 救命胴衣用灯     温度繰返し試験、灯火試験、投下試験
(g) 保温具        温度繰返し試験、脱捨て試験、耐油試験、水密試験、熱伝導率試験、着用試験
c. 試験結果の評価
(a) 救命索発射器     9試験中、引張試験において救命索の強度が不足するものがあった。
(b) 落下さん付信号    10試験中、光度試験において燃焼時間が不足するものがあった。
(c) 発煙浮信号      4試験に合格した。
(d) 救命胴衣用素材    試験結果より、耐熱焼性を判定した。
(e) 救命胴衣製品     耐炎試験に合格した。
(f) 救命胴衣用灯     3試験中、投下試験において乾玄が不足したもの及び灯光試験において光度が不足したものがあった。
(g) 保温具        6試験中、着用試験において体型大なる被験者の着用不能または破損を生じたものがあった。
また、耐油試験において接合面がはく離したものがあった。
■事業の成果

1974年SOLAS条約第<3>章(救命設備)の改正案は、昭和58年6月IMOにおいて採択され、その発効は昭和61年と内定しているので、これに対応して国内の般用品の品質、性能の見直しを急ぐ必要がある。このため本事業では個人用救命具、火工品等について新旧基準の比較検討及びこれに関する調査を行って品目別の問題点についての対策案を摘出した。また。救命索発射器等6品目については、新基準に基づく試験を行い、その結果、概ね新基準の要件に適合することが確認された。
 58年度及び59年度の本調査研究の結果、SOLAS条約新基準に基づく法定船用品の生産に必要な資料を整備したことは国内における救命関係法定船用品の供給体制の確立に寄与するところ大なるものがある。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION