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■事業の内容

[1] 基礎調査
 放射性物質の海上輸送に関する基礎調査として下記調査を行った。
○ 使用済核燃料の海上輸送に関する過去の研究について各種文献の調査及び今後に残された問題点の摘出を行った。
○ 輸送の実態調査及び事故時対策実態調査として、輸送物、輸送量、運搬船、航路、緊急時の対策、緊急時の対応器材等について各種文献、データ等により調査した。
○ 海上輸送に関する関係法令の調査として、通常輸送に関する規制及び危険時の措置に関する規制について調査した。
[2] 前提条件の設定及び評価
 事故処理技術の検討を行うに当って対象となる事故、船舶、想定事故等について次のように設定した。
対象船舶;総トン数4,700トン
キャスク搭載数100トン型キャスク20基
事故想定;航行可能
航行不能(漂流、転覆、沈没)
[3] 事故処理船等の技術要件等の設定等
 放射性物質の輸送中の事故処理技術に関し上記前提条件に基づき、下記項目について検討を行い、サルベージ技術、クレーンの遠隔操作技術、除染技術等の技術的必要条件についてとりまとめた。
○ キャスク回収方法
 必要機材、工具、防護服、被ばく線量等のキャスク回収作業方法、除染方法、除染機材等船体除染方法
○ 船体正立方法
 転覆船を正立させる方法及びそれに必要な機材、人員、作業時間等
○ 沈船探査技術の検討
 ピンガーの利用による探査方法、ピンガーの到達範囲への接近方法、ピンガーの到達範囲内での沈船の発見方法、捜索開始から発見までに要する時間、ピンガー以外に新しい装置による方法等
○ 沈船引揚技術
 水深200mからの引揚げ技術の検討(現在の設備、機材での作業マニュアル、人員、作業時間)
 200以深からの引揚げ技術については、必要な設備、機材、作業方法の検討

■事業の成果

近年の原子力発電の増大に伴い、放射性物質等の輸送対策は核燃料サイクルの確立の観点から重要な問題になっており、その安全性については、技術、規制、体制等種々検討が行われ、現段階においては十分安全であると考えられる。しかしながら、このような安全対策の充実にもかかわらず、万一事故が起った場合にも対処できるよう、技術、体制等における整理をしておくとともに放射性物質の海上輸送に関する安全性のより一層の向上を図り、社会的理解を深める必要がある。このため本事業では、使用済核燃料の海上輸送に関する各種文献調査、輸送の実態調査、法規制等の基礎調査を行い、基礎資料の整備・充実を図るとともに、今後の問題点の摘出を行ったこと、さらに、輸送中の事故発生を想定し、その事故処理技術について、種々の観点から検討を加え基礎資料を得たことは、わが国における放射性物質等の海上輸送における安全規制の充実、事故処理技術の向上に寄与するところ大なるものがある。





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