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■事業の内容

危険物質の危険性評価のための実験及び解析を次の通り行った。
[1] 生物実験
a. 生物学的方法による細胞レベルの毒性・腐しょく性に関する詳細試験を実施し、解析を行った。
  その結果次の二つの試験方法が確立された。
(a) Ames-テストの試験法による細菌を用いた変異原性の判定
(b) 小核試験による発がん性の判定
b. 生物学的方法による個体レベルの急性毒性・腐しょく性に関する詳細試験を実施し、解析を行った。
(a) 急性毒性に関する詳細試験
(b) 皮膚の腐しょく性に関する詳細試験
(c) 吸入(経気道)による急性毒性に関する詳細試験
[2] 化学実験
a. 物理・化学的方法による固体・液体の自然発火性、酸化性、水との反応性に関する詳細試験を実施し、解析した。
(a) ルツボ法による酸化性
(b) 燃速試験法による自然発火性
(c) 耐圧反応容器による水との反応性
b. 物理・化学的方法による固体・液体の爆発燃焼危険性に関する詳細試験を実施し、解析した。
(a) 圧力、容器試験
(b) 弾動臼砲試験
等により、爆発物・可燃性固体及び有機過酸化物の分類のための詳細試験法が確立された。
c. 物理・化学的方法による気体の爆発燃焼性に関する詳細試験を実施し、解析した。
 その結果危険性評価上の指標となる可燃限界、燃焼速度、火炎温度の三つの測定方法が確立された。
d. 基本物性詳細試験を実施し、解析した。
 その結果、危険性を有する物質の基本物性を測定する次の詳細試験方法が確立された。
(a) 気体・液体の状態判断試験として蒸気圧・沸点の測定方法
(b) 固体・液体の状態判断試験として粘度の測定方法
(c) 引火点測定方法
■事業の成果

海上運送される危険物の種類は年々増加しており、これらの中にはその危険性が明らかにされていない未分類物質も多く安全な運送方法の確保も困難となってきている。
 このため、本事業ではこれら危険物質の危険性評価のための実験及び解析を行い、その危険性を体系的に把握し得る評価システムの確立を図るため、昭和57年度に危険性評価のための第一段階である基本物性試験として、未知物質について、気体・液体・固体の状態判断を行うための試験方法を確立し、更に当該貨物の危険性状を判断するためのスクリーニング試験として爆発燃焼性、酸化性、自然発火性、水との反応性、毒性、腐しょく性、引火性等についての各種試験を実施し、その試験方法を策定し、本年度は上記の基本物性試験、スクリーニング試験を基にして各種詳細試験を実施し、すでに危険物として分類されている物質及び未分類物質の危険性評価に関する体系的評価システムを確立したことは、危険物を運送する船舶の海上災害の防止に寄与するところ大なるものがある。





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