■事業の内容
(1) 流況予測の研究 a. 吹送流による流況予測に関する研究 流況と風の関係について、時間、季節及び空間的な分布変化を求める方式及び風向分布、風速分布のパターン化により風と流れの対応について研究した。又、潮流要素を除いた恒流成分は、観測期間内の平均風に相関することが判明したので、風係数分布の合理的推定法について研究した。 b. 流況予測方式の研究 潮流と恒流(潮汐残差流、吹送流、密度流)の合算によるアルゴリズムについて研究した。 (2) 漂流予測の研究 a. 風圧流による影響についての研究 海面上に薄く広まる被膜状物質と空中部分が直接風圧を受け海中部分が流圧を受ける2種類について、海空間の断面積比と風との対応及び風圧係数について研究した。 b. 漂流予測方式の研究 流況予測方式との有機的結合方式について研究した。 (3) モデル海域における資料解析 モデル海域を東京湾とし、15日、30日以上の連続観測資料をT.I法で解析して潮流定数を求め、主流向線分布図、流速振幅分布図、遅角分布図、楕円偏平率分布図、潮流楕円旋転方向図を作成した。又、密度流の要因として水温、塩分による密度差と河川流入量によって恒流との相関について研究した。 (4) 流況・漂流プログラムの試作 研究結果に基づき流況・漂流予測プログラムを試作した。 (5) 提供システムの研究 流況・漂流予測情報を即時に利用者に提供する形式、表現について研究した。
■事業の成果
我が国の沿岸海域は、海上輸送、水産漁業埋立造成及び海上リクリエーションの場として極めて活発に利用されるようになったため、海難も非常に多く発生し、そのため人命、財産が失われるとともに、輸送、荷揚げ、積み込み等における油流失事故による被害が跡を絶たない。 これら海難の発生や油流失における人命救助と財産、環境保全等の処置を講ずるにあたって、先ず必要となるのは現場の流況と漂流の予測情報であり、また、これらの情報は海難防止に欠くべからざるものである。 しかし、現状における流況予測は、沿岸域のうち内湾域においては周期性のある潮流についての予測は可能であっても、恒流についての予測は不可能であった。従って、現実の流況予測とは言えず、永年の課題となっていたものである。 本研究は、東京湾をモデル海域として、永年蓄積された流況資料を解析して流況・漂流予測プログラムを開発試作したものであり、この結果、東京湾の流況が明らかになるとともに、従来知ることのできなかった恒流についても一部解明することができた。未だ問題点が数多く残されているが、従来の流況予測よりも確度は向上するものと期待される。
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