■事業の内容
[1] 新製造法(圧延直後水冷型)高張力鋼の基本特性把握 制御圧直後に水冷する新制御圧延法により製造された、50キロ級高張力鋼板の諸強度特性、溶接性および加工法などを把握するため下記試験を実施した。 a. 母材の強度特性、靱性の諸特性の把握・検討 母材試験(A級鋼25m/m、E級鋼35m/m) 化学成分チェック分析――――――――5ケース 引張試験―――――――――――――――105本 V-ノッチ シャルピー試験―――――――500本 COD曲げ試験――――――――――――― 150本 中央切欠(板厚貫通)大形引張試験―――― 20枚 ESSO/二重引張試験―――――――――――10枚 大形混成/二重引張試験―――――――――10枚 落重試験――――――――――――――― 50本 歪時効V-ノッチ シャルピー衝撃試験――100本 以上、試験結果の解析・とりまとめ b. 母材の疲労強度特性の把握・検討 (a) 疲労試験(E級鋼35m/m) 標準試験片疲労試験―――――――――50本 広幅試験片疲労試験―――――――――10枚 以上、母材S-N線図、母材疲労亀裂伝播特性の解析・とりまとめ c. 溶接性ならびに大入熱溶接特性の把握・検討 検討対象鋼板について、最高硬さ試験、拘束割れ試験、隅肉割れ試験などにより溶接性を把握し予熱不要や非水素系溶接棒使用の可能性を検討するため下記試験を実施した。 (a) 溶接性についての把握・検討 イ. 溶接継手試験(A級鋼25m/m、E級鋼35m/m) 組織調査、硬さ分布、Depo分析――― 3組 継手引張試験―――――――――――35枚 Depo引張試験――――――――――― 8本 熱影響部引張試験―――――――――35本 曲げ試験(側曲げ試験)――――――― 5本 V-ノッチ シャルピー衝撃試験―― 300本 COD試験――――――――――――― 15本 中央切欠(板厚貫通)大形引張試験――10枚 疲労試験(標準幅、広幅)――――――35枚 ロ. 溶接割れ試験 斜めY型溶接割れ試験――――――― 65枚 隅肉拘束割れ試験―――――――――18枚 フランクフィールド試験―――――― 6枚 (b) 大入熱溶接特性の把握・検討 溶接継手試験(A級鋼25m/m、E級鋼35m/m) 組織調査、硬さ分布測定、Depo分布――2組 継手引張試験――――――――――――7本 Depo引張試験――――――――――――7本 V-ノッチ シャルピー衝撃試験―――300本 COD曲げ試験――――――――――――15本 中央切欠(板厚貫通)大形引張試験―― 10枚 以上、試験結果の解析とりまとめ d. 熱歪加工性の把握・検討 検討対象鋼板について熱間加工性および線状加熱による歪取り作業の影響などを把握し、造船現場での適正工作条件を明らかにするため下記試験を実施した。 (a) 線状加熱加工特性の把握・検討(A級鋼12m/m、25m/m) V-ノッチ シャルピー衝撃試験――40本 硬さ分布――――――――――――10種 COD試験―――――――――――― 12本 (b) 熱歪取り加工特性の把握・検討(A級鋼12m/m、25m/m) Vノッチ シャルピー衝撃試験―― 40本 引張試験―――――――――――― 6本 硬さ分布――――――――――――10種 (c) 冷間加工特性の把握・検討(A級鋼12m/m、25m/m) 標準試験広幅曲げ試験―――――― 2枚 歪時効シャルピー衝撃試験――――60本 [2] 総合評価 水冷型制御圧延法により製造された、50キロ級高張力鋼板を船殻材として使用するに当っての総合評価を行った。 すなわち、母材の諸強度特性を把握し、溶接工作や熱歪加工に関する実用可能な条件を明らかにし、適正な使用を計ることにより船殻設計・工作を合理化するため、船殻材としての検討・評価及び有効利用についての検討を行った。
■事業の成果
近年、船舶の軽量化に伴い船体用鋼材に高張力鋼材を大幅に採用した船舶の建造が多数計画されている。とりわけ降伏点が36Kg/mm2級の50キロ級の高張力鋼を採用するケースが増加しており、今後この傾向はますます増加すると思われる。 本事業は、水冷型の新制御圧延型(新CR型)50キロ級高張力鋼板を対象に、母材及び溶接継手の破壊靱性を中心とした強度特性の把握・検討及び耐溶接割れ特性の把握・検討並びに熱歪加工特性の把握・検討のため各種の試験を実施し、試験結果の解析・とりまとめを行ったことにより、新鋼材の材質に適した新しい施工法、新鋼材と新施工法を用いた船体構造の破壊に対する安全性の確立並びに新鋼材と新施工法の規格体系の整備に対する問題点の解決に有益な基礎資料を得ることができたことは、今後の造船、海運関連業界への多大の成果が期待されるものである。
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