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■事業の内容

[1] 氷象データ調査
a. 資料購入
(a) 購入資料名
 想定航路における氷象・気象文献調査
 “Sea Ice Data and Meteorology for Arctic Shipping Route”
(b) 購入先
 Arctec Incorporated
(c) 内容の概要
 ボーフォート海からバフィン湾を通り、カナダ東岸のノバスコシアまでの想定航路上における氷象(密接度、氷厚、氷丘脈の分布と大きさ、氷山の出現頻度、氷の移動速度等)、氷の機械的特性(圧縮強度、曲げ強度等)および気象(気温、風向風速、降水量、湿度、大気圧、視界、日照時間)に関するデータを、主として公表されたデータをもとに調査したものである。
b. 文献購入
(a) 購入文献名
 “Marine Structures and Ships in Ice”
(b) 購入先
 Det Norske Veritas
(c) 内容の概要
 氷中抵抗、氷荷重、氷中テスト方法、氷の機械的性質、氷海係留、水中抵抗の削減法、北極海氷況、氷海に適した船型、舵やプロペラに働く氷荷重、氷による船体振動、海洋構造物の氷による衝撃振動等についてAker Group,NV等が協力して調査した結果である。
[2] 概略試設計のための調査
a. 氷海船舶概略試設計用基礎資料の調査
(a) 運航パターン
 航海距離、航路、氷厚、吃水、氷の曲げ強度、氷の圧縮強度、気象・海象条件、速力等試設計のための基本計画を行った。
(b) 船体強度
 文献調査、構造設計に関する動向調査を行うと共に設計方針を決定し、船首部、中央部、船尾部の構造様式を決定した。
(c) 船体艤装
 主要機器及び配置に関する文献を調査すると共にタンク凍結防止対策、氷海航行関連装置、機器駆動方式、カーゴオイルポンプ室配置等について検討を行った。
(d) 機関
 氷海用船舶機関部に関連のある文献を調査すると共に次の設計検討を行った。
・ 最適推進システムの選定
・ 補機システム及び氷海特有事項の初期検討
・ 電気推進方式に特有な事項の初期検討
・ 概略機関室配置の検討と一般配置上の機関室スペースの妥当性の確認
b. 氷海用海洋構造物概念設計のための基礎資料調査
(a) 係留システム
 想定就役海域をボーフォート海に設定し、人口島に作用する氷荷重、海洋構造物の係留、保持、非常時離脱システム等を文献をもとに調査した。
 対象とした構造物は浮遊式リグ、モノコーン型リグ、ケーソン型リグの3種である。
[3] 氷海用船舶の模型実験
a. 対象船
 3軸タンカー船首形状シリーズ4船型(スプーンバウ、ステム傾斜角を極端に小さくしたバウ、船首Cbを変化させた2種のバウ)
b. 試験内容
 氷中抵抗、自航試験
c. 試験条件
(a) 状態
 満載のみの1状態
(b) 実船対応速度
 3、5、7、10ノット
 模型船速度は6.8、12.5、21、27.6m/sec
(c) 実船対応氷厚
 0.5、1、2m
 実験時の氷厚は7、14、21、28mm
(d) 実船対応氷質
 曲げ強度500Kpa程度2点
(e) 摩擦係数
 0.07
d. 解析項目
 砕氷片の挙動、砕氷抵抗、推進性能(主として安定性)
[4] 氷海用構造物の模型実験
a. 供試模型
 円柱群模型1基
 (円柱の数:9個、前後方向円柱間隔:100mm、左右方向円柱間隔:200mm、円柱直径:50mm)
b. 試験内容
 氷荷重計測、砕氷片の挙動観測
c. 試験条件
(a) 氷厚
 2cm〜10cm
(b) 曳航速度
 0.05〜0.3m/sec
■事業の成果

従来あまり手がけられていなかった極海等寒冷域での石油開発は、石油事情の緊迫と共に脚光をあびるようになった。この寒冷域における石油開発には、過酷な自然条件下での建設が要求され、産品の輸送にあたっても経験がほとんどないので、当該域の自然環境を知り、設計・施工・輸送等の創意工夫、技術の開発が不可欠である。
 本事業では、ボーフォート海〜バフィン湾〜カナダ東岸の輸送ルート上の気象・氷象等自然環境の調査、日本〜ボーフィート海に就航する20万トン氷海タンカーに関する船体構造、船体艤装、機関等試設計の事前調査、氷海タンカー模型による水中性能実験、浮遊式、モーコーン型及びケーソン型海洋構造物の係留方式調査、円柱群模型に作用する氷荷重計測を実施した。
 これらの調査・研究により得られた成果は、氷海用船舶、海洋構造物の計画、設計、建造に役立つものであり、技術の向上に寄与するところ大なるものがある。





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