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■事業の内容

A 行政サービスの外部委託における行政責任の研究
-そのチェック・コントロール機能について-
[1] 外部委託のチェック・コントロール機能の体系化
 代表的底委託事業として、ごみ収集事業、保育事業、学校給食事業を取り上げて、各々の事業を外部委託した場合に、行政がいかなるチェック・コントロールを実施しているかについて、実態に基づいて分析を行ない、その体系化を図った。
[2] 調査データに基づく分析
 上記の各事業について、現在・外部委託を実施している全国の都市に対してアンケート調査を行ない、そのチェック・コントロール機能、委託の効率性、委託化の過程、委託化の戦略・方法等に関する実態データを把握し、委託化に伴うさまざまな課題について分析を行った。
[3] チェック・コントロール機能の評価システムの作成
 各々の事業の担当者に対して、チェック・コントロール機能のあり方についてアンケート調査を実施し、そのデータに基づいて、これら事業に関して一般的にチェック・コントロール機能の評価が可能になるシステムの作成を行った。
B 地方行政における業務効率化の効果測定研究
[1] 業務効率化の効果測定手法の検討
 地方自治体における各種業務の効率性を定量的に比較分析するために、全国から50前後の自治体を対象として生産性と費用効率性の測定を行った。対象業務には、住民税、固定資産性、住民窓口、会計、国民健康保険、国民年金の6業務、および、保育、ごみ収集、学校給食の3現業を加えた合計9業務を取り上げた。
[2] 標準モデルと影響要因モデルの推定
 対象自治体の調査データに基づき、各業務の標準生産性、標準定数、標準費用効率性のモデル式を推定するとともに、効率化を促すための業務経験、機械化、処理方式、外部委託などの各種要因の影響力を推定した。
[3] モデルによる業務効率性診断のシステム化
 上記モデルに基づいて、各自治体のそれぞれの業務の効率化の現状を診断し、効率化をさらに推し進めるうえで各種要因がどの程度の効果を有するかについて推定した。
C 自治体における研修技法の開発研究
[1] 地方自治体の職員研修機関に対する調査を行い、これまでに活用した研修技法、今後活用を希望する研修技法などについて実情を調べ、必要とされる研修技法の把握を行った。
[2] 主要な民間企業の研修担当、民間研修機関に対するヒヤリング調査を行い、地方自治体の研修に活用可能な技法および今後新しい技法を開発する際にとり入れるべき手法などを調べた。
[3] 今後地方自治体の研修の中でも特に重点を置くべきとされている管理者研修をとり上げ、その充実強化のための技法として、管理者の研修ニーズを把握するためのプログラムを開発した。このため、6都県の課長職に対するアンケート調査を行い、管理者としての行動と、管理者の置かれている職場環境との関係について分析を行い、各対象者の管理行動の適切さを診断するとともに、改善の必要点を個々に把握する手法を開発した。
[4] 管理者研修の技法として有力視されているシミュレーション法をとり上げることとし、その一種であるインバスケット法による研修の試用実験を実施して効果を検討した。
D 地方公務員に対する研修用の事例開発
 事例開発を進めるにあたり、今日、地方公共団体が重要な行政分野において具体的に経験しあるいは、現に対応している生きた行政事例を研修の素材として、また、地方行政の資料として提供するということを念頭に置いた。
 そのため、これまでに開発した事例内容等を考慮し、新しい地方行政の動向といった観点も加味しながら、次の4事例を開発した。
(1) 情報公開制度の導入と連用
(2) 地方公共団体における施策の総合調整のあり方
(3) 文化行政と地域の特性を生かしたまちづくり
(4) 地域における先端技術産業の育成
 これらの事例作成にあたっては、各種文献の調査及び、地方公共団体職員等を対象とした実地調査を行い、正確な事実の中から教材として、また、資料として必要な部分を取捨選択した。
 なお、演習を行う際に必要とされる指導者用の「指導の手引き」もあわせて作成した。
E 地方自治に関する資料の収集、整理、調査及び刊行
[1] 国内資料の収集、整理及び目録の作成
 収集資料の内訳は次の通りである。
ア) 図書館等の所蔵目録   24部
イ) レファレンス・フック  152部
ウ) 図書・雑誌類      357部
エ) 団体、個人の有料寄贈図書-自治省(内務省)先輩より以下5件の寄贈があった。
荻田保氏寄贈資料   355部
林敬三氏寄贈資料   271部
三好重夫氏寄贈資料  310部
柴田護氏寄贈資料   ダンボール10箱
首藤堯氏寄贈資料   228部
オ) 洋書類          33部
カ) 「新資料目録補遺版<2>」の作成  700部
[2] 外国の地方自治制度等の日本へ紹介
{1}) 米国誌Public Administration Reviewによる政府部門の生産性シンポジウム特集号より3点及び事業別予算を翻訳し「行政の生産性指標の研究と業務別予算」として500部切刷した。
{2}) 外国の地方自治制度及びその運営についての資料収集と実態調査を行った。
ア) アジア(インド、タイ、シンガポール、フィリピン、ホンコン) 
12日間
出張者  2名
用務   EROPA参加諸国等における地方制度の調査及び資料収集
イ) 欧州(連合王国、フランス、西ドイツ、スイス、オランダ)    
19日間
出張者  1名
用務   OECD会議出席及び諸外国における地方制度等の調査並びに資料収集
ウ) 欧州(スエーデン、フィンランド、ノルウェー、デンマーク)   
16日間
出張者  1名
用務   IULA会議出席及び各国の地方行政等の調査並びに資料収集
エ) 欧州(フランス、西ドイツ、ベルギー、イタリア、連合王国)   
19日間
出張者  1名
用務   OECD会議出席及び各国における地方制度等の調査並びに資料収集
■事業の成果

第2次臨時行政調査会の答申にみられるように、国、地方を通じる行政の体質改善とその経営能力の向上は、現在における最も緊急な課題となっている。本事業は、第一に、地方自治体の経営効率の向上にかかる諸問題(定数合理化、外部委託)について有効を諸方策を提示し、第二に、地方行政を担う職員の資質向上のため、研修機関に必要であり、かつ有効とされる研修技法を調査開発し、また、研修教材を作成した。第三にわが国の地方自治に関する文書、図書、資料および外国の資料を継続的に収集(翻訳)、保存、整理し、これを地方自治に関する研究者等の閲覧に供し、地方自治の発展に寄与するものと思われる。





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