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■事業の内容

(1) 事故船の船体基礎調査
 事故船第28あけぼの丸の主要目、建造時の重量・重心・復原性関係データ、一般配置、検査・改修履歴、救命設備を調査。
(2) 姉妹船の実地調査・試験
[1] 状況調査
 同型姉妹船第27あけぼの丸の実地調査により操業・操船の実態、船体構造配置、救命設備等を調査。
[2] 重心査定試験
 住友重機浦賀工場岸壁において第27あけぼの丸の重心査定試験を実施、結果解析。
[3] 旋回試験
 館山沖において第27あけぼの丸の旋回試験を実施、結果解析。
(3) 事故時の状況調査
[1] 気象、海象の調査
 事故時当該海域の気象、海象を僚船記録と対照しつつ気象庁資料により調査推定。
[2] 事故時の状態、操業状況の調査
 第28あけぼの丸生存者の説明、僚船の記録、船主推定に基づき、事故時第28あけぼの丸の操業・操船状況、転覆に至る経過、乗組員の脱出・救助の状況、事故時の積載状況等の諸状態について調査。
(4) 事故船の復原性解析
[1] 復原性計算
 第28あけぼの丸の事故時の船の状態を推算し、中造工復原性計算プログラムを一部修正して次の計算を実施。
イ、 満載出航等6状態について復原性基準準用計算。
ロ、 事故直前状態を中心に漁獲量、浸水量等を変化した各種状態に対する復原力曲線シリーズ計算。
[2] 模型試験
 第28あけぼの丸の2.5m模型船を作製、船研動揺水槽において次の試験を実施。
イ、 GM、工場浸水量、ヒール角、波岨度を変えた規則横波中の動揺応答試験。
ロ、 工場浸水時、浸水経週中の復原力測定試験。
ハ、 傾斜モーメントに対する操舵、風の影響測定試験。
ニ、 工場、船倉への浸水による静水中、波浪中の転覆試験。
(5) 転覆要因の調査
 初期傾斜、揚網の片寄り、操舵回頭、船側開口からの海水打込み、漁倉への海水流入等の要因が転覆までの経過に果す役割について、復原性計算、模型試験の結果から検討、推論。この種船舶の復原性について一般的考察。
(6) 救命設備の検討
 北洋漁船の救命設備、救命システムについて検討、考察。

■事業の成果

昨年1月ベーリング海で操業中の底びき網漁船が転覆沈没し多数の犠牲者が出るという海難事故が発生した。
 本事業では、同事故について、専門技術的見地から調査検討を行い、もってこの種漁船の今後の安全対策の確立を図るため、事故時における気象、海象本船の状態、操業状況、本船の復原性を総合的に調査解析し、転覆に至る経過を科学的に推論するとともに北洋海域で操業する漁船の救命システムについて検討を行ったことは、この種漁船の復原性及び救命設備に関し、今後の安全対策を講ずるための貴重な知見が得られたものである。





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