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■事業の内容

(1) 超粗悪燃料油対策の調査
[1] 外航大型船における燃料油性状と燃料油に起因すると思われる障害に関する調査・解析結果の総合とりまとめ
 過去6年間に日本船主協会加盟201社の外航大型船において発生した燃料油に起因すると推定される障害例796件及び使用燃料油の性状の変化、障害と燃料油性状との因果関係の調査・解析結果の見直しを行い、燃料油のシリンカ、アルミニウム、バナジューム、ナトリウムの各含有量とディーゼル主機関及び各補機器の故障との相関を解析するとともに、燃料油の一般性状と補油地域及び障害との相関を解明。
[2] 超粗悪燃料油に対する船内燃料関連機器及びディーゼル機関の要求仕様の作成
 燃料油タンク、燃料油スラッジ処理システム、燃料油移送ポンプ、燃料油加熱器、油清浄機、燃料油こし器、デカンタ、ホモジナイザ、燃料油配管及びディーゼル機関について超粗悪燃料油による障害・問題点と原因・対策を調査し、これらの設計条件と限界仕様を検討の上、要求仕様を作成。
(2) 超粗悪燃料油使用のための実験研究
[1] 配管及びタンク付属品の超粗悪燃料油に対する適用実験
○ 配管スチームトレース施行の有効性実験
 管内融解実験装置を用いて配管スチームトレース施行の有効性について超粗悪燃料1種を供試して実験を行い、管内燃料油の昇温時間、トレース管と主管との間隙と伝熱性能との関係、トレース管本数の影響について検討。
○ 圧力計、液面計等のタンク・配管付属品のスチームトレース施行の適用実験
 模型タンク配管実験装置に圧力計及び液面計を取付け、超粗悪燃料油1種及びタービン油を供試してこれら計器の作動状況を計測。圧力計、液面計に対するスチームトレース施行の必要性の有無を確認。
○ 配管内のアスファルテン等析出の実験
 模型配管実験装置に局部加熱を行える熱交換器(局部加熱実験装置)を取付け、超粗悪燃料油2種を供試して管内の伝熱抵抗の増加状況の計測、付着スラッジの化学分析を行い、局部的な加熱による配管内のアスファルテン等のスラッジ析出の状況を確認。
[2] 燃料油の清浄に関する実験室実験
○ 重液成分の分離実験
 遠心分離機を用いて4種の供試燃料油の遠心分離を行い、超粗悪燃料油のうち比重の大きい部分(重液)が分離するか否かを実験。
○ 燃料油と水とのエマルジョンの安定性実験
 エマルジョン製造装置により水と供試燃料油(6種)のエマルジョンを作り、これを遠心分離機により遠心分離してどの程度水が分離できるかを計測することにより各供試油のエマルジョン安定性を検討。
○ 清浄機排出スラッジの流動性実験
 遠心清浄機から排出されたスラッジ(4種)についてスラッジ流動性試験装置により空気中、水流中、油流中において流下試験を行い、流動性を検討。
(3) 実船試験計画の検討
[1] 外航大型船による超粗悪燃料油使用実船試験計画の検討
 外航大型船による超粗悪燃料油使用実船試験計画について検討し、研究目標、研究組織、実験船選定条件、実験船の安全のために装備する特殊機器、研究期間研究内容及び評価方法を策定。

■事業の成果

舶用燃科油は世界の石油事情からみて、原油の重質化、石油製品需要の軽質化、石油精製法の変化等に伴い急速に高粘度化、粗悪化するものと予想されている。特に燃料補給を海外でも行うことの多い外航大型船においては接触流動分解残査油及び熱分解残査油を基材とした劣悪な性状の燃料油の使用を余儀なくさせられる場合があり、ディーゼル機関、関連機器、配管、タンク等を含む燃料システムに重大な影響を及ぼすと考えられる。そこで効果的な超粗悪燃料油使用対策を確立するため本事業により、超粗悪燃料油による障害・問題点と燃料油性状との因果関係が把握され、また実験研究により配管・燃料タンク及びその付属品、遠心清浄、スラッジ処理に関する設計条件を得ることができた。これらにもとづき最も適切と考えられる船内燃料油関連システムの構成を決定し、ディーゼル機関及び燃料関連機器性能に対する要求仕様を作成した。これらの成果は、技術的・経済的にもっとも効果的な超粗悪燃料油使用機関プラントを計画する際極めて有用なものであると考えられる。





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