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■事業の内容

(1) 実船伴流計測のための予備実験
a. 実験用補助水路の付属装置の製作
 水路としては長さ10m、幅1m、深さ1.1mの水槽を利用し、これに局部的な水流を作る回流装置、水フィルタ、泡を発生させる気泡発生装置を付属装置として製作し取付けた。
b. コヒーレンス度計測装置の購入
 顕微鏡の対物レンズとすりガラス、スクリーン、光ファイバーから構成されるコヒーレンス度計測装置を購入した。これにより付属しているパワーメータを利用して広範囲のレーザーパワーを計測できる。
c. レーザー・ドップラ流速計の性能実験
 小水槽及び10m水槽を利用して実験を行った。その結果、レーザーパワーとしては400mw程度が最適値であること、水の透明度にもよるが水道水では約2m離れた点の流速が計測可能であることが明らかとなった。
(2) プロペラフォース推定法の研究
a. 実船対応キャビテーション試験
 青雲丸の通常型プロペラ及びハイスキュープロペラの模型を用いてキャビティ範囲の観察、キャビティ厚みの計測、変動圧力の計測(14点)及びキャビテーション騒音計測を実施した。
b. 伴流計測
 青雲丸模型船(パラフィン製、長さ6.4m)を用いて抵抗・自航・伴流計測試験を満載状態において実施した。
c. プロペラ単独試験
 青雲丸の通常型プロペラ模型(MP218)、試設計ハイスキュープロペラ模型(MP219)及び換装用ハイスキュープロペラ模型(MP220)について単独性能試験を実施した。
d. サーフェスフォース・キャビティボリューム計算
 cの3種プロペラについて、造船所4社の計算プログラムを使用し、キャビテーションパターン、キャビティボリューム及び変動圧力を計算した。
(3) 船尾形状と伴流の研究
a. 船尾形状と伴流の関係資料調査
 B.Hadler and H.M. Chengによる伴流分布の調和解析法、高橋によるS(x)-W法、K.O.Holden等の統計解析法について調査し、これらの方法によって本研究で対象にした6隻の船型について解析し整理した。
b. 伴流分布の計算
 本研究の対象船型についてポテンシャル流れ(3隻)、渦度分布(2隻)境界層(6隻)の計算を実施した。
(4) 実船キャビテーションの観測実験
a. 実船用ハイスキュープロペラの設計及び製作
 青雲丸で供試するハイスキュープロペラを神戸製鋼で設計し、ナガシマプロペラで鋳込み、粗削りを行い、再び神戸製鋼に持ち込んで仕上げを行った。主要目は次のとおり。
型式   :5翼一体型
直径   :3.6m
レーキ角 :-3°
スキュー角:45°
材質   :ニッケル・アルミ・ブロンズ
重量   :4.75トン
b. 実船キャビテーションの観測実験
 青雲丸により通常型プロペラ、ハイスキュープロペラ各装備時に次の各種実験を実施した。
計測項目:キャビティ厚み、キャビテーションパターン、変動圧力、キャビテーション騒音
計測時期:昭和57年 5月14日〜18日(通常型プロペラ使用時)
昭和57年12月 7日〜10日(ハイスキュープロペラ使用時)
委員会名 第183研究部会  17回
(うち地方開催) ( 2回)

■事業の成果

船尾振動・騒音の軽減についてはこれまでかなり研究されているが、問題解決の難しさと経済性に直結しないなどの理由から十分な解決がなされていない。燃費高騰や船員対策などのため最近の海運界では経済的かつ乗心地のよい安全な船を強く求めており、このような情勢のもとに本研究は3か年計画で開始された。
 最終年度である今年度は実船伴流計測技術に関連する基礎的なレーザー流速計の性能実験、振動・騒音低減効果が期待されるハイスキュープロペラによる模型実験と実船実験、船尾流れを均一にして推進効率を向上させ、振動軽減に結びつく船尾形状の研究などを実施し、レーザー流速計の性能は水の透明度に大きく左右されること、ハイスキュープロペラは通常型プロペラに比べて約60%の振動・騒音低減効果のあることなどの成果が得られた。
 これらの成果は、実船船尾流れの計測技術の向上、ハイスキュープロペラの設計、船尾形状の設計などに役立つものであり、船尾振動・騒音の軽減に必要な設計手法の確立に寄与する。





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