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■事業の内容

(1) 外航大型船における超粗悪燃料油使用に関する調査研究
[1] 超粗悪油対策の調査
a. 最近における外航大型船の燃料油性状と燃料油に起因すると思われる障害に関するアンケート調査及び調査結果の解析
 船主協会加盟201社600隻の外航大型船の燃料油性状と燃料油に起因すると思われる障害についてアンケート調査を実施。26社から、116件の障害例について回答あり。
 アンケート調査結果を解析し、ディーゼル機関、貯蔵タンク、移送ポンプ、清浄機、加熱器、ボイラ、排気缶、ストレーナー、燃料油配管等各機器に発生した障害と使用燃料油の性状、補油港、障害発生時の燃料油系の状況、助燃剤使用の有無等との因果関係を把握。
b. 船内燃料油関連機器及びディーゼル機関において、超粗悪燃料油により発生が予測される障害の調査
 舶用燃料油関連機器(移送ポンプ、清浄機、流量計、ブースタポンプ、加熱器、ストレーナー、スラッジポンプ等)、ディーゼル機関(2サイクル機関及び4サイクル機関)、ディーゼル主機周辺の燃料システム及びスラッジ処理システムにおいて、超粗悪燃料油により発生すると考えられる障害を機器メーカー、主機メーカー、造船会社等の設計、計画資料及び関係文献について調査し予測。
[2] 超粗悪燃料油使用のための実験研究
a. 燃料油の清浄に関する実験室実験
 供試燃料油10種(超粗悪燃料油6種、実船使用燃料油4種)について小型遠心分離機を用いてスラッジによる分離板汚損度(スラッジの流動性)と清浄効果に関しスラッジ分離実験。スラッジの流動率、分離率を計測。
b. タンク内、配管内の流動特性に関する模型実験
(a) 模型タンク実験装置
 55年度製作の模型タンクに本年度購入の冷水製造装置(能力:3冷凍トン)からの冷水・冷風による冷却装置を付加し、実船燃料タンクを模擬できるよう改造。
(b) 配管内流動特性実験装置
 水平円管(長さ3m)部、ベンド部、エルボ、ティー、弁等からなる配管内流動特性実験装置
(c) 供試油
 高粘度重油、FCCタール・ビスブレーカボトム基材油(超粗悪油)タービン油(基準油)の3種。
(d) タンク内流動特性の模型実験
 模型タンク外面を実船対応条件で水及び空気冷却しつつ供試油を張り込み、各部の温度分布を熱電対及び赤外線カメラで計測し、流動状態を観察、録画。
(e) 模型水平円管の加熱時及び非加熱時流動特性実験
 加熱時及び非加熱時の模型水平円管に供試油を通じ、各部の温度、圧力損失、流量を計測。
(f) 配管用弁、エルボの流動特性実験
 舶用仕切弁、舶用玉形弁、エルボ、ティーに供試油を通じ、温度、圧力損失、流量を計測。
■事業の成果

現在の舶用燃料油は原油の重質化、石油製品需要の軽質化、石油精製法の変化等に伴い急速に高粘度化、粗悪化するものと予想され、特に海外での給油が多い外航大型船舶の場合、特に劣悪な性状の燃料を使用することが考えられる。したがって、本事業においてこのような超粗悪油はディーゼル機関、関連機器、配管、タンクシステム等に及ぼす影響について研究したことは、技術的、経済的にもっとも効果的な超粗悪油使用対策を確立でき、運航の安全性に寄与するものである。





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