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■事業の内容

(1) 石炭輸送システムに係る調査研究
[1] 石炭輸送システムのマリクロ的検討
a. わが国の長期的石炭動向調査
 昭和60年、65年、70年における石炭需要動向を9地域(北海道、東北、北陸、関東、中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄)別及び需要部門(電力、セメント、紙、パルプ、その他)別に調査。
b. 産炭国における長期的石炭供給動向調査
 昭和60年、65年、70年における石炭供給動向を、地域・炭種(オーストラリア、アメリカ、カナダ、中国、ソ連、南ア、その他)別にわが国の輸入量と供給国の輸出可能量について調査。
c. 産炭国及びわが国における石炭輸送上の制約条件の現状調査
 主要産炭国(アメリカ、オーストラリア、カナダ、南アフリカ、中国)の陸上輸送システム(鉄道輸送、内陸水運、パイプライン輸送等)の石炭輸送能力及び港湾の石炭積出し能力から来る輸送上の制約条件を調査。
 また、わが国における外航石炭輸送船受入れ港湾施設の能力による制約条件、コールセンター整備上の制約条件、内航2次輸送上の制約条件を調査。
[2] 石炭輸送システムの合理化・適正化に関する検討
a. 石炭輸送に関する技術開発(個別技術)の動向調査
(a) バルグ輸送の安全性、環境対策等の動向調査
 バルグ輸送中の安全性に関し、ガス爆発、炭じん爆発及び自然発火の防止、環境対策として揚荷時及び貯炭場の炭塵発生防止について、現状及び将来動向を調査。
(b) 水スラリー輸送における脱水技術等の動向調査
 石炭水スラリー(石炭重量比50〜60%)の船積時の船内脱水技術及び揚荷技術の現状と将来動向を調査。
(c) 粗粒COM輸送における脱油技術等の調査
 粗粒COMの性状、貯蔵、再流動化、脱油技術の現状と将来動向を調査。
(d) ACCにおける技術開発の動向調査
 わが国で実施中のACC(Advanced Coad Chain)システムにおける微粉高濃度水スラリー化した石炭の脱水・造粒技術の調査及び内外の関連技術の将来動向調査。
(e) 石炭の流体輸送における一点係留ブイ方式の検討
 一点係留ブイ方式による石炭流体化輸送に要求される諸問題(スラリーの流動性、脱水設備、荷役稼働率、緊急避難対策等)を調査検討。
(f) セルフ・アンローダーの技術開発の動向調査
 セルフ・アンローダの各方式(トラフ型ベルトコンベヤ、コルゲイトサイドコンベヤ、バケットコンベヤ、Cループコンベヤ、走行回転式パドルフィーダ、走行式リクレーマ)技術開発の現状と石炭輸送船への適用について調査。
(g) 連続式アンローダーの技術開発の動向調査
 連続式アンローダーとして、グラブ・バケット式及びニューマチック式の技術開発の現状と将来動向を調査。
b. 新石炭輸送システム(産地-需要者)の類型化と組み合せによる技術的、経済的検討調査
 産地-需要者間の新石炭輸送システムの構成要素として、産炭地、内陸輸送、積出港湾、一次海上輸送、中継基地、二次輸送、需要者について荷役方式も含め調査検討し、これを類型化して3ケースを選定。
c. わが国における石炭輸送システムの適正化の検討
 上記bで選定した輸送システムを、わが国の石炭輸送システムに適用し5ケースの具体例を設定して各々のコストを算出。
d. 新石炭輸送システム導入に当っての法制度上の問題の検討
 上記cで設定された輸送システムを稼動させる上で解決すべき問題が内航海運業法、港湾運送業法、倉庫業法、船舶安全法及び港湾法の上であるかどうか調査検討。内航海運業法及び港湾運送業法については、コールセンターの管理運営上の問題を摘出。他の3法については現在特に問題なし。

(2) 石炭焚船建造促進のための調査研究
[1] 船舶運航上の安全性確保の研究
a. 石炭の自然発火防止
 舶用燃料炭の自然発火と環境条件の関係、自然発火の検知方法・防止原理・消火方法について調査。
b. 石炭のガス・炭塵爆発防止
 舶用燃料炭について可燃性ガスの発生とその爆発性、炭塵の発生とその爆発性、ガス・炭塵の着火源及びガス・炭塵爆発防止対策を調査。
c. ストーカー燃焼方式の機関プラントの安全性確保
(a) ボイラの数と補助油焚容量について各船級協会規則と主要造船会社の試設計を調査検討。
(b) ボイラ故障時の補助推進設備について、各船級協会規則と主要造船会社の試設計例を調査検討。
(c) 給炭及び灰処理システムの二重性の範囲について主要造船会社の試設計例を調査検討。
(d) 石炭焚ボイラの特殊性を解析するため、ストーカー部、燃焼ガス系及びボイラ蒸気-水系についての応答特性を計算するシミュレーションプログラムを作成。
(e) 余剰蒸気ダンプシステムについて、各船級協会規則、主要造船会社の試設計例及び減圧減温弁メーカーの設計方針を調査検討。
[2] 船内環境保全の研究
a. 振動・騒音防止
 石炭関連機器メーカ一及び陸上石炭燃焼施設のユーザーから得た機器ごとの振動・騒音データを調査し、居住区及び機関室における振動・騒音を予測推定。
b. 炭塵・石炭灰拡散防止
 主要造船会社、石炭関連機器メーカー及び陸上石炭燃焼施設のユーザーから得た機器・システムごとの炭塵・石炭灰拡散に関するデータを調査し、機関室内への漏洩の可能性を予測推定。
c. 石炭関連システムの保守・整備
 主要造船会社、石炭関連機器メーカー及び陸上石炭燃焼施設のユーザーから得た機器・システムごとの保守・整備の容易性に関するデータを調査検討。
d. 石炭関連システムの監視・計測・操作
 主要造船会社、石炭関連機器メーカ一及び陸上石炭燃焼施設のユーザーから得た機器・システムごとの監視・計測・操作の容易性に関するデータを調査検討。
[3] 公害防止の研究
a. 港湾規則・基準の調査
 海外17港における石炭灰による環境汚染に関する港湾規則・基準、日本における石炭灰関係規則・基準、及び国際法における石炭灰関係規則・基準の現状及び将来動向を調査。
b. 石炭灰の発生量と分布
 舶用石炭焚ボイラからの石炭発生量の予測推定と主要造船会社試設計船におけるフライアッシュ及びクリンカの発生量・発生割合の調査。
c. 石炭灰の性状と環境への影響
 陸上ボイラで使用されている海外炭7種、国内炭5種の石炭灰の分析結果の調査。現行の水質汚濁防止法等による有害物質に対する環境基準の調査。
■事業の成果

(1) 石炭輸送システムに係る調査研究
 近年、石油代替エネルギーの開発転換が進められつつあり、なかでも石炭に寄せられる期待は大きいが、石炭の輸送コストをいかに低減して行くかが大きな課題となっている。石炭の輸送システムの合理化、適正化を図るに当っては、種々の個別技術を研究するとともに石炭の需要形態、エネルギーの変換の問題、社会基盤施設の整備、立地環境問題等の将来動向をふまえたトータル・システムの検討を行う必要があるため、本調査研究を実施したものであるが、2カ年計画の第1年度である本年度調査研究の結果、石炭輸送システムの合理化、適正化に関する有益な資料を作成することができた。この成果は石炭輸送システムに係る問題点解決の上で貴重な指針である。
(2) 石炭焚船建造促進のための調査研究
 石炭を推進機関に用いる石炭焚船は、代替エネルギー利用促進の観点からその建造体制を整備する必要があるが、今後の石炭焚船は高度の自動化採用等による乗組定員の増加防止、運航上の安全性確保、船内環境保全、公害防止等の多くの前提条件を満足させなければならない。本調査研究は3カ年計画をもって技術的経済的にもっとも効果的な安全性、船内環境保全、公害防止への対応策を確立して、その建造促進に役立たせることを目的としているが、その第1年度である本年度調査研究の結果、上記対応策を確立する上で有益な資料を作成することができた。この成果は、石炭焚船の建造促進に役立つ貴重なものである。





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