■事業の内容
(1) 実船伴流の予備実験 [1] 次年度の性能実験に備えたレーザドップラ流速計の光学系の購入 ズームレンズ:口径240mm、ズーミング範囲1.5〜4.0m ビームエクスパンダ:ズームレンズに内蔵 ピンホールセクション:S/N比改善用 干渉フィルタ:S/N比改善用 [2] 精密トラバース装置の製作 駆動方式:パルスモータドライブ 駆動成分:YZ成分 位置設定:最小0.1mm 移動距離と速度:Y方向…±250mm、10mm/S Z方向…±150mm、 3mm/S [3] 予備実験 ズームレンズ系を含む光学系諸装置の動作試験による仕様の確認を行った。また、ピンホールセクション及び干渉フィルタの効果を確認するため通常のLDVに結合してテストを行った。その結果、散乱粒子からの信号の質の向上が見られ、データとなる信号の数が増した。さらに物体に近い点の流速計測が可能になった。 (2) プロペラフォース推定法の研究 [1] ハイスキュープロペラのシリーズ試験 a. プロペラ性能計算 対象プロペラ:昨年度模型実験に使用した5個のプロペラ(通常型1個、ハイスキュー型4個) 使用プログラム:神戸製鋼開発プログラム(非線型定常プロペラ揚力面計算) 計算内容 :5個のプロペラの単独性能 検討内容 :スキュー幅、スキュー分布及びピッチ分布の単独性能へ及ほす影響 b. ハイスキュープロペラの単独試験 試験プロペラ:スキュー角45°の4翼MAU型プロペラ6個 試験条件 :展開面積比0.40、0.55ピッチ比1.10、0.90、0.70 結果の表示 :J-KT、KQ、ηoカーブ c. ハイスキュープロペラのキャビテーション試験 対象プロペラ:bのプロペラの中のピッチ比0.90で展開面積比0.40及び0.55のプロペラ 試験状態 :プロペラ回転数25.5rpsレイノルズ数1,337×106(展開面積比0.40)、1.421×106(同0.55)、均一流中、空気含有量40% 検討内容 :在来型とハイスキュー型のキャビテーション性能比較 d. ハイスキュープロペラ設計チャート作成 b、cの結果から設計に便なるようJ-σN、KT-σN及びKQ-σNによるキャビテーションバケット図を作成すると共に、各プロペラに対して翼面積に対するキャビテーション発生面積の割合を求めJ-σNベースに作図した。 [2] 起振力軽減に関する研究 a. サーフェスフォース・キャビティボリューム計算 計算対象プロペラ:昨年度使用プロペラの中の在来型プロペラ1個(M.P.No.1)及びハイスキュープロペラ2個(M.P.No.2-45°スキュー及びM.P.No.5-60°スキュー) 計算内容 :サーフェスフォース:Vorusの方法(川重の計算プロキャビティボリューム:気泡トレース法(石播の計算プログラム)、非定常空の計算法(日立の計算プログラム) 検討内容 :計算値と実験値の比較 b. ベアリングフォース、サーフェスフォス及び船尾変動圧力の計測 計測対象プロペラ:aの3個 計測状態 :満載…KT=0.137、σN=1.649、大気圧 バラスト状態……KT=0.129、σN=1.443、大気圧 検討内容 :計測値と計算値の比較 c. キャビティボリューム計測 計測対象プロペラ:aの3個 計測法 :レーザー光散乱法 検討内容 :キャビティ厚みの形状とプロペラ半径位置及びスキュー量の変化の様子 [3] ハイスキュープロペラの騒音測定 使用プロペラ:(2)のaの3個 計測器 :ハイドロホン 計測状態 :キャビテーション発生時 試験条件 :満載……KT=0.137、σN=1.649、η=25Hz バラスト状態……KT=0.129、σN=1.443、η=25Hz 検討内容 :伴流分布と騒音の関係、スキュー角と騒音の関係 (3) 船尾形状とウェークの研究 [1] 船尾形状とウェークの開係の資料調査 船型(船尾フレームライン)と伴流分布の整理方法を主眼に調査し、船尾フレームラインの表現にτ(断面係数)を取り入れる方法を採用した。この方法で[2]の船型とその伴流分布を評価し、良好な成果を得た。 [2] 小型模型船による抵抗・伴流計測 供試模型船:船尾形状変更3隻、長さ約2m 試験内容 :低抗試験、伴流計測、流線観測(鉛白、硫化アンモニウム法) 試験状態 :満載、Fn=0.26 検討内容 :船尾形状と流線の関係、理論計算と実測値の比較、鉛尾形状設計法の評価(τによる評価)
■事業の成果
本事業は、船尾振動、騒音の1つの大きな原因となっているプロペラ起振力を軽減するため、研究2年度目として、実船伴流計測技術に関連する基礎的な実験、振動、騒音低減効果が大きいと云われているハイスキュープロペラによるプロペラフォース推定法の精度向上の研究、船尾流れを均一にして推進効率を向上させ、振動軽減に結びつく船尾形状の研究等を実施し、問題点の摘出を行うと共に、振動、騒音の低減効果を確認した。これらの成果は、実船船尾流れの計測技術の向上、ハイスキュープロペラの設計、船尾形状設計に役立つものである。
|
|