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■事業の内容

船尾振動・騒音の軽減を目的としたプロペラ及び船尾形状の研究
(1) 実船伴流の計測
[1] 各種伴流計測装置の調査
 ピトー管式、超音波式、レーザー式等の諸方式の原理、解析処理、性能、トラバーサー、付帯設備、工事、取扱性、実績、問題点等を調査し評価を行なった。その結果レーザー式を選定した。
[2] 海水・船体条件の調査
 実船で伴流計測を実施する際レーザー式を採用した場合の各種条件を調査した。
(2) プロペラフォース推定法の研究
[1] プロペラ起振力推定法の調査
 プロペラ理論について在来の理論、ハイスキュープロペラヘの適用例等の調査、プロペラ理論改良の試みを行ない、キャビテーションの発生範囲およびボリュームの推定法については翼型のキャビテーションと理論、プロペラでのキャビテーションの発生範囲推定法、キャビティボリュームの推定法等の調査を行なった。
 また、ベアリングフォースの推定法について、実船計測および模型計測および模型実験、理論計算法、簡易計算法等を調べ、さらに、サーフェスフォース推定法についても同様の調査を行なった。
[2] 抵抗・自航試験及び伴流計測
A 模型船長さ:約6m(パラフィン製)
B 主要目:CB=0.604、L/B=4.5、B/d=3.4
C プロペラ:直径23cm、可変ピッチ、4翼
D 試験内容:抵抗・自航試験、伴流計測、プロペラ単独試験
試験状態:満載
[3] キャピテーション試験(不均一流中)
A 使用プロペラ:[2]のプロペラ
B 試験方法:キャビテーション水槽内にワイヤメッシュによる不均一流を分布させて計測。
C 試験状態:キャビテーション係数1,926
プロペラ回転数25rps
D 計測内容:キャビテーション発生状況、変動圧力
(3) プロペラ翼形状と船尾形状の関連の研究
[1] 振動軽減法の調査
 船尾形状の改良等によるプロペラヘの流入速度の均一化、キャビテーション発生範囲の減少及び非定常性の緩和、その他の改良策等の軽減方法について調査し、その具体例を示した。
[2] ハイスキュープロペラの単独試験
 ハイスキュープロペラの設計:スキュー角、スキューライン、レーキ及び半径方向のピッチ分布をパラメータとして設計、可変ピッチとした。
製作個数:4種各1個、直径23cm
試験内容:プロペラ単独試験
[3] ハイスキュープロペラ装備模型船の自航試験
A 使用模型船:(2)[2]で製作のもの
B 使用プロペラ:(3)[2]で製作のもの4個
C 試験内容:自航試験
D 試験状態:満載
[4] キャビテーション試験(均一流中)
A 使用プロペラ:ハイスキュープロペラ2個(ピッチ分布を変更したもの)在来型1個いずれも可変ピッチ
B 試験状態:プロペラ回転数26rps一定、流速とキャビテーション係数を変更。
C 計測内容:キャビテーションの発生状況、変動圧力
D 解析内容:バケットカーブ作成
[5] 計測装置の設計と製作
A 設計:ベアリングフォース計測装置
a 基本性能、構成、容量及び出力、精度、ノイズ等を設計。
b サーフェスフォース計測装置力を直接検出する方法を設計の対象とし、計測量、固有振動数、容量等を設計した。
c 回転式5孔管を設計した。
B 製作:ベアリングフォース計測装置を製作し、精度の検定を行なった。
[6] ハイスキュープロペラの設計(設計チャート作成用)
 今年度製作、実験したスキューアングル:45°、スキューライン:Foward&Backward、レーキ:4.0°、ピッチ分布:一定の可変ピッチプロペラを基準にして展開面積比2種(0.40及び0.55)、ピッチ比3種(0.7、0.9及び1.1)による組合せ6個の可変ピッチプロペラを設計した。
[7] 小型模型実験
A 模型船 :長さ約2m、船首部1個(共用)、船尾部2個(通常型及びホグナー型)、CB=0.6、L/B=4.5、B/d=3.4
B 試験内容:船尾圧力変動、抵抗・自抗試験、伴流計測、流線観測
C試験状態:満載
D 解析内容:抵抗及び自抗要素、伴流分布、過度、船尾変動圧力、流線
(第183研究部会  19回
(うち地方開催   (0)
■事業の成果

船の振動・騒音に関する研究はかなり以前からとり上げられてきたが、船尾流場の状況が十分に解明されていないことやプロペラキャビテーションと流れの不均一性との関係、キャビテーションとプロペラ起振力との関係、船尾形状と船尾流れとの関係等が明確でないことなどから未解決のままとなっている。しかも最近の燃料価格の高騰によって船の省エネルギー化の要望は非常に強く、プロペラ効率向上を狙った大直径プロペラの採用が多くなってきており、このために無理な設計をすることからプロペラ起振力に起因するトラブルが再びクローズアップされてきている。
 このような情勢下において、本研究は今年度から3か年計画で開始され、今年度は実船伴流計測のための各種装置の性能調査、プロペラフォース推定に関する各種研究、プロペラ翼形状と船尾形状の関連の研究など各種多様な研究を行ない貴重な資料をまとめることができた。
 これらの成果は実船船尾流れの計測技術の向上、ハイスキュープロペラの設計方針の決定、船尾形状設計等に直接役立つものであり、船尾振動・騒音の軽減に必要な設計手法の確立に寄与するものと思われる。





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