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■事業の内容

[1] 国際規則と船舶等との関連に関する調査研究
A 国際規則と船舶設計等との関連調査
(a) IMCO海上人命安全条約、国際満載喫水線条約、海洋汚染防止条約等に関連するIMCO各小委員会資料、それに対する各国のコメント、各国船級協会の資料等を収集し、次のとおり調査、解析を行なった。
(b) 前項の資料等をもとに検討を行ない、我が国の意見および提案資料を作成した。
 主な検討事項は次のとおり
1) 非損傷時の復原性
2) 損傷時復原性要件の調和
3) 特殊目的船の区画復原性要件
4) SBTタンカーの防護的配置
5) 各国政府ルールによる復原性計算
6) 追波中の船舶の復原性
7) 満載喫水線条約の改正および統一解釈
8) 乾貨物船の復原性
9) 我が国船舶の浸水、転覆事故統計
10) 1974年SOLAS条約第<2>-2章(防火)および第<3>章(救命設備)の改正案
11) 膨脹式救命いかだのサービス
12) ケミカルタンカーの消火剤および消火システム
13) オイルタンカー、ケミカルタンカーおよびガスキャリアの火災安全要件
14) ケミカルタンカーのイナートガスシステム
15) イナートガスシステムのガイドライン
16) 鉱油兼用船の火災安全対策
17) 機関室区域の火災防護に対する将来概念
18) 可燃性液体を使用する設備のある場所および操舵機室の火災探知および消火装置
19) ケミカルタンカーの甲板泡消火装置の設計法
20) A163試験のための隔壁の調査
21) 火災試験法
22) 海難審判裁決録から見た海難
23) ロイド海難週報から見た海難
24) 1979年における海難
25) 原子力商船の安全基準
26) 大型船舶の操縦性
27) 潜水設備の安全対策
28) 船舶の汽笛
29) ディファレンシャルオメガ
30) 磁気コンパス
31) ウエザーフアクシミリ
32) 旋回率計
33) 航海用機器の信頼性
34) 商船のブリッジの配置
35) 運航記録計
36) 73/78海洋汚染防止条約
37) 特殊目的船の海洋汚染防止上の設備基準
38) IMCOガスコードの改正案
39) IMCOケミカルコードの改正案
40) 海洋汚染防止条約附属書<2>によって要求される方法および設備の基準
41) VLCC船内取込海水の油分濃度
(c) 上記国際条約・規則等を国内的に取り入れるに際しての問題点を検討した。
 検討結果の主なものは次のとおり
1) クリンバラストタンク方式タンカーの船内設備基準(案)
2) 原油洗浄初期検査基準(案)
3) 指定クリンバラストタンクで運航するタンカーの技術試案
4) 「海洋汚染防止のための規則」等についての暫定条文解釈(案)
5) IMCOガスコードの条文解釈
6) IMCOケミカルコードの条文解釈
B 国際規則と船舶設計等との関連のための解析および試験
 IMCO区画復原性小委員会、救命設備小委員会、防火小委員会および設計設備小委員会関係の規則と関連し、次の試験・解析を行った。
a 船舶復原性の簡易計算法の作成
 IMCOにおいて従来の復原性基準(A.167)を補うため統一のWeather Criteriaを加味した新しい計算法を作成する作業が進められている。
 これに対応し、日本、ソ連、英国、オランダ、IMCOの5基準により我が国の代表的船舶12隻の計算を行ない統一Weather Criteriaを加味した復原性基準の資料を作成した。
b 救命システムの解析
 海上保安庁データおよび海難審判庁裁決録から救命システムに係る海難を取り上げ、船の大きさ、船の種類、海難の種類、ビューフォート階級、海水温度、救助手段等に分析した、このデータをもとに海難発生後救助されるまでの経過を8の波浪階級、8の退船方法についてシミュレートし、救命システム改善の資料を作成した。
c 荒天下における救命設備の要件の検討
SOLAS条約改正案において救命設備の要件として想定される荒天の海象下でプロトタイプ試験を行なうことが提案されているが、実物大のプロトタイプ救命設備を投入し、その耐波浪性を確認することは殆んど困難であるので、これに代る試験法を検討するため、転覆の危険が予想される膨脹式救命筏に関し、次の調査および試験を行った。
1) 実試験を行なう場合に備え、荒天がえられる地域についてその海象が発生する頻度の調査
2) 種々の海難統計資料から、海難発生時における膨脹式救命筏の転覆と海象の関係の調査。
3) 実海面における耐波浪性試験
 第1回:55年9月25日、26日、小型筏により七尾湾小口および輪島海浜。
 第2回:55年11月6日〜7日、模型筏により御前崎沖および御前崎の海浜。
4) 模型による風洞および風洞付水槽における転覆試験(船研)
5) 各種試験方法の可能性の調査
以上の検討の結果、次の中間的結果をえた。
1) 実試験海面としては御前崎から伊良湖岬へ達する海域が適している。
2) 外洋不規則波および海岸の磯波による筏の模型実験はいろいろの制約があり非常に困難である。
3) 不規則波中の実験により筏の動揺応答関数を救め、救命筏の耐波浪性を見出すことができる。
4) 筏の転覆現象を観測するためには、磯波中の実験が最も適している。
5) 筏の転覆に対しては風圧の影響が極めて大きい。
6) 試験方法としては大きな過渡水波とともに風吹装置を持つ水槽で実験を行なう必要がある。
d イマージョンスーツの原型試験法の確立
 SOLAS条約改正案において船舶への備付けを提議されているイマージョンスーツの試験に対処するため、次の試験を行なった。
1) 供試品 イマージョンスーツ 3着
 (日本2着、アメリカ1着)
2) スーツ材の熱伝導率試験(艤装研)
 JIS A 1412-1977(平板法)
3) スーツ材の熱貫流率試験(労科研)
 スーツ材によりダミー(円筒モデル)を作り人工気候室内試験水槽において行った。
4) 保温性試験(労科研)
 18才〜23才の男子4人により次の試験を行った。
 場所:人工気候室内試験水槽
 温度:0℃、3℃、6℃、9℃(4段階)
 時間:各3時間
 計測:直腸温、皮膚温、心拍数、酸素消費、自覚症、動作観察、把持力、熱流束、血圧、排尿
5) 衝撃加速度試験(艤装研)
 人体模型にイマージョンスーツを着用させ3mおよび5mの高さから水槽に落下させ、落水時の最大減速度および作用時間スーツ内の浸水量、スーツの含水量を計測した。
6) 以上の試験結果を検討し、保温性試験については直腸温、平均皮膚温、円筒モデルの表面温度が必要な測定項目であることがわかった。
 これらの関係を試験法にどう取り入れるかは、その他の試験項目ともに今後の課題である。
e 煙濃度・有毒ガスの試験および解析(艤装研)
 IMCO A-214 一次甲板被覆材の試験法に関し、一次甲板被覆材4種×4枚について煙および有毒ガスの濃度を微分法(A-214の方法)および積分法(新型キャナピー)で測定し、比較検討したものである。
 検知については従来の検知管のほかにCO、CO2、HClについて連続ガス分析装置(新規製作)を使用した。試験の結果次のことがわかった。
1) 有毒ガスの分析については連続ガス分析装置がA-214の方法よりCO、CO2については応答も速く連続的に記録が採れ、有用である。
2) 煙の測定については新型の集煙箱が煙が均一化され、記録上の乱がなく良好である。
f 不燃性材料のインタラボラトリーテストの施行(艤装研)
 IMCO第23回防火小委員会の決定に従って、各機関から送付された8種類の供試体について質量の異なった2種類のバスケットを使用してA270(<8>)の試験を行ない、結果をIMCOに報告した。
g 輻射型試験機に関する試験(艤装研)
 IMCO防火小委員会の火災試験方法作業部会において現在議論されている輻射型火炎伝播性試験機を次のとおり試作し、壁材(3)、天井材(1)について試験を行ない輻射量分布について、ほぼIMCOの目標値をうることができた。本試験機は過去数年間に亘って数種の試験を行って来た経験から見て、火炎伝播距離と燃焼発熱量を同時に計測できる能力を有し有用なものと考えられる。
1) 構成:供試体サポートフレーム、バーナーフレーム、輻射パネル、送風機、パイロットバーナー、供試体ホールダー、火炎伝播観測器、発熱量測定器。
2) 輻射パネル寸法:約280mm×480mm
3) 供試体寸法:150mm×800mm
h 船舶の操縦性能に関する試験の解析
 IMCO操船手引書(A.209(<4>))の改正および大型船舶の操縦性試運転方案に関する勧告案を作成するため、次の調査および試験を行なった。
1) 実船操縦性資料の収集・整理
 1966年から1970年の間IMCOに提出されていた約200隻のデータおよび本年度造船各社から提供された操縦性に関する実船試験のデータを同一の形式で整理し、また航海訓練所練習船3隻の実船実験のデータを調査し、今後の検討資料とした。
2) 模型試験
 実船の操縦性資料の解析・検討に対応して、次の模型試験を行なった。
[1] 旋回試験(載荷状態およびトリムの影響調査)(九大)
供試船:VLCCタンカーおよび貨物船の模型
載貨状態:満載、半載、軽荷
トリム:0.1%L・0.2%L船尾トリム、1%L船首トリム
測定 :旋回航跡、偏角、回頭角、船速低下
[2] 試針路試験(船速影響調査)(東大)
供試船:5-27Mおよびコンテナー船の模型
船速 :常用速力、港内全速、港内半速
測定 :新針路整定までの舵角および方位角の時刻歴、航跡
計算 :新進路距離(Xc)、新進路角(ψ4)
[3] 新針路試験(切り返し角の影響)(船研)
供試船:5-27M模型
切り返し角:±12°、±23°、±33°
測定 :切り返し時間、出力の変針角、角速度
解析 :K.T解析
[4] その場回頭試験(実際の操船法のシミュレート)(阪大)
供試船:5-27M模型
舵角 :35°
出力 :前、後進の繰り返し
測定 :航跡追跡
[5] その場回頭試験(プロペラ回転数と舵角の影響)(船研)
供試船:5-27M模型
舵角 :±10°、±15°、±20°、±25°、±30°、±35°、±40°
プロペラ回転数:13.8、19.3、25.3(rps)
[6] 停止試験(前進および旋回中からの停止)(船研)
供試船:5-27M模型
回転数:前進からの停止
前進21.0、12.3(rps)
後進5〜30(rps)
旋回からの停止
前進21.0rps
後進5〜30rps
[7] 減速中の針路安定性(船研)
供試船:5-27M模型
3) 操縦性能の推算法
[1] 停止運動の推算
[2] 旋回性能に及ぼす載荷状態およびトリムの影響
4) IMCO DE小委員会への対応
[1] 第22回DE小委員会に第7基準研究部会第4分科会第2小委員会主査阪大教授野本謙作氏に出席していただき通常運航時の操縦性についての日本提案の説明その他全般の討議に参加した。
[2] 第23回DE小委員会に同小委員九州大学助教授貴島勝郎氏に出席していただき曳航されている船舶の方向安定性についての日本提案の説明、その他全般の討議に参加した。
(第7基準研究部会  48回)
[2] 液化ガス貯蔵船の構造設備に関する調査研究
A 液化ガス貯蔵船の構造設備および防災に関する調査研究
 昨年度は、液化ガス貯蔵船は主として工場に近い静穏な海域に係留されているものを対象に考えたが、今年度はこれを沖合に係留されるものまで範囲を広めて次の調査を行なった。
(1) 次の項目からなる液化ガス貯蔵船基地のフィージビリテイスタデイ
1. 沖合液化ガス貯蔵船の需要
2. 日本周辺の自然環境条件の調査と設定
3. 液化ガス貯蔵船の挙動量と契留システム
4. 液化ガス輸送船の挙動量と係留システム
5. 液化ガス貯蔵船の液化ガス輸送船の係留システムに関する全体配置
6. 沖合荷役システム
7. 海底パイプラインとフレキシブル・ジョイント
8. 液化ガス貯蔵船のボイルオフガス処理
9. 液化ガス輸送船の係留作業
10. 2次輸送
11. 液化ガス貯蔵システムにおけるLNGとLPGの相違
12. 500,000m3型液化ガス貯蔵船のドルフィン・ダンバー係留方式に対する波高影響
(2) 対衝突構造
 一般航行船舶が貯蔵船に衝突した場合の貯蔵タンク破壊防止のための防護構造
(3) 防災の基本構想と災害想定
 液化ガス貯蔵船に対する防災の基本的考え方、防災の考え方の基礎となる災害想定の考え方および沿岸備蓄の防災上の問題点
(4) 石油備蓄タンカー等の調査
 主として係留面および防災面に主眼を置き長崎県橘湾の石油備蓄タンカー(55年12月18日)および沖縄県アクアポリス(55年12月20日)の実態調査を行なった。
B 液化ガス貯蔵船の構造設備基準資料の作成
 前項の調査結果をふまえ、昨年度作成した貯蔵船基準(案)の見直しを行ない、次の項目からなる液化ガス貯蔵船の構造設備基準案を作成した。
1. 立地・配置等(港湾内、沿岸)
2. 構造関係基準案
3. 係留装置関係基準案
4. 防災関係基準案
(第14基準研究部会  16回)
[3] 原子力船の安全評価に関する調査研究
A 原子炉安全に関する研究状況の調査
a 陸上発電用原子炉安全研究の原子力船への適用可能についての検討のため次の文献調査を行なった。
1) 原子力船関係文献の利用に便利なように、まず次のようを分類表を作成した。
大分類   0. 全般
(10項目)  1. 条約・法令・規格
2. 設計
3. 建造
4. 安全(事故解析他)
5. 保修
6. 運航
7. 配員
8. 放射線防護
9. 経済性
小分類   310項目
2) 前記分類表に従って下記諸条件に従って選択された文献のみを対象として文献リストを作成した。(633文献)
[1] 日本原子力船研究開発事業団が所蔵する公開文献
[2] 昭和39年度以降、昭和55年度6月までに整理された文献
[3] 原子力船および舶用原子力プラントについて直接記述している文献
3) 原子力船安全検討のため上記文献リストのうち、2.設計から8.放射線防護にわたる文献の要約を作成し、検討した。
b 諸外国における原子力船安全研究の追跡評価のため前記文献調査においては、諸外国の文献も含め検討した。
B 原子力船安全評価事象の選定に関する研究
a 安全評価方法開発のための評価作業手順に関し次の検討を行なった。
1) 54年度は各種海難事故に起因し放射性物質の放出にまで拡大する過程をイベントツリー手法によって明らかにしたが、その中で火災および衝突を初期事象とするイベントツリーの分岐条件を評価した。
2) 海難事故と原子炉事故との関連を考究す場合は共通要因故障を想定する必要があるので、重要な工学的安全施設の1つである格納容器スプレー系等モデルを取り上げてその空間的配置を仮定し、共通要因故障解析を行なった。
3) IMCO原子力商船安全基準草案(第6次案)における主管庁判断を必要とする項目を列挙し、陸上プラントとの差異の観点から検討した。
b 原子力船安全評価に必要なデータとして海難事故の発生など、初期事象の中で転覆、船体切断、ヘリコプターの墜落、ミサイル、津波、たつ巻、煙害、毒ガス、外部爆発について調査した。
c 原子力船事故の初期事象の選定に関する基礎資料として次の初期事象についてイベントツリーを展開した。
転覆
船体切断
ヘリコプターの墜落
ミサイル
津波
たつ巻
煙害、毒ガス
外部爆発
(第15基準研究部会  12回)
[4] 小型漁船の復原性に関する調査研究
A 小型漁船の復原性の実態調査
 小型漁船の運航実態および復原性の調査のため、次の実態調査を行い基準作成の基礎資料とした。
(1) 長崎県野母崎地区
調査員 :5名
調査対象漁船:19.9トン型まき網漁船および19.9トン型ならびに5トン型一本釣漁船。
調査内容:野母崎漁港において、小型まき網漁船ならびに一本釣漁船の調査。
漁船乗組員および造船所等の関係者と漁船の運航実態・安全性の問題について討論。
(2) 和歌山県勝浦地区
調査日 :昭和55年12月1〜2日
調査員 :5名
調査対象漁船:19.9トン型まぐろ延縄漁船および3〜5トン型棒受網兼曳縄釣漁船。
調査内容:勝浦漁港において、小型延縄漁船および棒受網兼曳縄釣漁船の調査。
漁船乗組員および造船所等の関係者と漁船の運航実態・安全性の問題について討論。
B 小型漁船の動揺安定性能の研究
(a) 横揺減衰力および船体運動の模型実験(大阪府大)
供試模型:1.527m模型(19.9トン型)
実験内容:横揺れ減衰力の計測、波浪強制モーメントの計測、横波中の船体運動の計測。
解析方法:フーリェ解析
(b) 異常横波中横揺れおよび波浪強制力横型実験(横浜国大)
供試模型:1.7m模型(9.9トン型)
実験内容:模型船停止時の横波中の横揺れ運動計測および波浪強制力の計測。
解析方法:F.F.T法による不規則波中の解析
C 斜め波中航走時の転覆現象の研究
(a) 人工波中の模型実験(船研・水工研・北大)
供試模型:2.99m模型(19トン型底曳網)
2.53m模型( 〃  サケ・マス流し網)
実験内容:小型漁船型模型による転覆実験。
2方向複合波中での実験。
解析方法:スペクトル解析。
(b) 斜め波中の復原力変動の模型実験(阪大)
供試模型:225m模型
実験内容:横傾斜状態で曳航する拘束模型により、前後力、横力、回頭モーメント、横傾斜モーメント、上下変位およびトリム角の計測
理論計算:縦波中の復原力変動の計算法
D 追波中不安定現象の研究
波乗り現象の模型実験(東大)
供試模型:2,261m模型
実験内容:自由航走模型による船速、波長、波高等が波乗り状態発生に及ぼす影響実験。
波浪中航走時の復原性能の実験
E 小型漁船の復原性能に関する実船実験
(a) 旋回時の実船実験
 7.0トン一本釣漁船(三崎漁港)および14.9トン底曳網漁船(金沢漁港)を対象に旋回時の実船実験を行った。
(b) 傾斜試験および動揺試験
 地区別(15地区)に代表的な船型の漁船(4トン以上、20トン未満対象)を選出し、その漁船の船図を収集するとともに実船による傾斜試験および動揺試験を行った。
F 小型漁船の復原性基準資料の作成
 上記の各種模型実験並びに実船試験結果より得られた各種データをもとに検討を行い、小型漁船の復原性基準案を作成した。
(第17基準研究部会  15回)
[5] 洋上焼却船の焼却設備に関する調査研究
A 熱分解性の測定に関する実験
 PCB等の熱分解性に関して十分な条件を例示したものはあるが、熱分解のための必要条件にふれたものはないので、熱分解性に関する実験方法について種々検討を加え、本年度は予備的な試験を行なった。試験の結果熱分解実験を実施する上での種々の技術上の知見がえられるとともに、有機ハロゲン化合物の分解効率を求めうることが認められた。
B 分解効率に関する研究
 分解効率の定義および分解効率の実験方法・分析精度について検討を行なった。
C 分解効率、燃焼効率等を測定する機器に関する研究
 分解効率と測定項目、PCBの測定方法と問題点、排ガス流量の測定に使用する機器と問題点、燃焼効率の精度、燃焼ガスの分析計について検討した。
D 酸素濃度計の精度に関する実験
a 振動試験
供試体 :A社、B社酸素濃度計
試験法 :事前調査、掃引振動試験(2〜13.2Hz全振幅2mm、13.2〜8Hz加速度±0.7g、それぞれ10分)、耐振振動試験、事後調査。
試験結果:本試験法によれば供試体の現状構造形式またはその取付方法では耐振性が十分であるとは云えないことがわかった。
b 腐食試験
供試体 :酸素計の前処理装置
試験法 :HClガスを入れてその吸収除去性能の調査
試験結果:HClガスは、ほぼ完全に水中に吸収されることがわかった。
したがって分析計の腐食を防ぐことができるが、排出される洗浄吸収水はかなり強い酸性を示すので、その処理に注意を要す。
E 焼却設備の設計指針の作成
 次の計装設備について設計上の指針を作成した。
1) 温度計測装置
2) ガス分析装置(酸素計、一酸化炭素計および二酸化炭素計)
3) 廃棄物および燃料供給装置
(第18基準研究部会  7回)
[6] 危険物の個品海上輸送に関する調査研究
A 個品海上輸送に関する諸規則等の調査
 IMCO IMDG Code Annex 1(国際危険物海上運送規約、付属書1)およびCFR Title49(米国危険物規則)を調査した和訳した。
B 危険品の個品海上輸送に関する調査
 各種規則に用いられている危険物の定義、現行危険物運送および貯蔵規則に定められている危険物を収納する容器の分類・整理、米国における不特定危険物に対する規制の方法、米国における危険物輸送用の金属ドラムの規格の概要について調査した。
C 危険品の個品海上輸送容器に関する試験
 危険品の個品海上輸送容器の基準作成の資料を作るため、現在使用されている容器について次のような試験を行なった。(艤装研)
供試品 :1) 鋼製ドラム(天板固着式および天板取外し式の2種類、合計24個)
2) ファイバドラム(全ファイバ、天板金属リテーナリング付の2種合計18個)
3) ファイバ板箱(2種合計24個)
4) プラスチック缶(偏平形、ドラム形の2種合計30個)
試験項目:気密試験、水圧試験、落下試験、積み重ね試験、耐薬品性試験。
試験方法:IMCO IMDG Code Annex1に準ず。
試験結果:殆んどのものが試験に合格した。不合格のものについても試験装置の不備、試験方法の未確定のものもあるので今後の検討に待つことになった。
D 危険物の個品海上輸送に関する諸基準に関する研究
 前記の調査および試験の結果を検討し、危険物の個品海上輸送に関する基準資料として次のものを取りまとめた。
1) 試験結果からみたIMDG Code 付属書1の問題点。
2) IMDG Codeを国内規則化させるについて現在の容器および試験法の問題点。
3) 不特定危険物の現行規則に対する問題点。
(第19基準研究部会  15回)
[7] 大型特殊船錨の把駐力等に関する調査研究
A アンカーに関する研究成果の調査
a ストックレス・アンカーと各種特殊型錨の性能比較に関する文献として60件の資料を収集した。
b 日本沿岸の底質に関する文献として海上保安庁水路部、運輸省港湾建設局各港湾管理者、建設省国土地理院の資料を調査した。
B 実物規模のダンホースアンカーによる把駐力測定試験
 昭和55年9月17日〜9月18日の間満珠島沖(下関)において次の実物試験を行なった。(三菱)
試供品:ダンホースアンカー454kgおよび363kg 計2個
JIS型ストックレスアンカー480kg 1個
試験法:曳船(長さ28m、750psx2)フォイトシュナイダープロペラ付)により35mm径のナイロンロープを介して後進曳航試験。
結果 :把駐力を測定した結果、全般的にみてダンホースアンカー把駐力係数がJIS型アンカの把駐力係数に比して約2〜3倍大きいことが明かになった。
C 実験室規模による各種錨の把駐力、姿勢安定性等に関する試験
 艤装品研究所において次の模型試験を行なった。
供試品 :ダンホースアンカー3,80kg(実物の1/5)
ダンホースアンカー1.55kg
JIS型ストックレスアンカー3.17kg(実物の1/5)
試験装置:長さ10.8mの槽に48cmの深さに砂を入れ、この中を25、50および200mm/秒の速さで6mm径のテトロンロープ(長さ3m)をつけて引っぱりアンカーの姿勢を観察するとともに作用する力を計測した。
結果  :1) 振れ角ある場合ダンホースアンカーの方がJIS型アンカーより回転しにくい。
2) 把駐係数についてはダンホースアンカーの方が約2.5〜3倍大きいことが明らかになった。(実物試験の結果とほぼ同じ)
 以上の試験結果と前項の実物試験の結果から次のことが明かになった。
1) 実物大アンカーの把駐力試験を底質(工学的表現を行なった慣入性)を明らかにして行なったことは画期的といえる。
2) 実物アンカーの1/5模型の試験を実験室にて行ない、実物試験と相関値がえられた。
3) 同一底質海域においてダンホースアンカーとJIS型ストックレスアンカーの把駐力試験を行ない、その挙動、最大把駐力の比較ができた。
4) 以上によりダンフォースアンカー(大型特殊型錨)の把駐力についての一つの資料をうることができ、また模型試験による実物試験の標準方案作成の資料を作ることができた。
(第20基準研究部会  6回)
[8] 船内作業区画および居住区画に関する調査研究
A 船員作業スペースに関する調査
1) 船員作業スペースの広さに関する実態を把握するため、次の要領により造船所に対してアンケート調査を行なった。
対象船舶:約100総トン〜3,000総トン
船舶の用途:貨物船、タンカー、旅客船、カーフェリー、その他(曳船、作業船)
主な調査項目:主要寸法、航行区域、総トン数、馬力、最大とう載人員、船内作業区域、(操舵室、海図室、機関室、制御室、無線室等)の位置、広さ。
2) アンケート用紙は190隻配布し、103隻回答があった。配布造船所数100箇所、回答造船所53箇所
3) 以上のアンケート結果をウイング、操舵室、無線室、機関室等11箇所の区分に従って航行区域別、用途別、総トン数別に分類し52の集計表および27種のグラフを作成し、検討した。
B 船員居住スペースに関する調査
1) 船員居住スペースの広さに関する実態を把握するため、前記船員作業スペースのアンケート調査と同時に造船所に対してアンケート調査を行った。
 調査項目は、前記の外、船員居住区域(船員室、船員食堂、ギャレー、船員レクリェーションルーム、病室、便所、浴室、洗面所、洗濯室、乾燥室など)について調査した。
2) 以上アンケート結果を船員室、食堂、ギャレー、レクリェーションルーム等25箇所の区分に従って航行区域別、用途別、総トン数別に分類し、130集計表および18のグラフを作成し、検討した。
(第21基準研究部会  5回)
■事業の成果

[1] 国際規則と船舶設計等との関連に関する調査研究
 海上人命安全条約、国際満載喫水線条約、海洋汚染防止条約等に関連する勧告、規則等についての意見および提案資料ならびに国内法制化の問題点を作成した。これにより世界有数の海運・造船国である我が国の経験と技術を広く国際規則等に反映させることができた。
 また国内的にも造船技術の向上と船舶および人命の安全に役立つものと思われる。
 なお、船舶復原性の計算法、救命システムの解析、救命設備要件の検討、イマージョンスーツの原型試験法の確立、煙濃度・有害ガスの試験、不燃性材料のインターラボラトリーテストおよび船舶操縦性能の試験・解析結果は、船舶復原性基準の改善、救命設備基準の改正、大型船舶の操縦性に関する試運転方案の勧告および操船手引書の改善等IMCOにおける安全基準の制定・改善に対する我が国の意見・提案の基礎資料として大いに役立った。
[2] 液化ガス貯蔵船の構造設備に関する調査研究
 本年度行なった液化ガス貯蔵船基地のフィージビリティスタディの結果は今後建造が予定されているLNG・LPG等の液化ガス貯蔵船に関し、貯蔵船の需要の見とおし、日本周辺の自然環境条件と貯蔵船基地との関連、貯蔵船・輸送船の係留システムの考え方、海底パイプラインの考え方、ボイルオフガスの処理、貯蔵船の対衝突構造、貯蔵船基地の防災についての基本構想等の指針をあたえることができると確信する。
 また以上検討結果をふまえ作成した、液化ガス貯蔵船の[1]立地・配置等 [2]構造 [3]係留装置 [4]防災に関する基準(案)は今後建造が予想される液化ガス貯蔵船の安全および貯蔵船に働く人員の生命の安全ならびに環境の保全に大いに役立つものと思われる。
[3] 原子力船安全評価に関する調査研究
 本委員会で作成する予定の原子力船安全評価指針は、原子力船の設計・建造に関し設計審査指針と一体となって原子力船の安全確保に役立つものと思われる。
[4] 小型漁船の復原性能に関する調査研究
 小型漁船の転覆事故にかんがみ、現在船舶安全法に明確な基準のない20トン未満の小型漁船に対する復原性基準の作成を目的とし、本年度はその第一次案を作成した、来年度実船に試用してこれを改善して基準を作成する予定である。
 この試案は実態の調査結果等からみて、小型漁船は追い波・斜め追波により転覆した例が多いことから従来客船、貨物船等に考えられている横波基準のほかに特に縦波基準を入れることになった。これにより小型漁船の転覆事故の減少に役立つと思われる。また、これら小型漁船は小規模の造船所で作られることが多いため各種の細かい計測やデータの収集が困難なので、なるべく簡易な計算式を作る必要がある。そのため数多くの小型船の実船実験および関連の模型実験を行なって得た諸係数を用いた簡易なる計算による復原性態の判定を行なうよう考えられている。このことは安全基準としてのほか小型漁船の建造の指針、船長の安全性の確認のガイダンスともなる。
 以上のほかこの基準が完成すれば、小型漁船のみならず、これに類似の小型客船、小型遊漁船等の復原性基準の制定、改正に大いに役立つものと思われる。
[5] 洋上焼却船の焼却設備に関する調査研究
 本年度行なった有機ハロゲン化合物等の熱分解性の測定に関する実験の結果は実船における燃焼の際の温度条件の基準制定に役立つものと思われる。また現在市販されている酸素濃度計の振動試験および塩酸ガスに対する腐食試験の結果は、洋上焼却船の設備として海上における特殊環境に耐える機器の要件を決める資料として役立つものと思われる。以上により作成した焼却設備の設計方針および来年度引続き行なう調査研究の結果により焼却炉、計測装置等の焼却設備に関する技術基準を作ることにより、海洋汚染防止と環境の保全に役立つものと思われる。
[6] 危険物の個品海上輸送に関する調査研究
 本年度行なったIMCD IMDG Code Annex 1の検討およびこのコードに準じた試験方法による現在使用されている危険物個品海上輸送容器(鋼製ドラム、ファイバードラム、ファイバ板箱、プラスチック缶)に対する各種試験の結果は、我が国現行の危険物運送貯蔵規則に規定する容器包装の基準作成の資料として大いに役立つとともに、またIMDG Codeの不合理な点もわかり、IMDG Codeの改正提案の資料ともなった。
 また、米国危険物規則の検討は、現在輸送基準が制定されていない数千種に及ぶ船舶運送の対象となる危険物の個品海上輸送基準作成の有力な資料となる。
 以上の資料にもとずき危険物の運送基準が整備されることにより危険物の海上輸送にたずさわる人の人命の安全および船舶の安全に大いに役立つものと思われる。
[7] 大型特殊型錨の把駐力等に関する調査研究
 ダンホースアンカーおよびJIS型ストックレスアンカーに対する実物および模型試験の結果により、ダンホースアンカーの把駐力がJIS型アンカーより2〜3倍大きいことがわかり、また、実物試験と模型試験の相関がえられた。
 これらのことはアンカーの模型試験の標準方案作成および船舶設備基準の作成に大いに役立つものと思われる。
[8] 船内作業区画および居住区画に関する調査研究
 本年度行なった船内作業区画および船員居住区画の広さに関する調査・解析結果を検討し、さらに実態調査等を行ない、操舵室、海図室等の船内作業区画の広さおよび船員室、病室、便所、浴室等の船員居住区域の広さの基準を作成することにより、船員および船舶の安全性の向上に大いに役立つものと思われる。





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