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■事業の内容

(1) 海上衝突予防法に関する調査研究
[1] 特殊な構造または目的を有する船舶についての海上衝突予防法上の特例に関する問題の検討
A. 特殊な構造又は目的を有する船舶が、灯火、形象物の設備に関して、海上衝突予防法の規定に従う場合、その船舶の特殊性から困難であるときは、これらの数、位置等について同法により運輸省令で特例を定めることができるとされている。これら特別事項について船舶交通の安全上の見地から緩和しうる事項及びその程度を調査研究し、統一的な基準を明らかにするため、委員会と作業部会を各2回開催して、次の事項について検討した。
a. 船舶の表示する灯火の特例適用に関する基準を設定するに当っての問題点を検討した。
b. 前年度収集した主要海運国の関係国内法令等に関する資料を検討した。
c. 船舶の表示する灯火に関連する衝突事故等の実情を検討するための資料を海難審判庁裁決録により調査した。
[2] 室内実験による検討
A. 前年度実施した予備実験の結果を踏まえて、灯火の表示モデルにより室内実験を行って検討した。
・ 実験項目
他船の表示する灯火が次のような状態にある場合に及ぼされる見張りへの影響の程度
イ. マスト灯の射光範囲内に障害物がある場合
ロ. 前部及び後部マスト灯が法定距離を確保できない場合
ハ. 縦に連係する灯火が法定間隔を確保できない場合
[3] 本年度の調査成果について検討し、報告書をとりまとめた。
・ 委員会:海上衝突予防法調査委員会  2回
同 作業部会       2回
(2) 地震に伴う津波に対する安全防災対策の調査研究
[1] 津波来襲時における港湾の安全防災対策に関する検討
A. 委員会を開催して、調査研究方針を決め、作業部会で具体的な検討を行った。
B. 作業部会で次の事項について検討した。
a. 津波の規模、警戒宣言発令までの手続き等
b. 過去の津波による被害の状況
c. 静岡県清水港、田子の浦、焼津港の現地調査等
d. 清水港における津波の挙動についてシミュレーション
e. 津波来襲時の港内係留船の安全性
f. 当面の対策
C. 清水港における津波の挙動シミュレーションを行った。
D. 本年度の中間報告をとりまとめた。
・ 委員会:津波対策委員会  2回
同 作業部会  4回
(3) 狭水道、沿岸における船舶交通の実態訓練
[1] 通航船舶の観測
[2] 通航船舶の観測結果に関する処理及び解析
A. 委員会及び作業部会を開催し、調査方針と作業方針を決め、観測及び解析について検討を加えながら調査を進め、その成果をとりまとめた。
B. 下記の2海域において目視及びレーダーによる船舶交通の実態について観測を行い、その資料に基づき各海域ごとに航跡、密度、分布、速力分布、ゲート別隻数、分布等について解析し、検討を加えた。
a. 明石海峡  本調査(3日間、調査員 5名)
b. 来島海峡  本調査(3日間、調査員 5名)
C. 目視観測による資料の集計及びレーダー観測による資料との照合(一部電算機処理による)を行った。
(4) 小型船舶用海難防止マニアルに関する調査研究
[1] 小型船舶用海難防止マニアルの作成
A. 昨年度に作成した海難防止指針からエッセンスを引き出し、小型船舶運航実務者用の海難防止のためマニアルを作成することとし、委員会を開催して作業方針を決め、原案執筆作業は次の六つの作業部会で行った。
a. 第一作業部会(各部会の総合調整)
b. 第二作業部会(衝突・乗揚げ)
c. 第三作業部会(浸水・転覆)
d. 第四作業部会(火災)
e. 第五作業部会(機関故障)
f. 第六作業部会(海中転落)
B. マニアルに盛り込むべき内容について、試船相談員によるアンケート調査を行った。
C. 各作業部会から提出された原案をとりまとめ、小型船安全手帳を作成した。
注1. 最終の委員会を開催する予定であったが、各作業部会から提出された原案のとりまとめは事務局ぺースの作業であり、委員長の承認を得て、原案を送付して検討を依頼した。
注2. 作業部会も計画では各3回開催予定であったが、上記と同じ理由で計画どおり開催する必要がなかった。
・ 委員会:  小型船舶用海難防止マニアル調査研究委員会  1回
同 第一作業部会             0回
同 第二作業部会             1回
同 第三作業部会             2回
同 第四作業部会             1回
同 第五作業部会             2回
同 第六作業部会             1回
(5) 船舶の積載物による災害防止に関する調査研究
[1] 海上に輸送される新規危険物の安全取扱いに関する調査検討
[2] 危険物積載船舶の海難事故調査
A. 委員会を開催し、本年度の調査研究方針を決め、次の事項について検討及び調査研究を行った。
a. 溶融状態にある物質の危険性の判断基準
b. 危険物の品名別手引データシートの作成
B. 作業部会で具体的な作業を行った。
C. ロイド海難週報から危険物による事故及び危険物積載船(タンカー等)の事故について調査した。
D. 本年度の中間報告をとりまとめた。
注1. 計画では委員会は3回であったが、調査研究事項が非常に難題なため作業部会を委員会に振り替えるとともに、さらに1回ふやした。
注2. 作業部会は計画では3回であったが、上記理由で委員会に振り替えた。
・ 委員会:危険物研究委員会 5回
同作業部会   2回
■事業の成果

(1) 海上衝突予防法に関する調査研究
 海上衝突予防法の規定に従うことが困難を特殊な構造又は目的を有する船舶には、同法第41条第3項に基づき、法の適用が緩和される。しかし、その基準は今までのところ明確にされていなかった。
 本事業の完了により、法の適用を緩和し得る事項及びその程度に関し、ある程度の基準を明らかにすることができる。
(2) 地震に伴う津波に対する安全防災対策の調査研究
 清水港における東海地震にともなう津波のシミュレーション結果および港内保留船の安全性に関する検討結果をふまえた当面の対策は、海上保安庁及び水産庁の当面の緊急対策に関する指導の資料として活用され、海運業界及び水産業界の津波来襲時の安全対策に寄与するものである。
(3) 狭水道、沿岸における船舶交通の実態調査及び解析
 本事業は、船舶交通量が多く海難の多発している明石海峡及び来島海峡の二つの峡水道において、これらの海域の船舶交通の実態を観測し、このデータを解析することにより船舶交通の安全確保のための検討、または水域利用上の諸問題点(例えば、航路の交通容量、管制導入の問題、工事等により生ずる海上交通への影響等)の検討のための基礎資料として活用されるものである。
(4) 小型船舶用海難防止のマニアルに関する調査研究
 本年度とりまとめた小型船安全手帳は、イラスト等を挿入して、できるかぎり平易に作成してあるので、小型船の運航実務者にとり海難防止に役立つものである。
(5) 船舶の積載物による災害防止に関する調査研究
 新規危険物の事故時の緊急対策を含む安全取扱いに関する調査検討等は、港湾における危険物の事故防止及び事故時の緊急対策の資料となり、海運業界、港湾業界、化学工業界、貿易業界等の安全対策向上に寄与するものである。





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