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■事業の内容

氷海域における船舶・海洋構造物の挙動に関する研究
(1) 文献・資料購入及びほん訳
[1] 文献・資料購入
 Data No.SK580 北海域輸送用潜水・砕氷タンカーを購入した。
[2] 文献ほん訳
 ソ連北極南極研究所その他の機関が最近発行した文献の中から次のものをほん訳した。
B.AAI、Vol.354、1978
B.AAI、Vol.364、1979
Meteorologiya i Gidrogia
(2) 基礎調査
[1] 氷象等の文献による統計調査
 ノースウエストパッセージ、アラスカ周辺海域、北極海等の氷海環境(水量)、海水特性、氷象、流水等を調査した。
[2] 開発プロジェクト概況調査
 北極海域における地下資源開発のための探査・試掘プロジェクトの概況を調査した。
 プロジェクト数はボーホート海で1979年現在10ケ所、バフィン湾及びデービス海峡で12ケ所に達している。
[3] 氷海域航行能力を規定する条件の調査
A 氷象情報の把握:流氷、密接度、氷盤、流氷上の積雪、密度度と海氷特性、解氷度(開氷度)、氷丘脈
B 沿岸情報の把握:錨氷、アイススコアリング、海岸へのライトアップ・パイルアップ
(3) プロペラに関する予備実験
[1] プロペラ設計・製作
 氷塊との接触を考慮し、流力的・強度力学的に主要目を決定し、その後プロペラの翼輪郭、前後縁の翼厚分布等を変形して氷海用プロペラを設計した。プロペラの主な要目は次のとおり。
ビルトアップ固定ピッチ 4翼
直径10cm(横型では15cm位)
プロペラピッチ比 0.8
ボス比 0.3
展開面積比0.81
これらの要目をもった模型プロペラ(真鍮製)を2ケ製作した。
[2] 性能予備実験
 氷中作動時の動的バランス、左右軸バランス、表面処理精度、耐低温性(対米硬度)等を実験的に調査した。
(第186研究部会   6回
(うち地方開催)  (0)
■事業の成果

最近の燃料価格の高騰は厳しい自然環境と立地条件の面から開発のテンポが遅かった北極海域のガス、石油掘削へと資源開発の幅を広げつつある。わが国としても石油・ガスの輸入先を広範囲に求める必要があり、最近高まりつつある氷海商船出現の機運にあわせて、官民一体となって急ぎ研究に着手すべき情勢となった。
 このような背景のもと本研究は今年度から3か年計画で開始された。船舶等の氷海中の性能を研究するためには、理論研究、模型試験、及び実船試験を行なう必要があるが、今年度は基礎調査に重点を置き、ソ連文献を主体とした氷象状況の調査や極海域の資源開発プロジェクトの現況を知ることにつとめた。
 また、次年度以降の模型実験に備え、必要なプロペラの一部を製作し、予備試験を行なった。
 これらの成果はわが国の今後の氷海域航行船に関する造船技術ならびに氷海域海洋構造物建造技術の指向すべき方向を決定するのに役立つと共に基本設計時の要目決定の際貴重な指針となるものである。





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