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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: 日本のニュース  
コラム名: 透明な歳月の光 145  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 2005/02/04  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   目立つ幼児化と女性化
 NHKの問題は、辞任された海老沢会長をマスコミはさんざん叩(たた)いて書いた。私もNHKは「お金は使って、努力はしないところだ」と思ったことが何度もあるが、職員が約1万2千人もいる組織のすみずみまで眼を光らせることは事実上できるものではない。会長1人が叩かれるのは、お気の毒に思う瞬間も多かった。しかしNHKだけでなく、放送の世界全体がなによりも最近幼児化している。
 ニュースに2人ずつの(時には3人もの)アナウンサーが出る番組というのは、私が見ている限りの外国のテレビにはない。BBCもCNNも、ソ連も中国もフランスも、特別に現地にいる特派員を呼び出さない限り、原則1人ずつである。アナウンサーの技量がないと思われるのも癪(しゃく)だろうし、こういうところででも人件費を節約しようと思うのが、経営者の姿勢であってもいいと思う。
 幼児性を強烈に感じさせる他の特徴は、説明するのにすぐ扮装(ふんそう)をすることだ。子供番組でもないのに、わざわざ付け髭(ひげ)をつけてみたり、説明的な安物の衣装に着替えてみたり、ちょっとした舞台みたいなしつらえをしたりする。現代演劇では、舞台装置でできるだけ写実を避けて、抽象的な場面で観客の想像力を参加させる方向にあるという時代に、幼稚園のような表現の仕方をするものではない、と思いながら耐えている。
 それ以上に、日本のニュースの幼児性を示すのは、ニュースの内容があまりにも内向きになってきたことだ。歌舞伎俳優のまだ若い息子さんが、深酒をして人に迷惑をかけた。決して大きな出来事ではない。世界ではもっと複雑で根の深い問題が山積しているのに、日本のテレビはこの手のゴシップ種ばかり、それも一斉に追いかける。視聴率を気にするとそうなるのだ、というが、NHKならその害悪に染まらなくてすむはずだ。
 シンガポールではNHKのスポーツ番組になるとしばしば静止した写真だけが出て、「版権の都合で放映できません」という意味の字幕と音声だけの説明に切り替わる状態がまだ改善されずに続いている。他の国の放送局にはそういう処置をしているところがない。どうしてNHKはああサービスが悪いんでしょう、と日本から来た私に文句を言う人もいる。
 幼児化とともに、女性化も目立つようになった。男性のアナウンサーが身をよじって見せながら、「もうとっても、寒いんです」と言う。しかし温度そのものの報道がない。気温に対する感覚は人によって違うものだから、聞きたいのは、その土地が今、セ氏何度なのか、という事実である。
 口で主観的に暑いの寒いのと言って騒ぐのは、昔は女性独特の表現だということになっていたのだが、今は日本人全員が女性化してしまって、めでたく男女同権になった。
 



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