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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: インド洋大津波 災害から学びより賢く  
コラム名: 透明な歳月の光 141  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 2005/01/07  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   昨年12月26日の朝に起きたスマトラ沖地震による津波は既に16万人に近い死者を出した。今まで予想もしなかった災害だというから、これで人間はまた運命というものについて深く学んだはずだ。
 これを機に、国際援助というもののあり方を深く見直すことになるだろう。「オーバーとかハイヒールの靴などは要りません」と外国のテレビも援助する人間の身勝手を戒めていた。
 昔、サイクロンでひどい被害を受けた直後のバングラデシュで、湾岸戦争の帰りのアメリカ軍の小人数の部隊が、短期間に行った援助について聞いた話が今でも忘れられない。その部隊は、ただ海水から真水を作る仕事だけをして帰った。
 コレラや下痢が流行して、輸液の設備もない時には、清潔な飲料水に砂糖を入れ、それに僅(わず)かな塩を加えたものを飲ませるだけで助けられる場合があることもその時習った。
 飲み水を作る仕事と遺体の処理のような地味な仕事を専門に受け持つ国があってもいい、と思う。災害救助用のヘリ、災害地の片づけができる重機類、あちこちで連絡に使える小型発電機などは、実に大きな役に立つだろう。
 救助には、複雑で周到な用意がいる。多くの人は、臭気を放つ遺体を遺族に返してやりたい、病気を防ぐためにも埋葬したい、と思って収容作業に従事するのだが、中には死者の貴金属や財布目当てに現場をうろつく人もいるのがこの世界だ。
 一旦、相手国の政府に救援のための金として贈ったものは、正直なところ後で何に使われたのかフォローするのはほとんど不可能だ。もちろん一部は被災者のために使われるだろうが、このような善意の金さえも平気で私腹を肥やすために使う政府高官もまた、どの世界にも必ずいるものなのである。
 疑いを持ちつつ救う。この双方の作業は同時に果たさなければならない。
 私たちは、マスコミや赤十字などを通して、救援のお金を贈る。そのお金を最後まで厳密に管理し、見張り、どのようなことにどれだけ使ったかを寄付した人に細かく報告できるようにしておくことが、お金を受け取った組織の義務である。
 集金の組織にお金を届けて、それでいい気持ちになる人は多いだろうが、それは甘さというものだ。それが被災者に行くとは限らない。
 集金した組織もまた、相手国の政府や組織に渡しただけで、任務が終わりと考えたら、それは寄付をした人たちを裏切る行為であり、泥棒をはびこらせる原因になる。
 災害からはその都度学んで賢くならなければならない。それが死者に報いる1つの確実な道だと私は考えている。
 



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