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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: 拉致問題 こじらせた責任の追及を  
コラム名: 透明な歳月の光 135  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 2004/11/19  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   拉致問題は、関係者すべてを振り回している。家族の精神的疲労は計り知れない。世の中には、受けた不幸の原因のかなりの部分はその人の責任ということがよくある。しかし横田めぐみさんの場合は、彼女の責任はゼロだ。13歳の少女が突然拉致されたのだ。
 その間、無数の人たちがこの問題の解決のために奔走、苦悩の日々を送った。部外者が総理や外務省の「無能」を言うことはたやすいが、相手は無頼国家なのだ。イスラエルのように兵を出して武力で奪回するほか解決策はないのである。
 しかしこの結果に大きな責任を持つ人がいる。田中真紀子氏という、金総書記の長男の金正男という人物が日本に不法入国した時に、外務大臣だった人だ。間違いないことは、彼を返さなければ、ことはもう少し素早く進展していただろう、ということである。
 私は政治家という人たちの精神構造と正反対の地点で生きているらしいので、しばしばあの方たちの忍耐強さ、自分の力で国民を幸福にできると信じる疑いの無さに感服している。すべては私にはできないことばかりだ。
 しかし田中氏が金正男を釈放した時には、ほんとうにその愚かさが信じがたかった。金正男は、虚偽の身分を提示して日本に入国した。しかも自分は金総書記の息子ではない、と言ったと少なくともマスコミは報じた。それならこれ以上のいい条件はない。私が外務大臣だったら、金総書記の息子ではない、ただの金正男だという不法入国者には、ゆっくりと裁判が済むまで何年でも日本に留まっていただき、その間にさまざまな外交ルートを通じて彼の存在を切り札に使う。
 こんな計算は、素人でもできることだろう。最初から金総書記の息子だと公言していたなら、不法入国者でも「お坊ちゃまの愚行」として外交的配慮をしなければならないかもしれない。しかし自分はお坊ちゃまではない、と二重に嘘をついた人物をなぜ泡喰ってお帰ししなければならなかったのかわからない。
 田中氏は、拉致問題をこじらせた大きな責任者だ。少なくともこれだけ外交に才能のない人を閣僚にした総理の責任は、やはり人を観る眼の欠如という点で大きいだろう。
 私は田中真紀子氏という方を知らないから、新聞記事を読む限り、ジャーナリストとしてなら軽薄にしても機転がきき、見出しのつけ方も上手で、取材先にも浸透力の強い才能のある人のように見える。しかしこういう人に政治をされると、国民は大きな経済的ロスや長年に渡る苦悩を背負わなければならない。2度とこのような賢さのない人が閣僚になどならないことを望む。そしてマスコミはもう少し記憶をよくして事件にかかわった人たちの言動の責任も追及すべきだろう。
 



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