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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: サダム後のイラク  
コラム名: 透明な歳月の光 127  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 2004/09/24  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   ■米への同調は国益か
 時事通信によると、9月16日アメリカのメディアが「イラクで大量破壊兵器の捜索を行ってきた米調査団が近く、同兵器は存在しなかったと公式に結論付ける報告書をまとめる、と伝えた。これにより、ブッシュ政権が掲げてきたイラク戦争の『大義』は、最終的に否定される」ことになったという。パウエル国務長官も9月13日の上院の公聴会で、「これまでに(同兵器の)備蓄は発見されなかったし、今後も見つかる見込みはないと思う」と述べた。
 私が読んでいる新聞の数は決して多くはないのだが、そのような空気を受けて、「これでイラク戦争の大義は崩れた」と喜んでいる新聞や人々がまずおり、それをさらに笑うアメリカ同調派の新聞の論調や評論家が出ているらしい。
 戦争が大義で行われるなどと思っているのは、よほどの不勉強家か、まだ考え方が幼い若者であろう。戦争は国益、引いては個人の生活がつぶれないかどうかでひきずられて始まるものであろう。しかしここへ来てアメリカ同調派は、イラク戦争への参加は日本にとって国益だったという論陣を張ることに熱心である。
 最近も日本の有名な政治家が「イラク国民」という言い方をして何の不安も抱いていないのを読んだ。サダム或(ある)いはアメリカに対していかなる感情を持っているかはその部族が、どれだけサダムまたはアメリカによって過去に得をしたか、現在利益を得ているか、将来どこからの金を当てにしているかで違ってくるだけだ。「イラク国民」ではなく、各部族の利益と対立によってあの国は歴史的にも存在して来たのである。
 テロリストたちも大義は口にするが、つまりはいかに自分の勢力を保持し、テロ以外の組織では食べていけない人々を吸収するかにある。その際憎悪の対象は、できるだけ至近距離にあり、単純で分かりやすく、世界のマスコミに載りやすいものが選ばれる。テロの特徴は目立ちたがる、ということだ。ゆえにテロをバックアップしているのは、マスコミの機能でもある。
 イラクに駐留中の日本の自衛隊が今までのところ狙われていないのは、日本人がサマワの復興に貢献していることが人道的に評価されているからではない。サマワに住む数十の部族の人たちが、自分たちの利益のために自衛隊の駐留を利用したいからだ。一方テロ組織も、サマワという田舎にいる色彩の曖昧(あいまい)な日本人を狙うより、アメリカ軍そのものか、アメリカに同調するイラク人警察官志望者を狙う方が話の筋がはっきりして効果的だと判断したからだ。
 アメリカはサダム政権を崩した後のイラク社会の動きを大きく読み間違った。他国の文化の理解に恐ろしく怠慢だった。そのような愚かなアメリカに単純に同調することは決して国益ではないだろう。
 



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