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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: 傭兵をイラクへ?インフラ整備の現実的な手段  
コラム名: 透明な歳月の光 78  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 2003/10/03  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   私は今アフリカを旅行中なのだが、帰国したら少し勉強したいと思っていることがある。それは「傭兵」の問題である。数年前、パリで独立記念日のパレードを見た時、軍楽隊のマーチに合わせた正規軍の行進が突然止むと、外人部隊(レジョン・エトランジェール)が独自のドラムの響きに合わせて現れた。兜みたいなヘルメットに長い馬の尻尾のような飾りをつけ、まさかりを担いでいる。その頃既に人数も減っているというが、その人気は大したもので、あらゆるマスコミが大勢駆け寄って写真を撮っていた。

 アメリカも日本政府の調査団も、国連軍ならイラクで仕事ができると思っているが、私にいわせると、あの迷彩服みたいな国連軍の服を着るだけで、一部では子供たちの憧れにもなると思うが、一部の不平分子の標的になる。

 しかしもし日本が、何国人であろうと、傭兵を雇い、その人たちに清潔な水を作る仕事や、電気の復興工事をさせたら違うだろう。お雇い兵なら国連軍の制服など着なくてもいいのだから、現地の人たちも、この人たちはアメリカ主導の国連軍じゃないんだ、自分たちの暮らしを便利にしてくれる水道屋さんと電気屋さんの部隊なのだ、と納得してくれるだろう。

 どうして普通の電気屋さんと水道屋さんではいけないかというと、イラクは表向きそうではない土地でも潜在的戦闘地域であり、無法地帯なのだから、やはり軍と同じノウハウと責任を持って、自分たちの生命は自分で守り、攻撃されたら反攻するだけの技術を持った人たちでなければ、仕事ができないのである。

 もちろんその人たちを、日本の金で派遣していることは明確に宣伝する必要がある。そしてまた「傭兵軍」が、それなりの戦いの専門家としての技術や誇りをもって任務についている人たちだとしても、契約だけのことをしているかどうかは、日本国としての専門家の監視も要るだろう。傭兵は、契約で行く人たちだから、契約が成立すれば、後は雇った方が、契約を守っているかどうかを見張るのはごく当然のことだ。だからこれは国家的事業で、日本国内で通用する水道や電気の専門家集団をいくら送ってもとうていなし得ない特殊作業である。

 こういうことを言うと、日本国内では「金で買った人に戦争をさせるのか」などと轟々たる非難がわきおこること必定だから、とても責任ある方々は口にできない。しかし今ほんとうにイラクの人たちに実現可能なインフラの平和的構築を早急に贈ろうとするなら、この手しかないだろうと思う。私は夢想的現実主義者だから、こういうたわごとを言わせてもらった。
 



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