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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: 総理の靖国参拝?お先棒担ぎは世界の笑い物  
コラム名: 透明な歳月の光 42  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 2003/01/24  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   総理が突如として靖国神社に参詣されたので、また各紙の新聞記者たちが鬼の首でも取ったように騒ぎ立てた。

 「これでまた関係各国を刺激し、しこりを残すことが予想される」と、日本人の記者たちがお先棒を担いで言ったのである。毎年この問題をこういうふうに書くことしか思いつかない記者というのは、他のことには有能かもしれないが、少なくとも新聞記者としては資質がないと思われるので、職業換えをした方がいいような気もする。

 日本人の新聞記者たちが、自分の方から、総理の靖国参拝は日中関係、日韓関係にしこりを残すと言っている以上、両国とも不満だと言わざるを得ない。日本のマスコミは自分の国に他国が矛先を向けることを促したのである。こういう態度は世界的な笑い物だろう、と私は思う。

 A級戦犯を祭ってあるから参拝してはいけない、という理屈もおかしなものである。韓国にもキリスト教徒が多いはずだが、聖書には「裁きは神に任せなさい」と書いてある。人の生涯の真実は、他人にはわからない、という深い知恵である。もちろんこれは、泥棒も放置していいということではない。窃盗・強盗という表面的な単純な行為に対しては、法の規則によって裁いていいのだが、その人の心中がその時どうであったかということは、遂に誰にもわからないことである。だから、精神と心の問題に関する裁きは、神に任せるということなのである。

 総理はA級戦犯だけを拝みに行かれたわけではない。むしろA級戦犯はほんの一握りの人たちだ。「英霊」の99パーセントは戦争の犠牲者である。とすれば、悲惨な戦争を回避する決意を新たにするために、靖国神社に参られても少しも不自然はない。

 新聞記者たちこそ、結果的には国際問題を紛糾させようとする裏切り行為に走った。彼らは日本の独立と平和に何が必要かの冷静な判断を欠いた。彼らは現実にはこうした国々との平和のために、物心両面の人道的な行動を取ったことがあるのだろうか。

 総理が参詣された後、諸外国から反対が起きれば、言い分はその都度正確に報道すればいい。それをどう思うかは国民の自由で、一部の識者の意見も実はどうでもいいのである。識者の意見という形で、新聞は意識の操作をしている時が多い。

 政治オンチの私は、もし私が総理なら「A級戦犯以外のたくさんの戦死者が、靖国に祭られていますのでお参りします」と答えるだけだ、と思うが、それでは済まないらしいから、総理になどなるものではない、とつい短絡的発想をする。しかし、総理に毎年同じ答えを強いて総理を「苛めた」気になるマスコミも、一種の才能のないサディストだから、そろそろ読者に飽きられて来るだろう、と思う。
 



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