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著者: 山田 吉彦  
記事タイトル: 海を見守る情報提供ボランティア「海守」の創設  
コラム名:    
出版物名: 月報Captain  
出版社名: (社)日本船長協会  
発行日: 2003/01/12・1月合併号  
※この記事は、著者と(社)日本船長協会の許諾を得て転載したものです。
(社)日本船長協会に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど(社)日本船長協会の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   日本は海洋国家と言えるのだろうか。「四方を海に囲まれた国」というのは地図上のことだけで、海とともに暮らしている日本人は極めて少ない。私たちの生活している町からは海は遥か遠い。海沿いに位置している町でも高く灰色の防波堤が海と私たちの間に立ちふさがり、いかついコンクリートの塊の消波ブロックが要塞のように波打ち際に陣取り、人と海との交わりを隔てている。

 石油をはじめとした、私たちの生活に欠かせない物資のほとんどは、船を利用した海上輸送により輸入されている。しかし、日本船籍も日本人船員も減少の一途をたどっている。

 グルメ志向が高まり、新鮮な魚を求める健啖家は増えているが、魚を捕る漁師の減少を心配する人は少ない。

 いつの日からか、海から離れた海洋国家ニッポンが歩き始めてしまった。


≪ 日本の海岸に異変は忍び寄っている ≫

 今、日本の海の周辺では、さまざまな異変が起こっている。2001年12月22日に奄美大島近海に北朝鮮の工作船が出没し、海上保安庁の停船命令を無視し逃走、沈没した。

 沈没した船の中からは、おびただしい数の武器弾薬と上陸用と思われる小型船が搭載されていたのはマスコミに報道されている通りである。このような工作船が私たちの身近な海に頻繁に現れていたのである。

 2001年10月14日千葉県の九十九里浜沖で、密入国を企てた中国人が91名逮捕された。2001年に海上保安庁は、247人の密航者を海上で逮捕している。しかし、これは氷山の一角で、日本国内には、28万人の不法滞在外国人がいると推定されている。

 1997年に日本海沿岸が多量の重油で汚染されたナホトカ号事件は記憶に鮮明に残っている。割れた船体の一部が高波と強風に運ばれ、福井県三国町の海岸に流れ、美しい白い砂浜が黒光りした重油に埋め尽くされてしまった。ナホトカ号は、老朽化した船で、冬の日本海を吹き荒れる強風による高波に打ちのめされ、船体を真二つに分断してしまった。ナホトカ号の様な老朽化船が日本の近海を行き来しているのをほとんどの国民は知らなかった。

 先日、海岸のゴミ対策の中心グループであるクリーンアップ全国事務局の小島あずささんにお会いしお話する機会があった。クリーンアップ事務局では、全国の海岸で拾われたゴミのデーターを集計している。その中に最近、注射針などの医療廃棄物が目に付くようになっているそうだ。

 不審船、密輸・密航、密漁、海洋汚染、不法投棄など海上で起こる犯罪は後を絶たない。私たちの安心しきった暮らしは、海を超え忍び寄る脅威に気付いていない。私たちをやさしく包んでくれてきた海を忘れてしまった報いなのかもしれない。今、すぐにでも行動をおこさなければ、取り返しがつかない事態になってしまうだろう。

 日本の海の安全を守っているのは、海上保安庁である。昨今、不審船警戒、東南アジア海域で商船を襲う海賊への対処など海上保安庁の活躍は目覚しいものがある。しかし、海上保安官は、事務職員も含め12,O00人。日本の海岸線の総延長34,000キロを守るにはあまりにも少ない。私たち国民ひとりひとりの目で海を見守ってはどうだろうか。

 日本財団では、海を見守る国民運動として「海守(うみもり)」という、海の情報提供ボランティアネットワークの創設を提案している。「海守」は、国民一人一人が、日々の生活の中で、海を見守り、海から侵入してくる脅威を未然に防ぎ、海洋環境を保全して行こうとする活動である。私たち国民自身の力で、海の自然を守り、安心して生活できる海洋国を創って行きたい。


≪ 「海守」の活動 ≫

 海守の活動は、以下の3つの柱からなっている。

(1)青い海を守る。

 この活動では、身近な海を「里海」と位置付け、環境保全のため海岸清掃などの活動を行う。また、海洋汚染や廃棄物の不法投棄を発見したら通報するとともに国・自治体と連携し、環境回復に向けて油除去活動などの支援を行う。

(2)平穏な海を守る。

 沿岸・近海で発生している海上犯罪(密輸、密航、不審船舶、不審者など)を発見したり、情報を入手したら速やかに海上保安庁に連絡し、国民が安心して暮らせる社会を維持して行く一助を行う。また、自然災害に対する知識を深め、津波、高潮などの発生時、関係機関と協力し、地域住民の安全を確保するための活動を行う。

(3)豊かな海を守る。

 密漁などを発見したら速やかに海上保安庁に連絡する。海のルール・海のマナーについて知識を高め、海辺で人々が遊べるような啓発活動を行う。

≪ 海上保安庁緊急電話118番への情報提供 ≫

 具体的な活動は、海での異変に遭遇した場合、海上保安庁が運用する緊急電話118番に通報することを基本とする。

○ 不審な船舶、不審な人物、漂流物を発見した。
○ 油の流出や不法投棄を発見した。
○ 密航、密輸、密漁等の情報を得た、目撃した。
○ 海難事故に遭遇した、または目撃した。

 以上のような場合、海上保安庁118番に連絡し、「海守」の会員であることを告げ、氏名、会員番号を伝え「いつ」「どこで」「なにがあった」などを簡潔に伝え、海上保安庁が迅速に活動できるように正確な情報伝達に心がける。この際、けっして個人での行動を起こさない。

 海の異変について、「見て見ぬふり」はけっしてしないとする国民運動を目指すものである。

 「海守」では、海に関する普及事業として
(1)全国一斉海岸ゴミ拾い
(2)海洋ボランティア講座の開催(油防除対応、ボランティアコーデイネーター育成)
(3)海岸スポーツ大会の支援
(4)海事関係博物館への支援

 などを計画している。


≪ 「海守」への参加者 ≫

 「海守」は、一般の方々から公募する。「海守」にはできるだけ多くのひとびとに参加していただきたい。できるなら2億4千万の目で「海」を見守ることを理想とする。老若男女問わず参加していただきたい。

 漁業関係者、船舶関係者、海運関係者、マリンスポーツ愛好者などの専門の知識を有する人は、その知識を有効にいかすような情報を提供していただき、また、沿岸に住む人や海辺に遊ぶ人は見たまま、感じたままの情報を提供していただく。高齢者の方は、経験の目をもち、若年者は、新鮮な目で海を見てほしい。「海守」は、より多くの人々に海に関心を持っていただき、海を見守って行こうとする活動である。

 「海守」の設立委員会には、(社)日本船長協会をはじめ全国漁業協同組合連合会、(財)海上保安協会、(社)日本水難救済会、(社)日本造船工業会、(社)日本舶用工業会、NPO法人日本ライフセービング協会、クリーンナップ全国事務局など海にかかわりを持つ幅広い分野の方々が参加している。「海守」代表は、日本財団会長曽野綾子が就任する予定である。


≪ 「海守」の情報連絡手段 ≫

 「海守」のネットワークでは、昨今急速に普及している携帯電話、インターネットを有効に活用し、リアルタイムの情報伝達を心がける。小泉首相を真似てではないが、メールマガジン、メーリングリストを有効に使う。しかしながら、ITは、ちょっと苦手という人もいるかと思う。このような人々に対しては、漁協事務所、旅客線ターミナル、あるいは海辺の公共施設などにメールマガジンと同じ情報を壁新聞のような形で貼り出していただくことを計画している。ITと壁新聞という最先端技術と古来の技法を用いた情報連携を行う。


≪ 「海守」の運営スタッフ ≫

 「海守」事務局は、日本財団、(財)海上保安協会を中心にボランティアスタッフにより運営される。さまざまな分野の専門家が、自分の知識を提供しあい運営して行くのが海守事務局である。環境問題の専門家、油防除の専門家、海上保安庁OB、船長、船員、ライフセイバー、地域の村おこしのNPO参加者などさまざまな方が、事務局への協力に名乗りをあげてくれている。全く新しい形のボランティア団体が「海守」としてまさに今、立ち上げられようとしている。


≪ 「海守」ボランティア応募および問い合わせ先 ≫

 応募及び問い合わせは、「海守」事務局まで。

〒105?0001
東京都港区虎ノ門1?15?16
海洋船舶ビル8階「海守」事務局

TEL:03?3500?5707
FAX:03?3500?5708

専用ホームページ http://www.umimori.jp
(ホームページからボランティア応募ができます。)

≪ 終わりに ≫

 私は、千葉県の東京湾沿いの町で育った。小さい頃、遠浅の海岸で潮干狩りをすることが日課のようだった。冬の日には、穏やかな海の向こうに白く雪を被った富士山が良く見えた。ある日、海岸にトタンでできた塀が作られ、私は海を忘れた。数年後、トタンの塀が取り払われた時には、海は遠くかなたに遠ざかっていた。2キロ以上も埋め立てられた先に白砂を撒いた人工海岸が作られていた。そこには、もうアサリの姿は無かった。今では、どこからか運ばれたアサリが時折撒かれている。

 私が、海を思い起こしたのは、大学卒業後勤めた銀行を辞め、現在の職場についてからである。財団の海洋問題担当になり、再び、海を意識して生活するようになった。海を見ていると普段気にしている小さなことなど忘れることができる。まるで、子供の頃に帰ったようだ。もう、海のことを忘れたりなどしない。子供たちにも海のことを語りつづけたい。真の「海洋国家日本」の一員として。私たち日本人を育んでくれたのは、私たちの国の四方を囲む「海」なのであるから。

 「海守」のひとりとして、海を見守って行きたい。
 

「海守」のホームページへ  


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