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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: 内部調査?軍には情報収集と秘密保持が必須  
コラム名: 透明な歳月の光 10  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 2002/06/07  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   防衛庁が情報公開法に基づいて、資料請求した人の身元を調べ、リスト化していたということで、防衛庁海上幕僚監部はリストを作成した三等海佐を自衛隊法違反で処分する方針だと発表し、中谷元長官は、このことに関して陳謝した。

 6月4日になって防衛庁は他の部でも「業務に必要のない」個人情報が作成されていたことを認めたが、全く世の中はどこまで職務に関する本質を見失い、真実を言う勇気をなくしたのか、と思う。

 防衛庁が業務に必要がなくても、個人情報を集めておくことは、管理上の一点を除いて全く正しい、と私は思っている。軍には情報収集と秘密保持の能力が必須のものである。人工衛星から多くの事象が偵察される時代では、直接戦力とか、軍事上の地形や構造物などを秘密にする必要はなくなった。しかし情報を集めることを拒否されては仕事ができない。

 各省とも、情報公開を求めて来る人に理由など聞いていない、と答えている。しかし自衛隊に限り、情報公開を求める組織の中には、ファンや支持組織もあろうが、当然、自衛隊に敵対する組織もあると考えるのが当然である。だから相手に聞かないまでも、調べておくくらいのことをしないのだったら、「防衛」庁としての機能を一切果たしていないことになる。その程度の予測や予防をしないで、戦闘に至らずに状況を平和裡に納めることなどできるわけがない。

 第一こんな程度の内部調査はあらゆるマスコミもやっていることだろう。新聞は防衛庁だけが、相手を調査しているような言い方をしているが、自分の社はどうなのかを調べてみるといい。各部には、どういう分野であれ、目立った動きをする「或る人」に対する資料というものがあるのが普通で、それがなければ、他社よりも深く掘り下げた記事など書けるわけがない。

 防衛庁長官の本心など、一般人が知る由もないが、少なくとも今度の事件で、表向き長官は部下を切り捨てて、世間に迎合した。私が長官だったら、今回の行為は自衛隊としては当然の行動の範囲だ、として改めて社会に一石を投じて辞職するだろう。やめるだけの意味のある行動である。陳謝した長官は、外務省に続いて防衛庁職員を腑抜けにした責任を歴史に留めた。

 情報管理の点では、防衛庁全体に責任がある。職員専用のLANを使って省に流した、というが、私はEメールも用いていないし、ファックスも常に誰かに読まれている、という予測のもとに打っている。Eメールも相手以外の人に読まれる危険があると思うべきだ。

 しかし情報公開を求める人たちは、ついでにアメリカのペンタゴンや中国の人民解放軍の司令部にも、同じことをしてみたらどうだろう。どういう結果になるか、私以外にも知りたい人は多いだろう。
 



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